プロローグ~忘れられない日々の始まり~(10)
「――で、結局性別は女の子なんですか? 先生」
亮の代わりに俺が聞いてみる。
「うん、そうだよ~。これでクラスの男女比がちょうど5人5人で分かれるね」
「やったわ、同性のお友達が増えるのね」
「みんなもう分かってると思うけど、転校生さんとは仲良くしてあげてね。その転校生さんは都会で育ってきたから、こんなド田舎の生活は何もかもが初めてだろうから。分からないことがあって困ってたらみんなで助けてあげて。田舎の良さを目一杯伝えてあげてね」
「はーい、分かりました~」
「じゃあ、これで連絡事項は終わり。今、授業道具持ってくるから教科書の用意しておいてね~」
――ガラガラ。
「へ~、転校生か~」
「こんなところに転校してくるとか、よっぽどの物好きなんだな」
「そうかな? 都会っ子は田舎の生活に憧れるものなんじゃないの? 私たちとは逆でさ」
「ないものねだりってか?」
「そうそう」
「にしたって、ここは田舎の中の田舎だぞ? 都会っ子には少々レベルが高いと思うんだが……その辺の森とかに生えてる葉っぱを食べれる――みたいな思考回路は到底ないだろ」
「まあ、その辺は私たちでカバーしてあげましょうよ。学年リーダーとして、その子にはこの学校の生活を満喫してもらわなくっちゃ」
「萌えてるな、お前」
「ちょっと字が違う気がするけど……それはもちろん。というか、私だけじゃなくてみんな浮き足立ってるわよ。はぁ、明日が楽しみだわ」
「そうか~」
「何よ、秀吾は嬉しくないの?」
「別にそんなことは言ってないさ。仲間が増えるのは素直に嬉しいと思う。ただ、それと同時に若干の不安がある」
「不安?」
「そう、不安。一つ目は、俺たち幼馴染軍団の中に転校生が溶け込むことができるのか、もう一つはあまりの不便な生活に根を上げないかってこと」
「あー、なるほど。二つ目はともかく、一つ目はちょっと分かる気がするわね」
「だろ? 転校生がどんなタイプの人間かはまだ分からんが、ガキの頃から一緒に付き合ってきた俺たちの中に急に溶け込めって言われても、それは難しい話だ。俺たちの普段のスタンスでは、転校生に負担をかける可能性がある」
「うんうん」
「まあ、俺の勝手な推測だけどな。――というわけでファーストコンタクトはお前に任せるから」
「え? 秀吾は関わらない気なの?」