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夏休みスタート! まずは農家のお手伝い(11)

「お、おお~……腰が~」

「大丈夫ですか? 秀吾くん」


「ほら、そこに寝そべりな。湿布張ってやるから」


 まだフレッシュな年齢にもかかわらず、俺はぎっくり腰をしてしまった。


「久々に体を目一杯動かしたからかもしれないな。しかも長時間……痛くなるのも無理はないか」

「昔はこんなことなかったんだけどな~……」


「昔はな。でもここからは体は衰えていく一方だから、注意が必要だろう。今日はそれを学んだだろ?」

「ああ、しかと腰に刻み込んでおく」


「じゃあ、貼るぞ。冷たいけど我慢しろよ」


 ――ペタッ。


「ひょおおっ!? 冷たっ!」

「…………うふふ」


「おい、絵玖~、お前何俺のこと見て笑ってるんだよ~?」

「ふふ、だって秀吾くん……聞いたことないような声を出すから……ふふ」


「人間驚いた時というのは、得てして自分と思えないような声が出るものなんだよ。今がそれだ、予想以上の湿布の冷たさに、体がびっくりしてしまったんだ」

「秀吾、その体勢で熱く語られても、あんまり心に響いてこないぞ」


「く、何ということだ……この俺がぎっくり腰なんて……もう親のことを馬鹿にできないぞ……」

「馬鹿にしてたのかよ、親のこと」


「おいおいぎっくり腰かよ、親父も歳を取ったな~はは――って感じでな。……俺も歳を取ったってことか……」

「いや、まだ十分若いって。俺たちと同い年だろ?」


「これからは、腰を動かす前に入念にストレッチをしなければいけないな」

「でも、全部収穫し終わった後だからよかったですよね。最後まで我慢したのはすごいと思いますよ」


「体も終えるまではって思ってたのかもな。んで、目標を達成した瞬間ぷつりと……全ての力を出し尽くしたんだな……」

「何で腰が永眠したみたいな感じになってるんだ? お前が生きてるんだから腰だってまだ生きてるって」


「だといいが……悪いな、二人とも。手間かけちまって」

「いえ、全然大丈夫ですよ。むしろ、ちょっと新鮮です。秀吾くんのこんな姿見たことなかったから」


「俺だって人間だ、ボロが出る時はある。むしろ、常にボロが出まくってると思うんだが……初めてみたってことはないだろ」


「いえ、普段の感じはボロって言いませんよ。だって自分から望んで出してるわけですから。予想してなかった時に出るのがボロですからね。正に今です。ぎっくり腰なんて、絶対に見せたくないものですからね」


「しかもこの若い時というおまけ付き」

「……走って逃げたいくらい恥ずかしいが、走って逃げることができないのが辛い」


「ふふ、いいじゃないですか。たまにはこういうのも」

「たまにはね……本来は見せずにいたい部分なんだけどな……まあでも、今のうちに恥をさらしておけば、次回恥をさらした時の好感度ダウンは大幅に防げるのか」


「恥をさらしても評価は下がりませんから大丈夫ですよ」

「何? そうなのか?」


「当たり前ですよ。そんなことで評価下げるなんて、どんな友達ですか」

「……亮、すごい女がいるぞ。ここに」


「やはり男心を分かってるんだな……魔性の女、須貝絵玖ちゃんか……」

「ついに亮くんにまで同じことを言われてしまいました……」


「? ということは秀吾にも同じことを言われたことがあるのか?」

「会うたびに言われてますよ。褒め言葉らしいんですけど」


「これ以上の褒め言葉はないぞ。女性にとって魔性は最高の賛辞だ」

「それ、秀吾くんがそういう子が好きなだけなんじゃないですか?」


「可能性はなくはない。でもそれってつまり、俺は絵玖を普通の子よりも好きだってことになるんではないかい?」

「…………!? な、なるほど……そうとも言えますね」


「だろ? だから、ありがたく受け取っておいたほうがいいと思うが」

「じゃ、じゃあ、ありがたく受け取っておきます」


「なるほど、秀吾は魔性萌えだったんだな」

「魔性と、ドジっ子が俺の好みだな。後は黒ストッキングと黒ニーソ」


「いや、その辺は知ってるから教えなくてもいいよ。というか、絵玖ちゃんの前でそんな堂々と言わなくてもいいから」

「心配ない。絵玖はその辺は寛容だから」


「あははは……」

「――ふう。……よっこいしょっと」


「大丈夫なのか? 立っても」

「大分痛みも引いてきたから。それに、ずっと寝そべったままでもいられないからな。気合いで立ち上がった」


「そうか。――今日のノルマは無事達成できたし、これで終了だ。長時間手伝ってくれて助かったよ。ありがとう」

「いいってことよ」


「そうです。むしろ、こんな貴重な体験をさせてくれてありがとうございました」

「はは、連絡してくれればいつでも体験させてあげるよ。遠慮せずに言ってくれ」


「はい、ありがとうございます」

「それじゃあ、お待ちかねの……報酬の野菜を二人にあげよう。向こうに車があるから、そこにある野菜を好きなだけ持ってってくれ」


「待ってました」

「楽しませてもらった上にお礼まで……とっても嬉しいです」


「じゃあ、向こうに行こう」


 ……………………。


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