神社掃除体験!(12)
――そして一時間後、掃除は無事終了した。
「今日はありがとうね、おかげで助かったわ」
「気にするな、むしろ美味いものご馳走になってこっちが助かったよ」
「それに、たくさんお話できて楽しかったです」
「ふふ、掃除を手伝ってくれたお礼ってことで。また頼むかもしれないから、その時はま
た手を貸してちょうだいね」
「うむ、任せろ」
「はい、いつでも呼んでください」
「じゃあ、またね~」
…………。
夕日に染められた道路を、手をつないで帰る俺たち。
「良い仕事したな」
「はい、気分も清々しいです」
「そうだろう? 人助けをする良さってのが伝わって嬉しく思うぞ」
「はい。やっぱり、秀吾くんはよく手伝いの依頼を受けるんですね? 亮くんの時も思っ
ていましたけど」
「まあな。幼馴染だし、一番誘いやすいんだと思うよ。亮から佑香を誘うのは、この時期ちょっと難しいだろうからな。そうなると、何も仕事がない俺に声をかけるのが一番ベターだろう」
「後、仕事を手を抜かずにやってくれるからじゃないですか?」
「それも、あるか。手助け職人だからな、俺」
「初めて聞く職人さんですね」
「その名の通り、手助けが専門の職人だ。……ちょっとダサいな、自分で言っておいて。何か惨めな感じがする」
「そ、そこまでではないと思いますけど……」
「とにかく、人に頼ってもらえるのは嬉しいことだよ、本当に」
「はい。また声をかけてもらいたいですね」
「だな。……そうだ、絵玖」
「はい?」
「佑香に、俺たちの関係について聞かれたりしたか?」
「あ、はい。秀吾くんがトイレに席を外してる時に尋ねられました」
「うむ、やっぱりそうか。いや、何となくそういう風に感じてな。あいつ、俺たちの関係知ってるような顔してるな、みたいな。やっぱりすぐに分かるか」
「本人曰く、恋人同士の独特の雰囲気を察知したらしいです」
「さすが神社の娘だな。そういうところは目ざといか、別にいいんだけどな、バレても」
「祝福してもらいました。仲良くしていくんだよって」
「そうか。でも、驚いてただろ? 俺が絵玖と付き合うことになったって分かった時」
「そうですね。少しだけ、驚いてました」
「やっぱり昔の俺を知ってるからな。絵玖みたいな子と付き合える可能性は皆無であってもおかしくないと考えてただろうから。予想を見事に裏切ったわけだ」
「――あたし、ちょっとホッとしました。佑香さんにそう言ってもらえて」
「何だ? 何か怖かったことでもあるのか?」
「やっぱりその……佑香さんも、秀吾くんのことが好きなんだろうって思ってたところがありましたから」
「あれ? 前に俺言ったよな? そんな感じではないって」
「はい、もちろん覚えてましたけど……やっぱり言っても秀吾くんは佑香さん本人ではないので、若干の不安を持っていまして……」
「まあ、分からんでもないか」
「だから、ホッとしました。嫉まれたりする心配がないんだなって」
「佑香に限ってそんなことはしないから、安心しろ」
「はい、秀吾くんはあたしだけの彼氏さんです」
「…………おお」
「ど、どうしましたか?」
「いや、感動が一気に溢れ出してきて……嬉しくなった」
「あはは、そうですか?」
「絵玖だって、俺だけの彼女だからな」
「はい、ありがとうございます」
「……今日はこのまま帰るか?」
「いえ、少し秀吾くんの家にお邪魔していきたいです。……もうちょっと、一緒にいたい気分だから」
「分かった。――なら、一緒にお風呂にでも入るか」
「お風呂、ですか?」
「掃除して汗もかいたからな、せっかくだし流していけよ。……純粋に一緒に入りたいだけなんだけど」
「あはは、素直ですね」
「腹黒よりも素直なほうがいいだろう? ブラック秀吾は好きじゃないだろ?」
「そうですね。素直な秀吾くんが好きです」
「じゃあ、一緒に入ってくれ、お風呂。できれば背中を流していただきたい」
「分かりました。じゃあ、秀吾くんもあたしの背中流してくれますか?」
「任せろ。ツルツル卵肌にしてやる」
「ふふ、よろしくお願いしますね」