プロローグ~忘れられない日々の始まり~(12)
――キーンコーンカーンコーン。
「――では、今日の授業はここまで。気を付けて帰ってくださいね、今日もお疲れ様でした」(数学教師)
ガラガラ。
「はぁ~、終わった。佑香、この後の予定は?」
「今日はこのまま帰って神社の掃除ね。家は広いから掃除も区分してやらないといけないからさ~」
「そうか、大変だな」
「あんたたちは? 普通に直帰するんでしょ?」
「俺はまあ、門限なくなったからいつでもいいんだけど」
「そういえば、一人で住んでるんだもんな秀吾は」
「ああ、そうだ」
「今さら言うことじゃないかもしれないけど、ちゃんとご飯食べてる? 自炊なんてあんまりしたことないんでしょ? あんた」
「確かにやったことはない。でも、こうして今を生きているってことは、まともなものを食べているってことの証明になってるだろ」
「生きてるからってまともなもの食べてるとは限らないでしょ……まあ、見た感じ健康そうだから大丈夫なんだろうけど、ちゃんと食べるもの食べて栄養失調にならないようにね。よかったら何か差し入れしようか? 煮物とかカレーとか」
「いいのか?」
「いいわよ、今さら気にする間柄でもなし、多分母さん喜んで差し入れするでしょう」
「それはありがたい、後はご飯を炊けばそれだけでディナーが成り立つ」
「じゃあ、明日学校に持ってきてあげる。何日分くらい欲しい?」
「うーん、三日分くらい? 量は佑香の母さんの判断に任せるわ」
「オッケー」
「俺の家からも何か差し入れてやるか? 野菜とか」
「もう収穫の時期になったのか?」
「今日帰ったら手伝うことになってるんだ。多分トマトとかキュウリとかは食い頃になってるはずだ。多分収穫しても全部は食い切れねぇし、よかったらだけどな」
「それはもちろん、欲しいところだ。お前ん家のトマトはマジで美味いからな」
亮の家は農家だから、栽培の仕方に気を配っているため、トマトは糖度が高くてすごく甘い、フルーツみたいな味わいなんだ。あの味を知ってしまうと、普通のトマトは食べれなくなる。