プロローグ~忘れられない日々の始まり~(13)
「じゃあ、明日持ってきてやる。野菜は適当にこっちでチョイスして持ってくるわ」
「悪いな、二人とも。……何か俺、すげー貧乏な生活を送ってるみたいになってるな」
「今の会話だけ聞いてたら、そうかもな。でも、差し入れなんて珍しい話でもねぇだろ、いっつも交換し合ってたじゃないか、俺たち」
「そうね、家族ぐるみだもんね。これもド田舎で育ったからなのかな」
「秀吾の両親は元気してんのか? もう向こうの町に住んでるんだろ?」
「元気も元気、すっかり都会色に染まり出してるみたいだ。不便な部分が一切ないからな、向こうは。幸せに暮らしてるよ」
「やっぱりか~。そんなに快適なのかね? 都会ってのは」
「亮にしては珍しいこと言うじゃない?」
「珍しいとは失礼だな」
「だって、前言ってたじゃない。シティ・ボーイに憧れてるってさ」
「そりゃ憧れはあるさ。でも憧れは憧れだから、ずっとそうでありたいってわけじゃないからして」
「まあ、都会に行けば、その間はシティ・ボーイだからな」
「いや、それは意味合い全く違うだろ。ボーイ・イン・シティだろ」
「……後半年したら、嫌でもシティ・ボーイの仲間入りだよ、俺たちも」
「そうね~。……ちょっと寂しいわね」
「だな」
「だから秀吾は今もこっちにいるんでしょ?」
「分かってるじゃないか」
「そりゃ両親は向こうにいるのに一人で残ってるって時点でバレバレよ」
「まあな。でも分かるだろ? 俺の気持ちは」
「もちろん、私だってこの村を愛してるからね。できることなら廃村にはなってほしくなかったし」
「俺も同じ」
「都会の生活、私たちに送ることはできるのかしらね。今からちょっと不安だわ」
「多分、順応はできると思うぞ。俺の両親がそうだからな、若い俺たちには造作もないだろ……違和感はあるだろうけど」
「それはそうかもしれないけど……とりあえず道にすごく迷いそう」
「それはすげぇ分かるぜ。俺も絶対迷うと思う。周り一面高いビルなんだろ? 三階建ての公民館しか見たことない俺たちにはレベルが高すぎるぜ」
「地図は常に持っていないといけないわね」
「だな」
「……まあ、助け合っていけば何とかなるだろ。死ぬわけじゃなし」
「それもそっか。じゃあ、今はこのド田舎の生活を満喫してればいいわね」
「そういうことだ」
「じゃあ、帰りましょうか。マイ・ホームに」
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