プロローグ~忘れられない日々の始まり~(15)
「にしても、一体どんな子が来るんだろうな。都会の子ってことは、やっぱり結構垢抜けてる子なのかね?」
「その可能性はあるだろうな。むしろ、垢抜けてないほうが確率的に低いだろう」
「やっぱりそうだよな。……ますます楽しみだ。都会での生活、たっぷり聞かせてもらいたいもんだ」
「シティ・ボーイになるためか?」
「それもなくはないが、後は興味心だな」
「ふーん」
「どうするよ? 実はその転校生は元アイドルでした~、みたいなことがあったら?」
「あったらって言われてもな。……そもそも、俺アイドルのこと詳しくないぞ。知ってるのはAV女優のことくらいだ」
「だよな~。田舎だから、そういう都会のテレビってなかなか見られないんだよな~。少しでもそういう情報は手に入れたいって思うんだけど、如何せんそんなことで親に相談なんてできるわけないし」
「じゃあ、アイドルって仮に言われても本当なの? ってしか言えないじゃねぇか」
「でもよ、すげぇ話のネタには使えるだろ? 普通では聞けない話がたくさん聞けるじゃねぇか、ほら、仲良し街道まっしぐらだ」
「まだアイドルかどうかも分かってないのに……つか、そんな確率あるもんなのか? 天文学的数値に近いだろ」
「もちろん、そんなの分かってるさ。アイドルじゃなきゃ帰ってくれ、とかそんな風には思ってねぇから。ただ、そうでなかったとしても……かわいいといいなっては思ってる」
「その望みが、一番叶いずらいことなんじゃねぇのか」
「まあまあ、思うだけなら自由だしいいじゃねぇか。明日までわくわくさせてもらうよ」
「そうかい」
「――よし、じゃあ今日はここでお別れだな。家に帰って収穫作業だ」
「野菜、期待して待ってていいか?」
「おうよ。今年も去年と同じくらい豊作になりそうって親父が言ってたからな。美味いの提供してやるよ」
「じゃあ、目一杯期待してるぞ」
「はは、乞うご期待ってか? じゃあ、またな~」
分かれ道を、亮は小走りで帰っていった。必然的に、俺一人になり、下り道をゆっくりと歩いて行く。
佑香も亮も、転校生のことが気になってるようだな。もちろん、俺も決して気になってないわけではない。ただ、何度も言っているが、仲良くなれるのかが不安なんだ。
ほら、最近よくテレビで見るギャル語だっけか? あれをペラペラとしゃべるような感じだったら、俺は絶対に仲良くなれない自信がある。
何を言ってるのか分からないし、何よりあれが良いとは決して思わない。思わないし、思えない、都会で育った女の子ってことは、その可能性が無きにしも非ずってことだろう?
……まあ、佑香と亮、先生に仲良くしろって言われてる手前、俺だけ関係を断つなんてことはできないから、表面にそういうのは出さないようにはするが、もし、今言った感じの女の子だった場合、俺は付いて行くことは不可能だ。
まあ、それこそあんまり可能性がないとは思うけど……一抹の不安は拭えないな。
「田舎の生活を否定しない子であればいいが……ん?」
向こうから、一台の車が走ってきていた。農家用の軽トラックとかではない、普通の乗用車だった。今ではこの村に車も少ないから、かなり久しぶりに肉眼で見るな。
その車は、坂を上り、俺の横を通り過ぎていく――と思ったんだが。