出逢い
軍部に属することになったセツナは、ある日、ライゾという青年に出逢う。
初めてできた友に、彼女の心は弾んでいた。
そうして、季節は廻りゆき。
「セツナ殿……でありますか。主上から、国命を預かって参りました」
寒空の元、寒風が吹き荒ぶ頃に、セツナは兵士として召集を承けた。
棠国の公主が、帰還したらしいのだ。
軍部に属することとなり、暮らしは他の兵卒と同じ、定められた兵舎での暮らし。
女ばかりで暮らしていたセツナにとって、あまり暮らしよいとは言えない環境だった。
なにせ、まわりには当然の如くに男しかいないのである。
初めのうちは、部屋の片隅で獣のように丸くなって休むことが多かった。
刺さる視線。
刺さる陰口。
(男共……視線がウザイぞ。女が、そんなに珍しいか)
女だからと、いらない諍いを幾つも買った。
だがその度に、セツナは勝利し、男達を屈服させていた。
朱髪のセツナ‐‐―‐‐それは、その時に付けられた異名のような物だったが、いつの間にかに定着してしまっていた。
そんなある日のこと……。
セツナは、ある男と出会った。
「おい、お前か……朱髪のセツナとやらは」
厳しい訓練の後、やっとの事で得た安息を破った男を、彼女は思いきり恨めしげに睨みつける。
「なんだ……あんたは。用がないなら去れ、今のあたしは機嫌が悪いんでねっ」
寝転がったまま、セツナは男を突っぱねる。
「噂通りだな、ホントに女だ。女の身で…なぜこんなむさ苦しい処に来た?」
藪から棒に、もっと悪く言えば無遠慮に尋ねてきたこの男を、始めセツナは『絶対、後でシメてやる』と内心でひどくなじっていた。
「あんた…無遠慮すぎ。それに、こっちはあんたの名前を知らない」
「お。そうか? 名乗ってなかったか。俺はライゾ、あんた…女らしくないな」
「一言余計だぞ……」(怒)
悪びれず笑う青年・ライゾ。
「まあ、その後で言うのもなんだが…同じ戦友同士、よろしく?」
彼が、セツナの人生を変える者であることを、彼女自身、ライゾさえも知る由のないことだった。
「……ああ」
それから徐々に、二人は溝を埋めていくことになる。
互いに技を競い合ったり、思いやり合う姿は、良くも悪くも周囲の目を惹いた。
どうも、維月です。
新シリーズ『生きる』のお届けです。
セツナの性格……描いていて面白かったですね。
初登場のライゾ、まだ顔見せ程度ですが、よろしくです。