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生きる  作者: 維月十夜
1/7

追憶

これは元もと『生きる』というタイトルの詩でした。

ふと目に付いたので小説化してみることにしたんです。

短編のつもりでしたが、プロットが進む進む(笑)

どの作品とも違う物なので、楽しんで読んでいただければ、幸いです。

1章 追憶


嘗てあたしは、一兵卒として戦場を駈けていた。

『朱髪のセツナ』‐‐―‐それが、腕利きの女剣士としての、あたしの通り名だった。

「もう迷わないって、決めたんだよ」


なのに……。


なのに、あの夏の残像が離れないんだ。

‐‐―‐‐目を閉じれば、鮮やかに蘇る戦場の業火。

もう、一年ほどになるか。

隣国で戦があった、それは惨い‐‐―‐‐大がかりな殲滅戦だった。


セツナは元より、この国・七つ国がうちの一つである棠国・荊州けいしゅうの武家の出であった。

代々女系のセツナの家族は、男女関わらずに武芸を学び、鋭気を養っていた。

『父上、あの技見せてくれ!』

屋敷の裏庭にある稽古場に、元気な声が響く。

『いいぞ……見てろよ?』

ピコピコと飛び跳ねてまわる愛娘に、若い父親は笑みを深くする。

彼は、燃え盛る業火の如く…という形容が似合う、見事な朱髪の青年だった。

『跋鬼伏邪……破妖陣っ!!』

刀が、妖気を噴いた。

稽古場の藁人形が、微塵に粉砕されて木っ端が散る。

『凄い! あたしも、父上みたいに強くなるっ』

『よーし、それでこそ俺の娘だ』

幼いセツナは、大きく強い父が大好きだった。

セツナは知らなかったが、彼女の父親は七つ国は、棠国禁軍の将軍の席にいた。

『父上、もう出かけてしまうのか?』

『ごめんな、父さま急な仕事が入ったんだ』

項垂れた愛娘の頭を、彼はわしわしと撫で回す。

『父上……』

職務柄、元々長く家を空けることが多かった彼は……遂に、本当に帰ってこなくなった。

棠国と胡国、両者間に大戦が勃発したのである。

理由は知らねど、帰ってこなかった父の後を継いで、セツナは剣士として生きる道を選んだのだった。


そして……下積みの時期を経て、セツナは傭兵として戦場を駈けるようになった。


強くあろう。


強く在らねば。

(強くなろう……父上に恥じぬよう!)

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