神社掃除体験!(6)
「――仲が良いですね、お二人は」
「そうか?」
「はい。普通、十年以上の付き合いをしてたらこんな風にしゃべることも自然となくなってくるはずです。でも、お二人はそんなことなく楽しくしゃべれてる……素敵なことだと思いますよ」
「そうね~。小さい村だから、選べるほど友人も多くないってのもあるかもしれないけどね」
「それでも、素敵なことです。お二人と亮くんの仲は、多分一生続いていくと思いますよ」
「それは、俺も続いてたらいいなって思うな。何だかんだ、こいつらがいなかったら俺は終わってたかもしれんからな」
「確かに、秀吾は終わってたかもしれないわね。色々と……」
「大切にしていってください、その関係を」
「……何で三人になってるんだ? お前も入れよ、俺たちの中に」
「え? いいんですか?」
「いいに決まってるわよ~」
「でも、あたし三人みたいに付き合いは長くありませんよ?」
「長い短いはそんなに大きな問題じゃないさ。どれだけ仲が良いかって問題だから、絵玖はそれを心配する必要はない」
「そうそう。それに絵玖ちゃんは最近仲良くなったって感じはあまり受けないもの。かなり前から友達だったって感じで、私たちの中に溶け込んでるから」
「――そんなわけだから、四人で関係を作っていくぞ。OK?」
「……はい、是非入れてください。その中に」
「ふふ、良い団結力が生まれたわね」
「だな。――そんな時に悪いが、ちょっとお手洗いをお貸しいただけないだろうか?」
「本当にすごいタイミングね……まあ、秀吾らしいか」
「すまなんだ、ちょっと行ってくる」
「うふふ……」
…………。
「――はあ、本当に秀吾は昔から変わんないわね」
「子供の頃からあんな感じだったんですか?」
「ええ、そうよ。昔から格言みたいなものが好きでね、事あるごとにああやって無駄にカッコいい台詞言おうとするのよ。でその後に馬鹿みたいなこと言って台無しにしちゃうみ
たいな……何処か決まらない要素を残しちゃうのよね」
「あはは、でもそれが秀吾くんらしくて安心します」
「そうね~、あれで最後までカッコよかったら逆に心配になるからね。きっとこれからもあのまま歳をとっていくんだと思うわ」
「そうであってほしいですね」
「…………ねえ絵玖ちゃん。ちょっと聞きたいことあるんだけどいいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「絵玖ちゃんさ、今秀吾と付き合ってたりするかな?」
「!? え? えっと……」
「そんなに驚かなくていいじゃないの。特に他意はないんだから。……今の反応を見る限り、本当だったりするのかしら?」
「は、はい。……お付き合い、させてもらってます」
「そっか。……あの秀吾が絵玖ちゃんのような子とね~、おったまげたわね~これは」
「どうして、分かったんですか? そういうことは一言も口に出してなかったのに」
「まあ、巫女だから、かな? そういう気配を察知しやすいっていうか。恋人同士の独特の雰囲気が出てたように見えたのよね~」
「な、なるほど……」
「素直に祝福するわ、おめでとう。秀吾は、あんな風に変態だけど、やる時はやる男だから、多分大丈夫だと思うわ。一般的なマナーもなってるし、悪いことは悪いって言わなくても理解できるから」
「はい、ありがとうございます。……あの、あたしも一つ聞いてもいいですか?」
「うん、いいわよ」
「……佑香さんは、秀吾くんのことは好きだったんですか?」
「あー、なるほどね。それがあるから今びっくりさせちゃったのかしら?」
「そういうわけではないですけど、秀吾くんはそういうのじゃないって言ってたんですけど、本当なのかなって前から気になっていたので」
「そっか。別に秀吾のことは嫌いではないわよ、むしろ好きなほう。これは私だけに限らず、結構秀吾のこと気に入ってる子は、あのクラスにも数人いるのよ。まあ、都合上名前は出さないけどね」
「そ、そうだったんですか……」
「私も正直、少し前は付き合えたりしないかなって思ってた時期もあったわ。でも、やっぱりずっと小さい頃から一緒にいたから、もし仮に付き合えたとしても、友達の頃と変わらないんじゃないかって思っちゃうのよね。もちろんそれでもいいって思う人もいるのかもしれないけど、私は付き合うのならそれなりの刺激がほしいって思ってる人間だからさ。それが秀吾と付き合ったら薄いかもって思ったわけ……ただ言い出す勇気が足りなかっただけなのかもしれないけどね」
「近い存在になりすぎてたってことですか?」
「そういうことかしら。もし違う出会い方をしてたら、付き合ってくださいって言ってたかもしれないけどね。……だから、別に私に謝ったりする必要はこれっぽっちもないから安心して。嫉妬で殺してやる~とか、一切考えてないから」
「は、はい。ありがとうございます」
「私からもよろしくね、秀吾の面倒見てあげてちょうだい。特に料理とか、ほとんどできないから、栄養失調で倒れたりしないように」
「その点は大丈夫です、ちゃんと栄養の付くものを食べさせるようにしてるので」
「なら安心ね。……夏休みはまだ始まったばっかりだから、沢山思い出を作るのよ? 彼氏との夏休みっていうのは、特別なものだからさ」
「はい。……でも、佑香さんも、思い出作りに参加してくださいね? 佑香さんも、あたしの大切な人ですから」
「あら? いいの。私が入っちゃうと邪魔者にならない?」
「なるわけないじゃないですか。むしろ佑香さんがいないと面白くない時が多いです。楽しい思い出作りに、佑香さんはなくてはならない存在なんですから」
「……嬉しいこと言ってくれるわね。分かった、じゃあ、お互い積極的に誘い合うようにしましょう」
「はい、是非」