プロローグ~忘れられない日々の始まり~(9)
「良いニュースというのは――」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………何だっけ?」
みんなズッコケた。
「先生、あまりにも古典的ではありませんか?」
「ごめーん、亮くんのせいでちょっと連絡事項が飛んじゃった」
「どこまで俺のせいにする気だ!」
うん、今日もおバカ街道を突き進んでるな。
「今思い出すから待っててね。……………………!」
手のひらをポンと叩いて。
「そうだそうだ、思い出した。これだよこれ、はいみんな聞いてください」
さっきから聞いてるんだけどな……。
「今、君たち最上級生は全員で9人いるわけなんだけど、それがなんと――明日から10人になることになりました~!」
「10人になる?」
「……つまり?」
「つまり~、明日、この学校、このクラスに転校生がやってきまぁす!」
先生がそう言った瞬間、教室は一気にざわついた。転校生? こんな時期に? 来年から廃校になるこの学校に?
「嬉しいでしょ? 仲間が増えるんだよ? 9人しかいないこのクラスの人数が二ケタにパワーアップするんだよ。さらに、その転校生というのが、これまたビックリ」
「何だよ、すごい人なのか?」
「うん、すごいよ。でも……これは明日のお楽しみ~」
「うわ、結局もったいぶるのかよ」
「先生、性格悪くないですか~?」
「だって、今言っちゃったら明日の楽しみが減っちゃうでしょ? 楽しみは一辺に味わわないで少しずつ味わわなくちゃ~」
「じゃあ、せめて性別だけ教えてくれよ」
「しょうがないな~。……亮くんが好きな性別だよ」
「何だよ、男かよ……」
「ちょちょちょ!? 秀吾、お前何訳の分かんないことを言ってる!」
「あれ? 違ったっけか?」
「お前分かっててわざと……俺は女の子が好きだ! 男になんて微塵の興味はないわ!」
「うわ~……三山くんってやっぱり女の子しか興味持ってないんだ~」(木原さん)
「みんな、明日は転校生の子をミャンマーの間の手から守ってあげましょうね」
「おー!」(8人全員)
「……何で? 何で俺、みんなから苛められてるの? 変な事言い出したのは、秀吾のはずなのに……」
「人生って、そういうものだよ、亮くん」
「…………がく」
亮は机に突っ伏した。