神社掃除体験!(8)
「レシピ本出てるくらいだからな。俺でも簡単にできる内容だぜ。さつまいもを炊飯器に入れて水と塩を加えてスタートボタン押すだけ。タイマーがなれば完成!」
「炊飯器で色々なものを作るなんて、思いついた人はすごいですよね」
「だな、あの熱のかかり方に目を付けたっていうのは良い閃きだよな。是非その閃きを分けてほしいものだ」
「何か秀吾くんも生み出したいですか?」
「できるのであれば、生み出したいと思うよな。身近なものを応用して何かを作れればいいんだろう?」
「まあ、そうですね」
「例えば……ご飯用茶碗を使っておにぎり作るとか……」
「……多分、それはもうみんなが試してると思うので発見にはならないと思いますよ」
「何? 先を越されていたか……」
「あたしたちの生まれる前からあると思いますよ……」
「じゃあ…………しまった、じゃあのストックがない」
「あはは、本当に生み出すのだとしたら、この短時間では無理ですよ。それこそ何年も考えないと」
「だよな。数々の発明をしてきた歴史上の人物も、何十年もかけて一つの発明をするんだもんな。こんな短い時間で生み出せたらもっと今の世の中は便利になってるだろう」
「それこそ、タイムリープとかできちゃうかもしれませんよね」
「そうだな。……でも、俺はあまりタイムリープって好きではないかもしれないな」
「え? どうしてですか? 響きはすごく素敵じゃないですか? 時間を旅できるんですよ?」
「もちろん、ただ見てみるだけだったら俺は何も思わん。ただ、それだけの目的で使わない可能性もあるだろ? それこそ、時間軸を作り直すことを考える人だっているだろう」
「ああ、可能性はありますね」
「確かに過去を変えることで良くなるってこともあるかもしれない。でも、過去って変えられないから過去なんであって、それを弄ってもそれは自分の力じゃない。それはただのチートだ。自分の力で解決してこそ、成長ってできるんだと思うんだよ」
「……分かる気がしますね、カンニングと同じようなことですもんね」
「そう。変えちゃダメなんだよ、人生一回しかないんだ。失敗あっての人生だし、それがなかったら楽しくも何ともないだろうよ」
「……よくそんな風に考えられますよね、秀吾くんは」
「そうか?」
「はい。あたし、今話を聞くまで、そんな考えは頭の中に一切なかったですもん。ただタイムスリップだ~って感じでしたから。でも秀吾くんはそういう風に自分を持った解答がすぐに出せる……純粋にすごいと思います」
「分かってると思うけど、タイムリープが悪いって言ってるわけじゃないからな? もし簡単にできるのなら一回くらいしてみたいって思う。ただ、それが日常的になってしまったら、とんでもないことになるんじゃないかって思うからさ……そこまで深く考えて発したわけじゃないよ。そもそもタイムリープなんてできるわけないんだから」
「あ、やっぱり無理なんですか?」
「できるんじゃないかって噂されてたけど、理論上無理だろ? だって、それを証明できなければ、その技術があってもないものとされてしまうんだから。コロンブスの卵だ」
「? コロンブスの卵?」
「誰でもできそうなことでも、最初にするのは難しいって意味。大陸発見が誰でもできるって言われたコロンブスが卵を立てることを試みさせ、一人もできなかった後に卵の尻をつぶして立てて見せたという逸話からできた言葉だ」
「へぇ~なるほど~」
「仮にできるようになっても、俺たちが生きてる間では無理だろうな。妄想で楽しんでる
のが一番良いと思うぞ」
「そうですよね。……にしても、やっぱり秀吾くんの知識はすごいですね? あたしの知らない言葉がポンポン出てくる」
「いやいや、まだまだこれくらいじゃあ足りないよ。絵玖にだってできることだぞ? ちょっとインターネットとかで調べれば」
「あたし、パソコンが得意じゃないから調べるのは難しいです……」
「じゃあ辞書を積極的に用いてみるといい。結構あれを読むのも時間潰しになるぞ? こんな言葉があったのか~とか新しい発見がある」
「やってた時期があったんですか? 秀吾くん」
「家の中から少し前の広辞林が出てきてな。何だろうって開いたら……没頭して読んでいた時期があった。さすがに読破はできなかったけどな」
「そ、そうですよね? あれを読破するのは簡単なことじゃないですし……」
「まだ三分の一ってところだな。先は長いぜ」
「三分の一読んだだけでも十分すごいと思いますよ。というか、今も読んでるんですか?」
「前みたいにがっつりは読んでないけどな。時々ふと開く時はあるよ」
「そうですか……」
「あれだ、絵玖が時々鼻歌を歌うのと同じような感じ」
「ああ、なるほど……」
「よくよく考えたら、俺絵玖が売り出した曲を全部聞いたことがないな。……持ってない
のか? CD」
「も、持ってはいますけど……ちょっと恥ずかしいですよ」
「何を言うか。全国的に売り出してるんだろ? 何故恥ずかしがる必要がある」
「だって、そんな良い曲じゃないですし……」
「良い曲だから売れたんだろう? 普通に考えて」
「その~……」
「聴かせてくれよ~、彼氏が彼女のリリースした曲を知らないなんて有り得ないだろ」
「……馬鹿にしませんか?」
「するわけねぇだろ、むしろ褒めちぎるわ」
「……じゃあ、今度持ってきます」
「おう、よろしく頼む」
「うう、緊張するな~……」
……………………。
…………。
……。