これが俗に言うバカップル(1)
8月4日
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――ピーンポーン。
お、来たか。俺は玄関に向かい、ドアを開ける。
「おう、おはよう絵玖」
「……あれ? 秀吾くんが起きて出迎えてくれてる?」
「ふふ、驚いただろう?」
「はい、驚いてます。いつも12時くらいまでは寝てるって聞いてましたから」
「普段はな。ただ、今日は少し趣向を変えて出迎えてみようと思ったんだよ。涎垂らして寝てる姿を見られるのは恥ずかしいものだからな」
「……あたしは、見ていて面白いですけどね」
「見る側はそうだろうよ。でも、見られる側は見られたいとは思わないものさ。絵玖だって、寝てる姿を見られるのは嫌だろう?」
「うーん……秀吾くんにだったら、悪い気はしませんよ」
「……その発言はとても嬉しいが、まだちょっと俺は恥ずかしいな。許してくれ」
「そうですか? ……それにしても、よく朝の9時前に起きられましたね」
「ああ。まあそれに関しては理由がある。簡単だ、単純に昨日のことで頭がいっぱいであんまり寝付くことができなかったんだ」
「そ、そうなんですか?」
「やっぱり嬉しかったからな。心躍るイベントの後は、余韻に浸っていたいと思うものよ。そうしているうちに、時間がどんどんと過ぎていって……気付いたら夜中の3時くらいになってて、その後もなかなか寝付けず……気付けば夜が明け始めていた……」
「じゃあ、起きたというか、起き続けてたってことですか?」
「そういうことになるな」
「大丈夫ですか? 眠くないんですか?」
「無問題よ、俺の絵玖に対する想いは眠気になど負けん」
「そ、そうですか? でも、無理はしないでくださいね」
「人間一日くらい寝なくても正常に機能するさ。ギネスによれば10日程寝ずに起きることができていたようだぞ」
「10日もですか!?」
「うん。だが正常に機能はしていなかったな。訳の分からないことを口走ったり、幻聴が聞こえたりしたらしい。……実際に試してみればそれも分かるかもしれないぞ」
「いえ、それは遠慮しておきます。幻聴とかには、特に魅力を感じないので……」
「生きていく上で睡眠は大事だってことだな。……どうでもいい話をしてしまった。じゃあ、中に入りな」
「はい、お邪魔しま~す」
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