夏休みスタート! まずは農家のお手伝い(4)
というわけで、絵玖の作ってくれた朝食をもぐもぐと食べながら、絵玖に亮との電話の内容を伝えた。すると、俺の予想通り――。
「それ、すごくやってみたいです。実際に、自分の手で野菜を収穫してみたいって思ってたんですよ」
興味津々の返答をしてきた。
「絵玖も連れて行くって亮には伝えておいたから、一緒にやらせてもらえるよ。一緒に亮の手助けしてもらえるか?」
「もちろんで、是非手助けさせてください。戦力になるかは……正直分からないですけど」
「絵玖は手先が器用だから、コツさえ掴めばすいすいできるようになるさ」
「そうでしょうか?」
「ああ、俺でもできるんだから間違いない」
「秀吾くんは元々手先が器用じゃないですか」
「手先が器用だったら、こうして朝食食わしてもらうこともないはずだろ? 俺は器用ってわけじゃなくて、ずっとやり込んで体が覚えてるだけだよ。畑作業もな」
「器用になるにはやり込まないとできないんじゃないですか?」
「要領の良い人間は、そこまで到達するのがすごく早いもんだが、俺はそこまでなるのに結構時間を要したからな。お世辞にも器用とは言えないレベルだよ」
「そうですか? でも、今のあたしから見れば、器用な部類に入ってますよ」
「今はな。これが半日過ぎた頃には、それを言ってるのは俺になってるであろうよ」
「絶対にないと思います……」
「まあ何にしても、亮の力になってあげようぜ」
「はい。でも、どうしましょう……あたし、ほとんど手ぶらで出てきちゃったので、動きやすい服装じゃないんですが……」
「それに関しては心配ない。絵玖用に、俺の着れなくなった運動着を引っ張り出しておいた。それを着て農作業に励むといいぞ」
「いいんですか?」
「うむ。俺の体臭が気にならなければの話だが」
「気になるわけないじゃないですか。あたし、秀吾くんのにおい、嫌いじゃないですよ」
「お、そうか?」
「はい、何て言いますか……秀吾くんらしいにおいがするから好きです」
「……それはどんなにおいなんだ?」
「うーん、うまく言い表せないんですけど、とにかく、いいにおいです」
「まあ、いいにおいなら何も口出しはすまい。少々大きいかもしれないが、そこは我慢してくれ」
「はい、全然大丈夫です。……ふふ、ちょっとワクワクしてきました」
「釣りをした時も思ったが、結構絵玖はアウトドア系のことが好きなんだな」
「何か、そうみたいですね。最初は自分のことインドアだと思ってたんですけど、最近になって体を動かすことが好きだってことが分かりました。やる機会がなかっただけなのかもしれないですけどね」
「忙しい生活だっただろうからな。でも、それに気付けてよかったじゃないか。インドア系の良さもアウトドア系の良さも知れたわけだ。オールラウンドなキャラに一歩近づいたぞ」
「えへへ、いずれパーフェクトレディになれるといいですけどね」
「絵玖がなりたいと思えば、いずれなれる日が来るさ。もっとも、既に完成されてるような気がするけどな、俺個人的に」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。……恥ずかしいから、深くは答えないぞ?」
「ええ、残念だな~」
「気が向いたらな。……あ、ご飯お替わりください」
「はい、たっぷりでよろしいですか?」
「はい、たっぷりでお願いします」
たくさん食べて、エネルギーをたっぷり充填して臨むとしよう。
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