神社掃除体験!(10)
「美味い」
「美味しい!」
俺と絵玖の声が被った。
「息ピッタリね、二人とも」
スイカを頬張りながら佑香が笑う。
「さすが真行寺家だな……出してくれるメロンも一流の味がする」
「あはは、喜んでくれたらお母さんも喜ぶわ」
「本当に美味しいメロンですね。とっても甘いです」
「これは止まらなくなるな……もぐ……」
「いいわね~、私もそんな風に食べたいわ~」
「メロンを食べてると思いながらスイカを食べたらどうだ?」
「……すっごくみっともなく見えるんじゃない? それ」
「まあ、あんまり佑香のそういう姿は見たくないな。道を正すのが仕事の人間だし」
「じゃあどうしてそれを私に進めたのよ?」
「…………怖いもの見たさ?」
「何で疑問形なのよ、秀吾が言い出したことでしょうが」
「まあ、大丈夫だ。メロンに匹敵するほど美味しいものは世の中にはたくさんあるから。俺にはそれしかかけれる言葉がない」
「そうね、そう考えるしかないか」
「……さっきの食べ合わせみたいなので、他にメロンの味がするようなものってないんですかね?」
「うーん、それ以外の食べ合わせは聞いたことがないわね。探せばあるのかしらね」
「結構、食べ合わせの種類ってあるんだろ? やったことないけど。プリンに醤油でウニとかよ」
「あー、それに関してはウニの味したわよ? もちろん本物と見まがう程ではなかったけど」
「ほぉ~、そうなのか」
「あたしは、麦茶に牛乳でコーヒーを試したことがあります。一瞬麦茶の匂いはしましたけど、味はコーヒー牛乳にとっても近かったです。多分しっかり冷やしたら美味しいと思います、あれは」
「……二人とも、意外とそういうの試したりするんだな」
「むしろ女の子のほうがそういうのは試すんじゃない? 女の子ってそういうの好きな人種だから」
「そうですね~。試してはないですけど、結構色んなの聞きましたよ? バニラアイスに醤油でみたらし団子とか、豆腐にヨーグルトでチーズケーキとか……」
「私はプリンにソースでトンカツとか、卵の黄身に蜂蜜で栗とか聞いたことがあるわね」
「それらは全部試したことがあるのか? そしてなったのか? その味には」
「あたしは、今言った二つはそれなりに近いのかなって思いましたね。というか、バニラアイスに醤油は結構美味しかったです。甘じょっぱくて」
「佑香は? 正直プリンにソースはあまり試してみたくないものだと思うんだが」
「ええ、実際やってないわ。卵の黄身と蜂蜜は、不味くはなかったわよ? 卵と蜂蜜自体相性はバッチリだからね。まあ、栗の味かって言われたら全然分からなかったけれど」
「まあ、極端な話、そんなことしないで本物食えやって話になっちゃうからな」
「元々は普段食べれないようなものをあるもので再現って感じだったでしょうからね。トンカツとか栗とかだったら、簡単にスーパーで手に入るものね。言いたいことは分かるわ」
「楽しいかもしれないけどな。俺の家は食べ物は粗末にするなと言わされてたから、できる環境でもなかった」
「そういえば、そうね。五十沢家は食べ物を無駄にはしない家庭だもんね」
「そうなんですか?」
「ああ、大根の葉っぱとか、ニンジンの皮とかも捨てずに何らかの料理で応用して食べることが多いんだ。皮と身の間に栄養が詰まってるらしくてな」
「実際そうでしょ? 私も知ってるわ」
「だから、頑張って料理にねじ込もうとしてるのをいつも見てた」
「資源を大切にしてるんですね、五十沢家は」
「今はどうか知らないけどな。都会に染まり切ったとしたら、もうやってないかも分からん」
「さすがにすぐには変わらないでしょ? やってるんじゃない?」
「そうだといいんだがな」
「……実際どうなの? 両親のいない生活は?」
「うーん、やっぱりありがたみってものが分かるな。何にしても。ご飯作らなくても出て
くるとか、朝になれば服が綺麗になって帰ってくるとか、そういうのを全て自分でやらなければいけないからな。特に料理に関してはとんでもなく実感した。今は絵玖に作ってもらえて本当に感謝してるぜ」
「手伝ってもらえてなかったら、餓死してたかもしれないものね」
「ああ、可能性はある」
「お、大げさじゃないですか? ちょっと」
「まあとにかく、それを理解できたのは大きいと思うよ。今知ることができてよかった気がする」