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生きる  作者: 維月十夜
3/7

恋―‐‐そして、墜落

セツナは、ライゾという青年と出会い…恋に落ちる。

友として出逢った二人だが、予期せぬ変化が!

軍の訓練で、互いに技を競い合った日の午後、二人は珍しく休暇を貰いうけた。


「なんだ、聞きたい事って?」

丘の小道を、肩を並べて行きながら、セツナは尋ねた。

時折吹くそよ風に、彼の明るい金髪が柔らかそうに揺れている。

「セツナ、お前はなぜ強くなろうと思ったんだ?」

一瞬、難しい顔をしてから、ライゾは横の彼女を盗み見た。

「聞きたいのか?」

大樹の木陰に、仰向けに寝転がるセツナとライゾ。

二人の間に、心地よい沈黙がしばらく流れた。

「お前なら、他の道が幾らでもあっただろうに……なぜだ?」

「あたしの家は、代々武家の家柄……強きに男女の差はないというのが家訓でな、父との約束を守るため、この道に来たのもある」

「お前は‐‐―‐‐それで幸せか?」

「……え?」

ひとしきりの風が、二人の前髪を揺らしていく。

首を横に向けると、驚くほど真摯なライゾの眼差しにぶつかった。

「お前は強い……だが【女】なんだ。無理はしないでくれ」

「なんで……お前にそれを言われなきゃならない」

少しむくれたセツナに、ライゾは屈託なく笑う。

「戦友、だからな」

勢いよく起きあがったライゾは、待ってるよう言い残してどこかへ駈けていってしまった。

「なんだって言うんだ…あ奴は」

呟いた彼女の横顔は、これ以上ないほどに赤くなっていた。

幾ら鈍感なセツナでも、その意味が分からないわけではない。

二人には、長く時を共するうち‐‐―‐‐友情以上の感情が生まれ始めていた。

「その花……お前にやる。だから、俺の前だけでいい……女らしくしてくれ」

「ライゾ……?」

俯いている彼の顔は分からないが、おそらくは赤くなっているだろう。

「お前を、愛しちまった。どうすればいい? 昼も、夜もお前だけしか見えない」

苦しげにはき出すライゾに、セツナは遂に惑いを捨てて、飛び込んだ。

「悪かった……知らずに、苦しませていたんだな? もう、苦しまないでいい。あたしは、ライゾの傍を…離れないから」


言ってしまった。


‐‐―‐遂に、言ってしまった!


これが軍に知れれば、もう二度と、この職業には戻れなくなる。

セツナは幸福感と、絶望を同時に味わっていた。

「お前を‐‐―‐‐愛してる」

「ライゾ……ありがとう」


きつく触れ合う身体。


絡まり合う舌、熱い吐息。


「離すな……あ、たしを…離さな…いでっ」

「くうぅっ……セツナ……セ、ツナっ」

セツナは、ライゾの褐色の背中に爪を立てて、動かなくなる。


罪と知りながらも、危険な愛と分かっていながらも。

二人は本気で愛し合い、混じり合った。


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