ほんとのほんと(7)
「……秀吾くん、一つ質問してもいいですか?」
「何だ?」
「秀吾くん……あたしが前回、化粧室で血を吐いていたってこと、どうして知っていたんですか? あたし、そのことを自分で話した覚えはなかったですよね?」
「えっと、それはだな……」
「別にそれを聞いたところで、怒ったりはしませんから、正直に言ってもらえると嬉しいです」
「その……絵玖が化粧室で咳き込んでいた日、絵玖と別れた後に、絵玖のお母さんに偶然出会ってな。その時に、絵玖のことを聞かせてもらったんだ。それでその時、絵玖がそういう嫌いがあるってことを、教えてもらったんだ」
「そうだったんですか、母さんが……じゃあ、結構前からあたしの体のことはばれちゃってたんですね……」
「ごめんな、何か隠してたようなことを……」
「いいんですよ。それを知っていたのに、今まで通りに振る舞ってくれてて、ありがとうございました。やっぱり秀吾くんは、とっても優しい人ですね。でも、だったら……残念だな~……」
「何が、残念なんだ?」
「ばれちゃったことが、です。できることなら、もうちょっとばれずにいたかったな~なんて」
「何でだ?」
「だって……ばれちゃったら友達のままでいることが難しくなっちゃうじゃないですか。どうしても、体の悪い子って思われてみんなからの目も変わってきてしまう。まして突然血を吐いて倒れることがあるような女となんて……関わりたいなんて思わないでしょう?」
「…………そんなことは、ないぞ。俺はお前がどんな事情を持っていようとも、絵玖のことを友達だって思う自信があるぞ」
「ありがとうございます。……もちろん、秀吾くんはそうしてくれると思いますよ。だって実際、それを知っていても普通に振る舞ってくれてたんですから。あたし、それを今知った時、すごく嬉しかった……そんな風に振る舞ってくれた人は今までに一人もいませんでしたから」
「今までってことは、昔、そんな過去があったってことか?」
「……今さら隠してもしょうがないですね。本当のこと、話します。でも、一つだけ約束してほしいんです」
「何だ? 言ってみろ」
「……真実を話しても、あたしには今まで通りに接してほしいんです。そして――秀吾くんには友達でいてほしいです。約束、してくれますか?」
「当たり前だ。俺は、どんなことがあってもお前の味方だぞ」
「ありがとうございます、秀吾くん」
絵玖は横になったまま、ゆっくりと話し始めた。