これが俗に言うバカップル(5)
この味を味わえない奴らは、本当に人生損してるよな。まあ、だからって味わっていいですか? と言われてもダメって言うけどな。これは絵玖と付き合ってる俺だけの特権だ、誰にも文句は言えまい。
「あ、そうだ――秀吾くん。今日の夜は何か予定ありますか?」
「今日の夜? いや、特に何もない。いつも通りお風呂入ってダラダラして布団に入るだけよ」
「そうですか。実は今日の9時くらいまで、崎田さんが用事で家を留守にすることになってるんです。なので、昨日と同じ時間くらいに家に帰っても、しばらく誰もいなくて寂しいんです。だから、秀吾くんがよければ、それまでここに居させてもらってもいいでしょうか?」
「そんなの、いいに決まってるじゃないか。絵玖は俺の彼女なんだ、家に留まることを一々断らなくてもいいんだぞ」
「えへへ、ありがとうございます」
「しかし珍しいな、崎田さんが留守にするなんて」
「何でも会社のほうで会議があるとかないとか……一応崎田さんも契約社員ということになっているので、色々あるんだと思います」
「なるほどな。でも、そのおかげで絵玖といる時間が少し伸びて、俺はよかったって思うよ」
「あはは、そうですね。崎田さんには申し訳ないですけど、あたしも嬉しいです。……なので、今日の夕ご飯はあたしが作りますから」
「マジで? いいのか? そうなると今日料理するの三回目だぜ?」
「全然大丈夫ですよ、料理は好きですし。それに秀吾くんの喜ぶ顔が見れるんだったら、何食でも作りたいですから」
「……ホントに俺は、できた女を彼女に持ったんだな。感激だ」
「その代わり、この後の宿題で分からない所の手解きをしてくださいね」
「任せろ。もう手解きもせず、そのまま俺が解答を書いてやる勢いだぞ」
「そ、それは結構ですよ。自分で解かないと意味がありませんから」
「そうだったな、つい取り乱した。分からなかったら分かるまで教えてやるからな。分かったフリをしてることほどいけないことはないからして」
「はぁ~い」
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おやつを食べた後、俺たちは再び2時間程課題に勤しんだ。そして、再び絵玖はキッチンに立ち、夜のご馳走を作ってくれる。
朝とは一転して和風料理が中心のおかずを作ってくれ、これまた箸がどんどん進み、どんどんお替わりをしてどんどん食べまくった。これを毎日食べてたら、絶対長生きできると思う。
さっき、絵玖は俺のボクノートを欲しいとか言っていたけど、だとしたら俺は絵玖の料理のレシピ本が欲しい。完璧に再現は無理だとしても、それがあれば絵玖の料理を食べてる気分にはなれるだろうからな。
料理は苦手だが、レシピさえあれば近いものは作れるはず。……次にでもお願いできるか聞いてみるとしよう。
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