ほんとのほんと(13)
――その後、俺たちは茹であがったトウモロコシを食べ、中断していた夏休みの宿題を再開した。付き合うことになったが、やってることはあまり普段と変わりはないような気がする。
しかし、気持ちのほうは先程とは全然違うものになっていた。
勉強途中とかに絵玖を見た時とか、「ああ、もう絵玖は俺の彼女なんだな」って気付くと、その度に充足感のようなものが体を走り回った。
それは俺だけじゃなく、絵玖も思っているかもしれない。時々俺のことをチラチラ見てはニコニコしているのは、動かぬ証拠だろう。
このおかげで、俺たちの間に完璧に壁はなくなったと見ていいだろう。心の底からお互いを大事にし、楽しい日々を送っていけるようにしたい。そのためにも早く夏休みの課題を終わし、この田舎の村を元気に駆け回りたいものだ。
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「――とりあえず、今日の目標はクリアしたな」
「そうですね。このペースなら、今週中には終わすことができるかもしれませんね」
「かもじゃなくて、終わしちまおうぜ。そして、まだしたことのないこの村での遊びを絵玖に教えてやるよ」
「わぁ~、嬉しい。俄然モチベーションが高まってきました。……もうこの後家に帰った後も課題に取り組んじゃいます」
「ああ、そうしな。俺もそうする、分からなかったら遠慮なく聞け。電話、メール、24時間対応してるからよ」
「頼もしい限りです」
「当然だ、俺を誰だと思ってる」
「あたしの自慢の彼氏さんです」
「お、おお……」
「何でちょっと動揺したんですか?」
「いや、そういう答えが返ってくるとは思わなかったんでな。てっきり誰ですか? って聞いてくると思ったものだから」
「でも、間違ってないですよね? 秀吾くんはあたしの彼氏さんですもの」
「まあ、そうだが……いかんな、気を抜くと照れてしまうぞ」
「ふふ、大丈夫です。あたしもそうですから。正直、今も照れてます」
「そうなのか?」
「はい。前はちょっとした気持ちで手をつないだりとかできましたけど、いざ付き合ってみてからつなぐと、全然気持ちが違うので……今もちょっと緊張で手の平が汗ばんでるし」
「……確かにそうだな。ただ、絵玖の汗なら俺は好きだぞ。汚いなんて思わないし……変態的な意味ではなくてだぞ?」
「分かってますよ、ちゃんと理解してます。……正直どちらの意味でも構わないですけどね」
「何? そうなのか?」
「ええ、どっちだろうと秀吾くんは秀吾くんですから」
「――俺、絵玖の汗好きだぞ。できれば舐めたいくらいだ」
「一気にメーターが吹き飛んじゃいましたね」
「やはり気持ちを偽るのはよくないと思ったからな。今さら繕ったところで俺は変態だ、だったら動じずにガンガン押すのみよ」
「すごいポジティブシンキングですね」
「前向きは基本的には良いことだろう?」
「そうですね。それに、そっちのほうが秀吾くんらしいです」
「うん、そうだろう。……今の会話が聞かれていたら、さぞ変なカップルだと思われるだ
ろうな。大半は俺の責任だが」
「いいじゃないですか、そう思われても。あたしたちが幸せならそれが一番です。周りを嫉妬させるくらいがちょうどいいですよ」
「それもそうか。気になるのは嫉妬してるからだもんな」
「そうです」
……既にバカップル全開だな、俺たち。
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