フィッシングのちファイアフライ(6)
「絵玖、そろそろ今日は切り上げようか。当たりもなくなっちゃったみたいだしよ」
「そうしましょうか。……そろそろお腹も減ってきましたもんね」
「ディナーの準備をしようぜ」
「分かりました。…………あれ? 竿が重くなってる……あ、秀吾くん、かかったみたいです!」
「ん? ホントか?」
「はい。……わわ、結構、引きがすごい……!」
「おおっ!? 大丈夫か?」
体勢もあるのかもしれないが、絵玖が逆に引き寄せられている。これは結構な大物がかかったか? 俺も絵玖の元へ行き、一緒になって釣竿を引っ張る。
「あ、ありがとうございます。ここにヒットするなんて、すごい確率ですね」
「やっぱり、生きてるとドラマみたいなものはあるんだな。……おお、こいつはすごい引きだ。大物が期待できそうだ」
「に、逃がさないように頑張りましょう!」
「おう。……絵玖、リールは俺に任せてくれ」
「分かりました」
絵玖がリールから手を離し、俺が代わりにリールを握る。糸が若干緩んだところで、力を入れて巻き上げ、こちらに引き寄せる。力が強いせいか、リールも固くなり、思うように引き寄せることができない。
「なかなかやるな~、正に手に汗握る展開だ」
自然とテンションが上がってるのが分かる。
「でも、ちょっとずつ近づいてきてますよ」
絵玖の言う通り、水しぶきが上がる場所は徐々に近くなってきている。
「よし、後少し――」
食い千切られないように注意も払いながら。
…………よし。
「絵玖、引っ張るぞ!」
「はい。――それっ!」
そしてついに――ザバーン。獲物が姿を現した。
「釣れた。……おお、こいつはでかい」
「すごいです~」
アユの平均の長さは大体30cmくらいと言われているが、今俺たちが釣り上げたのは40cmくらいありそうな巨大なアユだった。しかも、丸々太っていて横も広い。
「最後の最後で大収穫だ。よく引っかけたな、絵玖。やっぱりお前は何か持ってるな」
「えへへ、純粋に嬉しいです。大物を釣り上げた後の感覚って、すごく良いものですね」
「これがあるから、釣りは止められないんだよな。最高の終わり方だよ、これは」
狙い通り、ちょうどアユとイワナ二匹ずつ釣り上げることができた。二人とも過不足なく両方の味を楽しむことができるぞ。
「これで夕食は豪勢に食べることができそうだ」
「やった~」
――というわけで、今日の川釣りはここで終了となった。
続いては夕食の準備に取り掛かる。
……………………。