神社掃除体験!(11)
「そっか~、苦労があるみたいね。でも、一人暮らしの良い所っていうのもあるんでしょう? 少なからずは」
「まあ、あるな。一番はやっぱり門限だな、どんな時間になろうとも誰も咎めない。連絡もなしに誰かの家に泊まろうが何も文句は言われない。時間の融通が利くっていうのは良いことに上がるだろう」
「他には?」
「そうだな。……これは俺には当てはまらないけど、自分の好きなものを食べれるとかじゃないか? 基本親が作ってくれた夕食とか昼食を食べるだろうけど、一人暮らしだと作るのは自分だから、自分の好みに合わせた食事を摂ることができるだろ? ラーメンにしようとか、ハンバーグにしようとか、外食にしてみようとか……その辺も一人暮らしの醍醐味じゃないか」
「なるほど。確かに秀吾にはできないわね」
「ハンバーグ食べようって思っても、ハンバーグ作れないからな。まあ、その時は絵玖かお前に電話して作ってもらうだろうが」
「ハンバーグは覚えれば作れるんじゃないの? 秀吾でもさ」
「作るだけならできるかも分からんが、美味しく作ることは難しいだろうよ。俺は二人の料理の味を知ってしまってるんだ。もちろんハンバーグの味もな、それが舌に染み付いてるから、自分のハンバーグの味には満足がいかないんだよ」
「私たちの料理で舌だけは相当肥えちゃったのね」
「そうだ。料理の腕は比例することなくな……」
「まあでも、男性なんてそんなものじゃない? 基本食べるのが仕事だと思うしさ」
「そうなのか? 巷では料理ができる男子のほうがいいっていう声も多い気がするが……だろう? 絵玖」
「うーん、どっちでも大丈夫だと思いますよ? 料理ができるに越したことはないとは思いますけど、女の子のアピールポイントを奪っちゃうことにもなるので……そこは好みによって分かれると思います」
「じゃあ、別にそこまで重要視することはないんじゃない? できないから死ぬってわけじゃないんだから」
「うーむ、そういうものか……」
「何だったら、私たちで料理教室開いてあげてもいいわよ? 人並みくらいに上手くはなるんじゃない?」
「なるほどな……考えてみる価値はありそうだ」
「その辺は秀吾が自分で決めなさいな。もしお望みなら、夏休み使って教えてあげるからさ。あむ……」
そう言いながら、佑香がスイカに口を付ける。
「――ごちそうさまでした。大変美味しゅうございました」
「お粗末さまでした」
俺たち二人は、メロンを綺麗に平らげた。
「……にしても、大分綺麗になったわね。始めた時とは大違いだわ」
「そうか? 来た時もそこまで汚いとは思ってなかったけどな」
「そうですね。あたしも、普通に綺麗だったと思ってました」
「普通だったらあれでもいいんだけどね、私の家神社ですから。しっかり綺麗にしておかないと、色々とね」
「穢れがあるといけないから、か?」
「まあ、そんなところ。気持ち的には常に買い立ての家、みたいにしないと」
「大変だな、神社ってのは」
「確かにね。でも、そこまで悪い気はしないわよ。必要とされてるっていうのは嬉しいものだからさ」
「……これからも頑張ってくれ」
「応援してます」
「ええ、ありがとう。……後少しで掃除も終わるから、もう一踏ん張りしてちょうだいね」
「はい、任せてください」
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