これが俗に言うバカップル(8)
「――ねえ、秀吾くん」
「何だ?」
「……あたし、チューしたいです」
「――分かった。じゃあ、目閉じてくれ」
「はい。…………ん~」
俺は顔を近づけ、絵玖の唇に唇を重ねる。
「ちゅ……」
「…………」
「えへへ、セカンドキスですね」
「加減は大丈夫だったか?」
「はい。秀吾くんの唇の感触をしっかり感じました」
「俺も、絵玖の唇の感触が伝わってきたよ。柔らかくて、気持ち良いな」
「…………いいんですよ? 一回で止めてくれなくても」
「…………じゃあ、サードキス、しちゃうぞ?」
「ふふ、どうぞ♪ あたしも、したいですから」
「じゃあ、もう一回――――」
「んっ……ちゅ……」
三度目のキス。今度はすぐ離すのではなく、少し長く口付けてみる。
…………。
「はぁ……長いキスも、良いですね」
「だな。ただ、息をするタイミングが難しいな」
「だったら、時々口を開ければいいですよ。ずっと閉じてなきゃいけないわけじゃないですもの」
「そうだな。次はそうしよう」
「――じゃあ、もう一回しましょう。今度はもっと長くがいいです」
「分かった」
顔を近づけ、再びキス。
「ちゅ…………」
「…………」
……………………。
…………。
……。
――手をつなぎながら、絵玖を家まで送っていく。自然と、歩く速度はゆっくりとなっていた。それと言うのも……。
「…………」
「ごめんな、やっぱり痛かったんだろ?」
「いえ、痛みって程じゃないんです。ただちょっと……まだ、秀吾くんのが挟まってるような感覚がありまして……」
「絵玖にばかりそんな思いをさせて……男の体は不公平に作られてるもんだ」
「そんなことないですよ。少なくともあたしはそんな風に思っていませんから。むしろ良い思い出になりましたよ。今回の痛みがあるから、初めて秀吾くんとこうして営んだってことの証明になりますし。それに、一生に一度の体験ですから、これくらい鮮明なほうがいいです」
「まあ、俺も忘れる気はないよ。忘れられるわけがない」
「……気持ち良かったですか?」
「ああ、最高だ」
それしか言う言葉がない。
「俺はもう、絵玖がいないと生きていけないな。……もちろん、そっち関係の意味だけじゃなくてな」
「分かってますよ。でも……分かります。あたしも……そう感じましたから」
「…………絵玖、つかぬことを聞いてもいいか?」
「? はい、何でしょう?」
「その……絵玖も一人でそういう系のことをすることってあるのか?」
「もちろん、ありますよ。あたしだって人間ですから」
「大体、どれくらいだ?」
「……週に、2、3回くらいでしょうか」
「おお……」
「ど、どうしたんですか? そんなリアクションをして」
「少々馬鹿みたいな発言をするが、受け止められるか?」
「もちろん、受け止められますよ」
「すげぇ綺麗で美人な女の人って、男は排泄とかそういうことをするのかな? とか考える時があるんだよ」
「何となく分かりますよ、女性も美形な男性にはそういうこと考えたりしますから」
「それを絵玖に当てはめてたから、ちょっと意外だったんだよ」
「あ、あたしに当てはめてたんですか?」
「だって、言っても絵玖はアイドルじゃないか? 多分俺みたいに考えてた男子だって少なくないはずだぞ」
「あはは……あたしだって人間ですから、そういうことだってしますよ。完全な思い込みですよ、それは」
「そうだな。実際のところ、絵玖は俺と同じくらいエッチだってことが分かったからな」
「あはは、ばれちゃいましたね」
「むしろばらしてくれて嬉しいぞ。俺だけが変態路線を突っ走ってるわけじゃなかったからな」
「え? エッチと変態って、結構意味合いが違うくありませんか?」
「同じようなものだろ? 少なくとも進むベクトルに大きな違いはないと思われる」
「そ、そうなんでしょうか?」
「いいじゃないか。同じ仲間に入ってくれても。というか、絵玖は徐々に俺に似てくると思うけどな、そういう方向でも」
「変態の道ですか?」
「ああ、そうだ。……嫌か?」
「いえ、秀吾くんの歩む道は、あたしも歩いてみたいですから」
「よし、よく言った。じゃあ、これから二人で極めていこうじゃないか。変態の道を」
「あはは……ロマンチックの欠片もないですね」
「俺たちらしくていいんじゃないか? 望んでたとしたら、以後気を付けるが」
「いえ、いいです。秀吾くんらしくて、あたしは好きですよ」
「俺も、このノリに着いてきてくれる絵玖が好きだよ」
「うふふ、両想いですね❤」
「そうだな」
……………………。
キスの後に何があったかは……
察していただけたらと思います。
その後のトークでバレバレだとは思いますが(゜o゜)