これが俗に言うバカップル(7)
「本当に可愛いな、絵玖の顔は」
「秀吾くんだって、イケメンですよ」
「田舎くさいだろ、俺の顔つきは」
「いえ、そんなことないです。都会に住んでるって言っても違和感はないと思いますけどね」
「そうか?」
「はい、あたしが言うんですから、自信持ってください」
「……じゃあ、自信を持つことにするよ」
「それでよろしい、です」
「はっは。…………」
「ん…………」
絵玖の頭に手を伸ばし、そっと撫でてやる。ちょっとくすぐったそうにしているが、悪い気分はしてないようだ。
「あたし、男の人に頭を撫でられたのは初めてです」
「そうなのか? 子供の頃とかにあるもんじゃないのか? 普通」
「子供の頃のは換算に含まないようにしてるので、度外視です。そこそこ良い年齢になってから、です」
「なるほど。して、その初めての経験の感想は?」
「すごく落ち着きます。こうしてもらいながら寝たら、きっと良い夢が見れると思います」
「そうか。気に入ってくれたか?」
「はい、お気に入りになりました」
「ならば、しばらくこうしていてやろう。絵玖の髪はサラサラだから触っていても気持ちが良い」
「髪にはそこそこ気を遣っているので、そういってもらえると報われますね」
「この滑らかな指通りよ……このまま顔を埋めたいくらいだ」
「ふふ、別にいいですよ? 秀吾くんは彼氏さんなんですから、したいことをしていいんですから」
「じゃあ……後でたっぷりさせてもらうとしよう。今は、このサービスを続ける」
「ありがとうございます♪」
「…………」
「はぁ~……」
「眠くなってきたか?」
「いえ、バッチリ目は覚めてますよ。あたし、落ち着くと溜息が出る癖があるので」
「分かる気はするな。俺も寝る前とかにはよく溜息が出るから」
「それだけ秀吾くんの太腿の居心地が良いってことですね」
「……そう言ってもらえるなら、この太腿で良かったと思えるな」
ありがとう、俺の太腿よ。
「辛くないですか? ずっと頭を乗せてるから……」
「心配ない、むしろ軽く感じるくらいさ。それに、この角度から見る絵玖の顔は可愛いから見ていて全く飽きない」
「……秀吾くんはどんな体勢でも、あたしのことを可愛いって言ってくれますね」
「実際そうだからな。お世辞だったらこんなにポンポンとは出てこないさ、純粋にそう思っているからこそ何度も言うことができるんだ。故に俺は言うのさ、何度でもな」
「何だか数学の証明みたいになりましたね」
「同じようなもんだな」
「あはは……」
「可愛いよ、本当に」
「えへへ、照れちゃいますよ」
「別に照れてもいいんだぞ? それだってまた違う可愛さがあるし。どんな顔をしたところで俺は絵玖のことを可愛いって思うんだよ」
「そういうところは、自信たっぷりに言ってくれますね」
「自分のことじゃなければ、自信を持つことはそんな難しくないからな。それに、絵玖を見ればそれも九分九厘理解してくれると思うから尚更だ」
「九分九厘ですか?」
「ああ、そうだ。……まあ、あんまり他の奴らには見せたいとは思わないがな。俺にだけ見せるようにしてくれたら嬉しく思うぞ」
「あはは、大丈夫ですよ。あたしだって、他の人にはあまり見せたくないですから。秀吾くんにだけ見てほしいです」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
「あたしだって、秀吾くんには笑っててほしいですからね。そのためならあたし、何でもしたいですもん」
「おお……ジーンと来た……俺、今すげぇ幸せだ」
「ふふ、あたしもです」
この感覚は間違いなく、恋をしないと分からない感覚だろう。