ほんとのほんと(5)
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――そして、時間は過ぎて4時くらい。
「ふう、結構頑張ったな」
「そうですね。教えてもらいながらだったから、大分捗りました」
「目標は達成できそうか?」
「後もう少し……のところなので、今日中に何とかします」
「そうか。俺も後一歩ってところだ。同じく今日中に何とかする。でも、その前に休憩だな。……四時のおやつにでもするか」
「あ、いいですね。あたしも何か、ちょっと食べたいです」
「昨日亮の家でもらったトウモロコシでも茹でて食べるか。おやつにはピッタリじゃないか?」
「おお~、それすごく魅力的ですね。それにしましょう」
「満場一致だな」
「あたしが茹でましょうか? 家事はあたしにお任せを」
「いいのか? 頼んじゃって」
「もちろんです。おやつを提供してくれるのは秀吾くんですし、これくらいしないと」
「……ホントにできた女だな、お前。都会の人間とは思えない」
「都会の人間の中にも、しっかりした礼儀を学んだ子たちもいるんですよ。特にあたしは上下関係が厳しい世界の人間でしたから、そういうの、癖でしちゃうんです」
「なかなか良い癖をつけたな。それを見て悪く思う奴は誰もいないだろう」
「ふふ、そうだとあたしも嬉しいです」
「じゃあ、よろしく頼む。キッチンの道具、適当に使っていいから」
「はい。秀吾くんは休んでてください。出来上がったらここまで持ってきますから」
「ああ」
「~~~~♪」
絵玖はご機嫌で下に降りていった。
今日の絵玖は終始ご機嫌だな。いや、いつも元気で明るいのはもちろんだけど、今日はその中でも特に良い。そんなにあいつの中で、テンションの上がる出来事があったんだろうか?
……まさかとは思うが、俺の初めての料理を食ったから、とか? いや、さすがにそれは……いや、でもわざわざ朝ご飯を食べないで来たってことは……うーん。
女の子にとって、男の手料理を食べれるって嬉しいことなんだろうか? 女心が分かってないと、また亮に言われてしまいそうだ。
――今からトウモロコシを茹で始めとして、大体15分くらいで絵玖は戻ってくるだろう。それまで何をしてよう。
ゆっくり休んでてと言われたが、この部屋でやれることはそこまで多くない。……あ、そういえば、トウモロコシとか茹でる時に使う大きな鍋の場所、絵玖は分かるだろうか?
普段使用してるのはあまり大きくない鍋だから、トウモロコシが入りきらないはず。大きな鍋で何かを作っても、一人では食い切れず腐らせかねないからな。
ガスコンロの下の収納スペースの中に入れてあるんだが……いや、ここまで考えるのなら教えに行ったほうが早い。
何を横着する必要があるんだ。下まで歩いて10秒だ。行こう。俺は事項を伝えるために下に向かった。
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