神社掃除体験!(5)
「ふう、思ったより早いペースで出来てるな。こりゃきっと早く終わるぞ」
「やはり力を合わせると、何事もスムーズに行くんですね」
「だな、早く終わして、他の所も手伝ってやろうか」
「はい、そうですね」
「――嬉しいことを言ってくれるわね、お二人さん」
「ぬおあああああああああっ!?」
「いやいや、驚きすぎでしょ? 秀吾」
「だって、全然気配を感じなかったぞ……やはり巫女にはそのようなパワーが宿っていて……」
「ないから、絵玖ちゃんと話して気付かなかっただけだから」
「何だ、そういうことか」
「そこはあっさり受け入れるのね。まあいいけど――それより、はい。頑張ってくれてるから飲み物と甘いもの持ってきたわよ、食べてちょうだい」
「わぁ~、美味しそう」
佑香が持ってきてくれたのは、麦茶と羊羹だった。
「おお~、これ、よく食わせてもらってる羊羹か?」
「そうよ。母さんが、秀吾が好きだからって切ってくれたの」
「さすが佑香のお母さんは分かってるの~」
「そんなに美味しいんですか? この羊羹」
「ああ、美味いぞ。ほっぺた落ちるくらい美味い。一回食ったら他の羊羹が目に入らなくなる可能性がある」
「わあ、楽しみです」
「遠慮せず、どうぞ」
――三人で水拭きが終わったピカピカの縁側に腰を下ろす。
「じゃあ……いただきます」
絵玖が羊羹を一口大に切って口に運ぶ。
「もぐもぐ……ホントだ、すごく美味しいです」
「ふふ、美味しいでしょ?」
「はい、甘すぎなくて、触感も良くて……他の羊羹が目に入らなくなるっていうのも分かる気がします」
「そうだろ、そうだろ。俺の気持ちを分かってくれて嬉しいぞ。……もぐもぐ」
「――廊下、すっごく綺麗になってるわね。以前秀吾が一人でやってくれた時よりも綺麗になってる」
「……遠まわしに俺の掃除が下手だって馬鹿にしてるんですか? 佑香さん」
「そういう意味で言ったわけじゃなくて。やっぱり一人だと拭き残しとかが出るだろうけど、二人だとそれがなくなるんだなって意味。私が秀吾と同じように一人でやったってここまで綺麗にはならないでしょうし」
「なるほど、そういうことか。……俺が絵玖を呼んだことは間違いじゃなかったわけだな」
「そういうこと。ホントにありがとうね、絵玖ちゃん。手伝いに来てくれてさ」
「ふふ、そんなに喜んでくれるのなら、毎日でも手伝いたくなりますよ」
「ホント? そんなこと言うと、本当に毎日頼んじゃうかもしれないわよ?」
「全然、それでも構いませんよ? あたし、人の役に立つのが好きですから」
「はぁ~、絵玖ちゃんはすごいわね~家の神社に雇いたいくらいだわ」
「何!?」
「何であんたがそんなに食いつくのよ……」
「絵玖が神社に雇われるってことは……絵玖が巫女服を着るかもしれないってことじゃないか!? そうだろう!?」
「うるさいわよ秀吾。声のボリュームが大きすぎる」
「これがでかくならないわけがないわ! それいいな、絵玖が神社で……巫女服……巫女服……」
「単純に、絵玖ちゃんの巫女服見たいだけでしょ、あんた」
「そりゃ見たいさ。考えてもみろよ、絵玖だぞ? 元アイドルだぞ? 可愛いんだぞ? 何着ても似合うんだぞ? ……巫女服着せたって似合うに決まってるだろ?」
「あは、あはは……」
「言いたいことは分かるけど、絵玖ちゃんが思い切り引きつってるわよ?」
「大丈夫だ、絵玖はそんなことで俺を嫌いにはならない人間だ」
「そういう問題なのかしら……引きつってる時点で大丈夫ではないと思うんだけど……」
「いつか、見てみたいものだ。絵玖の巫女服、そしたら佑香に毎回頼み込む必要もなくなるし……」
「……何でだろう、今の発言が若干悲しく感じてしまったのは……」
「俺が巫女服見せてくれって迫ることがなくなったらなくなったで、悲しく感じるんだろ? やっぱりそういう風に、言ってもらえることって嬉しいことなんだぜ? そうは思わないかい?」
「……おかしいわね、何で若干秀吾の言葉に納得してしまうのかしら」
「お前も、俺の影響を受けてるってことだわな」
「うーん……良いような悪いような……」