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フィッシングのちファイアフライ(2)

 ――自宅にて。俺は絵玖の作ってくれたキノコとツナの和風パスタに舌鼓を打っているところだ。


冷蔵庫に残っていた食材が少なく、俺であれば何も作れず万事休していた状況だったんだが、そこは料理上手の絵玖。少ない食材でもしっかりとレシピを考え、スピーディに完成させてしまった。


 そして、これがまたすごく美味い。まるで本場のパスタ屋さんに来たかのような絶妙な味付けで、口に運ぶ手が休まることがない。


「本当に、絵玖は料理人になったほうがいいんじゃないかと思うな」

「えへへ、そうですか?」


「うん、だって美味すぎるもん、味付けが」

「ありがとうございます。でも、あたしなんかより崎田さんとかのほうが料理は上手ですよ」


「そんなに上手なのか? 崎田さん」

「はい。それはもう……家庭料理の完成度の高さは完璧と言っていいと思います」


「そうなのか。……そう言われると、食ってみたくなるな。崎田さんの料理も」

「リクエストすれば、きっと作って渡してくれると思いますよ。秀吾くんのことは、崎田さんにも伝わっていますから」


「ちょいちょい、話してるのか? 俺のこと」

「はい。秀吾くんと遊んだことは、つい人に話したくなるようなことばかりなので。崎田さんにはよく聞いてもらってます」


「俺も誰かに話したいところなんだけどな……如何せん、家に帰っても誰もおらず……夜は寂しい日々を送っているよ」

「両親とは、連絡を取ってないんですか?」


「いや、もちろん連絡は取り合ってるよ。でも、毎日ってわけじゃねぇからな。向こうは普通に仕事してるし、ゆっくり話す時間もあまりないから。……自給自足の難しさを痛感してるよ」


「でも、ちゃんと生活できてるからすごいじゃないですか。男の子だと、そういうの不得意な人もいるでしょうし」

「まあ、嫌でもしなきゃいけない状況だからな。自分が動かなければ何も解決できないし、毎日生きるために精一杯よ。叶うなら、絵玖を家の家政婦として雇いたいくらいだな」


「か、家政婦ですか?」

「うん、それか料理係。俺が飢え死にするのを防いでくれると助かる。報酬は……日向村の穴場スポット巡りツアー無料招待とか」


「おお~……それ、結構魅力的な提案に感じますね」

「え? そう? てっきり現金ではないんですね!? とか言うと思ったんだけど」


「友達からお金をもらおうとは思わないですよ。それに、あたし、もっとこの村のこと知りたくて仕方ないですから、そっちのほうが嬉しいですよ」

「予想外に好感触を得たぞ……」


「暇な時にやらせてほしいかもです。秀吾くんの料理係……絶対に退屈はしなさそうですし」

「してくれるとするなら、俺も全力で対応するぞ。……美味い料理が食べたくなって我慢できなくなったら、連絡させてくれ」


「はい、もちろんいいですよ。いつでも受け付けますから」

「――ごっくん。ごちそうさまでした、非常に美味しかったです」


「お粗末さまでした」

「――さて絵玖よ。これからの日程についてなんだが、食べながら二つの案を考えてみたんだが、どちらをしたいか希望を教えてくれないか」


「はい、分かりました」


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