ほんとのほんと(14)
「じゃあ、また明日な」
「はい」
明日の予定は、今日と同じく俺の家で課題取組みということになった。当面の目的は課題を終わすことに決めたから。
「……今日も終わっちゃいましたね」
「心配するな、すぐまた明日になったら会えるよ。……この後を引く感じが、付き合うにおいての醍醐味なんだろうしよ。これがなかったら、新鮮味もなくなるかもしれないだろ?
……付き合い出したその日に言うことではないかもしれないけどな」
「あはは、そうですね。でも……あたしもそうだと思います。今日は、このまま大人しくお家に帰ります」
「長く会ってられるように午前中から来な。そして、俺に朝ご飯作ってくれ」
「もちろん。食べたいものがあったらいつでも言ってくださいね。作ってあげますから」
「うん、分かった」
「じゃあ、そろそろ……ねえ、秀吾くん」
「ん? 何だ?」
「お別れの前に……その……チューがしたいです」
「おお……お別れのチューってやつか?」
「はい。ちょっと、興味がありまして」
「俺もあるぞ。ただ、チューなんてしたことないから上手くできるか分からないけど」
「大丈夫です、あたしも経験ないですから」
「じゃあ、お互いにファーストキスってことだな」
「そうなりますね。初めては、好きな人としたいなと思うので……いいですか?」
「断るわけがないさ。……顎上げて、目閉じてくれ」
「はい。…………ん~」
俺は絵玖の肩に手を置き、そっと唇を触れ合わせた。
「ちゅ……。えへへ……これであたしもチューの味を知ることができました♪」
「どうだった? 初めての感想は」
「ちょっぴり切なくて、甘い味がしました。チューが好きになる理由も分かる気がします」
「そうか。……俺も、この感覚は忘れないよ。青春の一ページに刻んでおく」
「あたしもそうします。……じゃあ、また明日に――バイバイ、大好き❤」
「…………」
何だよやべぇな、今のすげぇ可愛かったぞ。可愛すぎてバイバイって返すのを忘れてしまった……。そして改めて思う、絵玖は俺の彼女になったんだと。
――確かに絵玖は普通の人よりも体が弱いかもしれない。だけど、そんなことで人の価値は決まらない。どんなに体が悪くても、絵玖がとっても可愛い女の子だってことに変わりはない。
これからは、今以上に絵玖を大事にしていこう。絵玖のしたいと思ってることは、俺が全部提供してあげよう。……もう、部外者ではなくなったわけだしな。
心のつかえが取れ、俺は清々しい気持ちで帰路についたのだった……。
……………………。
…………。
……。