夏休みスタート! まずは農家のお手伝い(6)
「おお~、広~~~~~~い!」
目の前に人がる広大な大地に、絵玖はすっかり目を奪われていた。
「これ、全部亮くんの家の土地ですか?」
「ああ、そうだ。亮の家はこの村でも一、二の農業家系だからな。それに恥じない営みをしてるってことだな」
「それにしても、すごいですね。色んな野菜がたくさん栽培されてて」
「どれもこれも農薬とかをあんまり使ってないから、味は最高だぜ。特にトマトは最高だ。糖度が高いからデザートみたいな味わいなんだ。是非今日は齧らせてもらうといい」
「はい、させてもらいます」
「えーっと、亮は…………お、いたいた。おーい、亮!」
俺が叫ぶと、亮はこちらを振り向き、手を振ってこちらに向かってくる。両親も一緒に振り返ったから、ペコリとお辞儀をした。
「おう、来てくれたんだな。予定より早めに来てくれてありがとよ」
「約束事に関しては早めに到着するのが基本だ。その暗黙の了解を守ったまでよ」
「そうか。絵玖ちゃんもありがとよ……というか、随分気合いの入った格好してきてくれたんだな」
「秀吾くんに農作業用の服を貸してもらったら、こんな感じになっていました」
「はは、田舎の格好も似合うもんだね。やっぱり元が良いと何を着ても似合うんだな」
「褒めてもらってありがとうございます」
「もう、電話くれた時から始めてるのか?」
「まあ、そうだな。今トウモロコシの収穫をやってたところだ。もう少ししたらそれが終わるんだが、まだまだ収穫を終えるには先だな」
「そうか。微力ながら、頑張らせてもらうから。俺たちは何をすればいい?」
「基本的に機械で収穫する野菜は親がやるから、二人は俺と一緒にナスとトマトの収穫を手伝ってくれるか? 慣れてなくても簡単にできるからさ」
「了解した」
「絵玖ちゃんも大丈夫かい?」
「はい。体験させてもらえるなら、どんなことでもやらせてもらいます」
「やる気バッチリだな。じゃあ、場所まで案内するよ。着いてきてくれ」
…………。
――亮に連れられて、ナス、トマトゾーンにやってくる。
「俺たちはここで作業するから」
「うわ~、大きいですね~」
「亮の家の野菜は大きくて栄養豊富なのが特徴なんだ。見かけ倒しってことがないから、安心して食えるぞ」
「たまに形が少し歪だから、その辺で商品として弾かれてしまうこともあるんだけどな。そういう風に言ってもらえるのは嬉しい限りだ。今日は仕事終わったら、好きなだけ野菜を持って帰ってくれよな」
「これでしばらく野菜は買わなくて済むな」
「あたしも、口にするのが楽しみです」
「うん、楽しみにしててくれ」
「……これが、秀吾くんが絶賛してるトマトですか?」
「ああ、そうだ。これが亮の家で作ってる野菜の中で一番好きなんだ。このトマトなら毎日食っても全然飽きないぞ」
「ホントに秀吾は好きだよな。来て手伝う度にトマトは必ず持って行ってるからよ」
「そんなに美味しいんですね~」
「亮、一個、絵玖に齧らせてやってもいいか? 美味しさを伝えるには実際に食べてもらったほうが早い」
「ああ、構わないぞ。ならお前も食えよ、急にお願いしたお詫びだ」
「何? いいのか?」
「好きなんだろ? 全部は売り捌けないんだ、一個くらいどうってことないさ」
「何ともありがたい。じゃあ絵玖、いただこう」
「はい! 嬉しいな~」
「その辺から好きなの適当に捥いで食いな。そこにホースもあるから洗ってくれて構わない」
「やったぜ。じゃあ……俺はこれ。絵玖は? どれにする?」
「じゃあ……あたしはこれで」
二人でトマトを茎から捥ぎ、水でさっと表面を洗う。