夏休みスタート! まずは農家のお手伝い(2)
「そ、そうはいかんぞ! 泥棒!」
「わ、わわっ!?」
俺は意表を突くため、スプリングを利用して即座に立ち上がり、静止するために両手を伸ばし、泥棒に対抗を――するはずだったんだが。
……モニュ。
「んにゃあっ!?」
何やら非常に柔らかいものを鷲掴みにしたようだった。この独特の柔らかさ……これはひょっとして、女の子のおっぱいか? 目線をゆっくり上に上げてみる。
するとそこには――。
「…………絵、玖?」
「あ、あはは……おはようございます、秀吾くん」
「ほ、本当に絵玖か? 絵玖の皮を被った何かじゃないんだな?」
「そんなはずないですよ。須貝絵玖はこの世であたししかいません」
「そうか、よかった……」
そうだよな、こんな柔らかい胸があるんだ。変装しようにも変装する術もない。
「てっきり泥棒かと思って勝手に焦ってしまった……」
「すいません、連絡もなしに、急にお邪魔してしまって……」
「いや、それはいいんだが……どうやって俺の家に入ったんだ? 表は鍵がかかってたはずなのに……」
「あ、秀吾くんの家に来る途中で偶然佑香さんと遭遇しまして、その時に秀吾くんはまだ睡眠中だと思うから、玄関の植木鉢に入ってる予備の鍵を使って中に入りなさいってアドバイスをいただいたので、僭越ながらそれを実践させてもらいました」
「そうだったのか。……佑香め、勝手に人の情報を言い触らしおってからに」
「そ、それでなんですけど秀吾くん」
「ん?」
「その……そろそろあたしの胸から手を離してもらえますでしょうか?」
「ん? ……おおっ、すまない。何か気持ち良い感触が続いてると思ったら……」
「い、いいんです。急に来て驚かせてしまったわけですから」
「悪かった。……にしても、すごい質感だな。絵玖は何気に巨乳なのか?」
「ど、どうなんでしょうか? 自分ではあんまり分からないですけど……」
「サイズは何カップだ?」
「えーっと……Eカップ、だったでしょうか」
「巨乳だ、巨乳がここにいるぞ」
「こ、これは巨乳に入るんですか?」
「ああ、巨乳に入るぞ。おっぱい好きの俺が言うんだから間違いない」
「そ、そうですか。……パンツ以外にも興味はあったんですね」
「俺はこう見えて守備範囲はかなり広いぞ。女の子のそっち関連は基本全て好きだ」
「な、なるほど。秀吾くんのことが、また一つ分かった気がします」
「俺も、絵玖の知識を少し深めることができた。……ところで、今日は遊びの誘いに来てくれたのか?」
「あ、はい。もしお暇でしたら付き合ってもらえないかな~と思いまして。……ちょっと、来るの早かったでしょうか?」
「いやいや、来てくれる時間に注文は付けんよ。昨日だったら昼まで寝ていたが、今日はもう目が覚めた。起きることにするよ」
「今日の予定は、特になかったでしょうか?」
「あったらこんなだらしない格好で布団にいないよ。今日も秀吾くんは完全にノープランだ」
「あはは、よかった。来た甲斐がありました」
「来てくれて感謝する。……そんな絵玖に、一つお願いがあるんだけどいいか?」
「はい、何でしょう?」
「……お腹減ったから、何か朝ご飯を作ってくれないか? 絵玖の顔を見たら、絵玖の料理が食いたくなっちまったから」
「あはは、いいですよ。それくらいのことでしたら、喜んで作らせていただきます」
「それは助かる。……冷蔵庫の中、適当に見て使ってくれていいから。後……ちょっとボリューム多めでお願い」
「ボリューム多めですね、分かりました。じゃあ、キッチンお借りしますね」
「着替え終わったら、俺も下に行くよ。……絵玖は朝ご飯……食べてきたよな?」
「はい。崎田さんに食べさせてもらって、その20分後にここに向かって出発しました」
「随分と急ぎ気味で来てくれたんだな」
「早く秀吾くんと遊びたくて、自然と足早になっちゃってました」
「そうかそうか」
「じゃあ、先に下で準備してますね。なるべく早く作りますから」
「ああ、自分のペースでいいからな。焦らなくていいよ」
「はい、ありがとうございます」
絵玖は意気揚々と下に降りていった。俺に料理を作ってほしいと言われたことが嬉しかったんだろうか? だとしたら、俺ナイスだ。絵玖を喜ばせることができたぞ。