フィッシングのちファイアフライ(1)
7月31日
――今日は前期最後の登校日。
学校に遅刻せずに登校し……
体育館で全校集会をし……
夏休みの課題を渡され……
夏休みを過ごす上での諸注意を話し……
「――じゃあ、これで終わりにします。夏休みを楽しんでくださいね~。何かあったら、先生に連絡か、直接学校に来てください。できる限りの協力はするよ~」
正午になる前に、学校は終わりを迎えた。
「ふう、終わった終わった……」
「これでしばらく、学校ともおさらばだぜ」
「……そのまま帰って来なくなりそうな発言ね」
「実際、しばらく学校には顔を出さないよ。よっぽどのことがない限り。……三山亮は、家で畑の手伝いに精を出します」
「夏はこれから収穫のピークだもんな。……暇があったらヘルプに行ってやるぞ」
「おお、それは助かる。報酬は新鮮な作物でよろしか?」
「もちろんだ。ぶっちゃけそれ目当てだ。行ける日があったら連絡するよ」
「おう、サンキュー」
「……じゃあ、私帰るわね。これから家の手伝いがあるから」
「ああ、頑張れよ~」
「絵玖ちゃん、夏休み日程が合ったら遊びましょうね」
「はい、是非お願いします」
「じゃあね~」
「亮は、これから畑の手伝いか?」
「そうだな~。午前中で学校が終わるっていう情報を把握されてるからな。帰ってきたらすぐに手伝ってくれと頼まれた。断るわけにはいかないな……」
「親孝行することはいいことじゃないか。しておいたほうがいいぞ」
「そうだな。俺に手伝えることはこれくらいだし、尽力するつもりだよ。……夏休み、いつでも連絡してくれよな? 学校生活最後の夏休みなんだ、思い出に残るような日々を送ろうぜ」
「おう、そうしよう」
「じゃあ、またな。絵玖ちゃん、お疲れ」
「はい、また今度会いましょう」
こうして、幼馴染二人が帰っていった。
「――今日はあんまりしゃべらなかったな、絵玖よ。緊張してたのか?」
「いえ、そんなことないですよ? あたし、いつもこんな感じですから。たまたま今日は話を聞き入ってただけです」
「そうか。……何か俺たちに気に食わないことがあったとか、そういうわけではないな?」
「そんなはずありませんよ。秀吾くんたちに気に食わないことなんて一つもありません」
「一つもないか。全てを受け入れてくれる覚悟なんだな?」
「はい、大切な友達のことは、全て受け入れます」
「そうか、そう言われて悪い気はしないな。非常に気分が良い、気分が良いから今日は絵玖と遊んであげよう」
「え? ホントですか~?」
「もちろん。というか、純粋に遊びたい。午前で学校が終わるというのに、何もせずに帰るのは非常にもったいないしな」
「そうですね、嬉しいです」
「でも、その前に昼食をとりたいところだな……どうするか……」
「その感じだと、まだ昼食についてのプランは立ってないですね?」
「まあ、そうだな。絵玖は? 崎田さんに作ってもらってたりするか?」
「いえ、特に頼んでないです。学校があるとしか言ってないので、直帰したら作ってくれると思いますけどね。……もし、秀吾くんが昼食に関してノープランなら、こんなプランを立ててみたんですが如何でしょうか?」
「……うむ、興味がある。聞かせていただきたい」
「はい。あたしが秀吾くんの家に行って、昼食を作ってあげる――というのはどうでしょう? また作ってほしいと以前言ってもらえたので、そのリクエストに答えてあげたいと思ったので。どうですか?」
「……悩むまでもない、即決だ。それ程魅力的な提案は現時点ではないだろう」
「ふふ、ナイスプランですか?」
「うむ、ナイスプランだ。ついでに食べながら何をして遊ぶのかも決めるとしよう、実に有意義な時間の過ごし方ではないか?」
「はい、そうですね」
「そうと決まれば――荷物をまとめて俺の家に行く準備だ。40秒で支度しな?」
「……あれ、どこかで聞き覚えのある台詞でした……」
「泣き言なんか聞きたかぁないよ」
「完全に、モノマネが入ってますね」
「急に言ってみたくなった。特に意味はないよ……いいじゃないか! 言ったって!」
「あ、あたし何も言ってませんよ~」
「俺のスキル、逆切れが発動してしまったようだ。扱いには気をつけたほうがいい。無暗に障るとショートするから」
「ショート、しちゃうんですか?」
「繊細だからな、俺は」
「あはは……今日も秀吾節全開ですね」
「気分が良いからな、今日はこれをキープしていこうと思う。振り落とされるなよ?」
「はい、頑張って付いていきます」
「じゃあ、俺の家に行くか」
「はい」
……………………。