神社掃除体験!(4)
「……よい、しょ。……わっ!」
絵玖はスリップし、その場にずるっとこけた。
「……ぷっ」
「あ、秀吾くん、今笑いましたね」
「はは、すまんすまん。水拭きあるあるだよな、今のは。綺麗になった床でついスリップする」
「でも、綺麗になった証拠ですよね」
「その通りだ」
振り返って確認してみれば一目瞭然。俺たちが拭いてきた部分はピカピカになっていた。
「掃除をすると心も綺麗になるとは、よく言ったもんだよ」
「そうですね。その言葉セレクトのセンスは秀逸ですね」
「……参ったな、おい」
「え? あれって最初に言ったの秀吾くんだったんですか?」
「実際に言ってはいないが、言うように仕向けたのが俺だ」
「……………………。壮大な嘘ですね」
「やっぱりバレたか~」
「はい、丸出しでした」
「でもいつか、後世に残る名台詞を残したいもんだな~」
「人生の目標ですか?」
「うむ、それも悪くないかもしれない」
「あたしの中には、既に結構残ってますけどね」
「何? 本当か?」
「はい、秀吾くんの言う言葉って、心に響きますから」
「おう、それは嬉しい。例えばどんなのだ?」
「……変態と言う名の紳士だ! とか」
「ああ……そっち方向のですか……」
「あれを胸を張って言えるのは、秀吾くんくらいだと思います」
「まあ、自他共に認めてるからな……でも何でだろう、あんまり嬉しく思えないのは……」
「大丈夫です、そういうのばかりじゃないですよ。本当に印象に残ってるのは――『どんなことがあっても、俺は絵玖の味方だ』って台詞です。あれを言ってもらえた時、あたしは本当に嬉しかったです。瞬間的に自分の素敵な台詞ファイルに登録しました」
「……こういう場で振り返られると、すげぇ恥ずかしいな」
「でも、すごく頼もしかったです。あの瞬間秀吾くんのことを更に更に好きになりました
もん」
「――あの言葉で絵玖のハートを掴んだと言っても過言ではない?」
「それは、どうでしょう? 結構前から秀吾くんのことはそう思ってましたからね」
「あ、そうなのか? ……じゃあ、もしかしたらもっと早く告白しても上手くいってたのか?」
「ふふ、そうかもしれませんね」
「今となっては、勿体ないことをしたと思うな」
「でも、あたしは今のほうが安心して付き合えますよ。後から思いました、隠して付き合
ってたら、心苦しかっただろうなって」
「まあ、そうだろうな。これはこれで正解と言えるのか」
「秀吾くんの選択は間違ってませんでしたから、安心して大丈夫だと思いますよ」
「絵玖がそういうのなら、安心して安心するとしよう」
「言葉が重複してますね」
「重複させることで言葉に深みを与えるんだよ」
「よく、すぐそういう説得力あるようなことを言えますね」
「何でだろうな、昔からこんな感じなんだよ、俺」
「頭の回転が速いんですね」
「小賢しいって言った方が正しい気もするがな。今はそういうことにしておこう」
「うふふ」
……………………。