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ぼくらの天使  作者: 半導体
三章
54/56

51話 暗転

 山岳地帯に造られたマルトーリの街において、充分な面積をもつ広場を設計することは難しい。十分なスペースがあれば避難場所として機能したのだろうが、逃げ込んだ人々を許容できるだけの広大さはなかったようだ。


「……はい、もう大丈夫ですよ」

 寝かされている男性の血濡れた腕に止血処理をし、リオナは精一杯の笑顔を浮かべて見せる。だが男性にそれを受ける余裕はなかったようで、呆然とした表情でうめくばかりで反応らしい反応はない。怪我の具合というよりも、爆発に巻き込まれたショックで気が動転してしまっているようだ。

 命に別状はないことが分かっているため、リオナもそれ以上は話しかけずに立ち上がる。

「こっち、終わったわ」

「ありがとう。こちらも一通り済んだ」

 リオナの声に応えたのは、この場でフリギスに代わり指示を出している男だ。自らも積極的に行動し、怪我人の手当てをこなして回っていたらしい。

「今いる人たちの応急手当は終わったようだ。これからまだ増えるだろうが……」

「私も捜索に回った方がいいかしら」

「いや、それでは急に誰かが運ばれてきた時に困るだろう。今は待機ということになる、少し休んでいてくれ。長丁場になるかもしれない」

「……分かったわ」

 彼の言い分に納得し、一瞬だけ迷ってから頷くリオナ。何もしないことにもどかしさを感じないわけではないが、彼に逆らって行動に移る理由もメリットもない。

 素直に従うことにしたリオナは、瓦礫の寄せ集めで作られた簡素な椅子に腰を下ろした。


「にしても……ひどい有様ね」

 一息つく暇を与えられたリオナは、改めて自分の立っている周辺の状況を見回す。

 広場を囲う建物の多くが爆破の直接の被害に見舞われており、避難場所と言うよりも被害現場と言うべき悲惨な有様となっている。それでも建物から離れた場所は比較的安全であるため、救助された人々がそこに集められて寝かされていた。

 驚くべきは、爆発の規模に対する被害の小ささだ。建築物こそ無数に破壊されているが、負傷した人々の怪我の度合いは極端に軽い。死者はおろか、即時の治療が必要な重傷者もほとんど出ていないのだ。

 それが単なる偶然なのか、犯人が意図的に人的被害を出さないようにしたのかは分からない。もし後者ならば、犯人は恐ろしく緻密な計画を立ててこの犯行に及んだことになる。

 だとすれば、犯人の目的は一体何なのだろうか。

 テロ集団の世界委員会に対する襲撃だとしても、爆発の規模や被害の状況が中途半端だ。一般人の被害を最小限に抑えるため、というだけでは説明しきれない犯人側の意図が見え隠れしている。街全体で同時発生させることでパニックを引き起こし、世界委員会自体の混乱を誘おうとした、というのが最も現実的な仮説だろう。

 ならば、混乱させた後にどうするつもりなのだろうか?

 このパニック状態が目的であるとは到底思えない。ならば、この混乱に乗じて『本当の目的』のために動き始めるのではないかと思えてくる。

 ――郊外に向かったっていう二人組がカギを握ってるかもしれないわね。

 自分と別れて犯人らしき二人組を追って行った仲間のことを思い出し、心中で彼らの無事を祈る。救護の方がひと段落つけばリオナも後を追う約束をしているが、この様子では当分助勢に向かえそうにない。

 ――仕方ないわね。二人組はあの二人に任せて、私はここでできることを……。

 そこまで考えたところで、リオナはふと冷静に自身の心中を顧みる。

 リダが「自分の手で犯人を捕まえたい」と言い出した時、呆れながらもリオナも彼と同じ気持ちを持っていた。こんな事態を引き起こした犯人のことを許せず、償わせたいと思っていたのは事実だ。

 だがその後にフリギスの話を聞き、リオナは自ら犯人を追う役から降りた。仲間二人にその役を任せ、自分はサポートの役割に回ることにしたのだ。

「私、は……」

 人手不足という状況を聞いて放っておけなくなった、というのは嘘ではない。

 自分が足手まといになるかもしれないと危惧するほどに、ガルドとリダの実力を信頼しているのも確かだ。

 だが、それらとは全く関係なく――彼らに追いつけそうにないと分かった時、リオナは自身が安心していることに気付いていた。

 迷いなくこちらの仕事に集中できると吹っ切れたわけではなく、犯人との接触をせずに済みそうだという期待から来た安堵だ。

 ――私は、逃げたの?

 ――自分で直接関わるのが怖くなって、あの二人に押し付けて逃げたの?

 恐る恐る、心の中で自身に問いかける。

 他でもない自分自身が理解しているその問いに、否定の返答はない。

 リオナは自覚していた。自分がこの街の騒動の核心から逃げ出そうとしていることに。

「でも……でも、私は」

 聞き手がいないことを理解したうえで、困惑が言葉となって表れる。

植物族(なかま)の気配に気付いて、そのことだって気になってて」

 ――違う。その気配に気づいたからこそ、私は逃げようとしてる。あの二人ならなんとかしてくれる、自分は彼らの帰りを待っていればいいと思ってる。

 口から出た言葉は全て偽りだと言うかのように、胸中の自分がそれを否定する。

 ――私は、甘えてるんだ。

「……」

 すぐさま言葉も出なくなり、リオナは歯がゆさと情けなさで視線を下に落とした。






 大通りから離れるにつれて、自ずと避難者の数もまばらになってくる。礼拝堂の周囲を塞ぐように爆発が起こっていたことも手伝い、礼拝堂へ続く道に一般人の姿はなかった。

「……じゃあやっぱり、この爆発騒動もテロ集団の仕業なんですね」

「絶対ではないが、な。この状況ならそうみなすほうが自然だろ」

 群衆がいなくなったことで走りやすくなった道を疾走しつつ、ガルドはフリギスから聞いていた『テロ集団が暗躍していること』をリダに伝えていた。

 内密にしてほしいという希望を尊重してリダやリオナにも伝えずにいたが、この状況では隠し続ける意味もないだろうと判断したのだ。だがリダもとっくに勘付いていたようで、それほど驚いている様子は見せなかったのだが。

「心配なのは、俺の見た二人組が無関係だったって場合だが」

 今さら迷っても仕方がないと分かりつつ、もしものことを考えてしまう。ガルドにとってもこれほど大規模な事件は初めてのことであり、どう行動するのがベストであるかいまだに計りかねていた。

 そんなガルドの迷いを一蹴するかのごとく、リダが冷静な声色のまま呟く。

「そっちも限りなくクロに近いと思いますけどね。他に手がかりもありませんし、僕たちに今できることをやりましょう」

「……そうだな。下らないことを言った、悪い。まさかリダに励まされるとは思わなかったが」

「ひどいですね」

 走りながら失笑するリダ。ガルドはそれなりの速度で走っているのだが、並んで走るリダに息を切らした様子はない。『力の民』としての高い身体体力が如何なく発揮されているようだ。

 彼ら一族の最大の特徴である、並はずれた身体能力。こうした場面でも有用となるその特色は、戦闘の場においては更なる活用法が連想される。

 今も彼の背に提げられている巨斧は、彼が最も得意とする武器だ。ギルドで荒事系の依頼を受けた際に何度か振るっているが、本格的な戦闘で使用されているところはガルドも見たことがない。

 もしテロ集団の人間と接触することになれば、彼も戦闘を避けられないだろう。相手が実力者であった場合、経験が圧倒的に不足している彼がどこまで渡り合えるかは不安が残る。極力危険な目に遭わせたくはないのだが、そんな甘いことを言っていられる状況でもないだろう。

 ――こいつが『キレた』状態で戦ってるのは見たことがないが……だから大丈夫だと決めるのは尚早か。

「……どうかしましたか? なんかガルド、さっきから難しそうな顔してますよ」

「いや、大したことじゃない。頭の中で色々とシミュレーションしてるだけさ」

 懸念は口に出さず、あえてリダにも不敵に笑って見せる。


 二人の眼前に古びた礼拝堂が現れたのは、その直後のことだった。




「……扉が開いてるな」

 遠目にも分かるのは、礼拝堂に誰かが入っていった形跡があるということだ。扉に限らず、建物自体にもいくつかの真新しい破損部位が見受けられる。押し入ったという様子ではないが、リダとリメール以外に何者かがやって来たのは間違いないだろう。

 この段階での懸念事項は二つ。ここに来たのが本当にテロ集団なのかという点と、ここに来た人物は現在も礼拝堂内にいるのかという点だ。

 ガルドが二人組を目撃してからかなりの時間が経過している。既に彼らの用件を済ませたのであれば、仮に礼拝堂を訪れていたとしても立ち去っている可能性が高い。そもそも、礼拝堂にやって来た人物が爆破騒動と無関係だった場合はすべて無駄足となってしまう。

 いずれにせよ、内部に潜入しなければ話は何も進まないのだが。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「なるようになりますよ」

 お互いに思い思いの言葉を口にし、姿を隠しながら扉へ近づいていく。周囲に残り続ける轟音と火薬の匂いのせいか、内部の人の気配を感知することができない。

 最悪、相手がこちらのことを待ち伏せていて突然襲ってくることも考えられる。いつでも戦闘態勢に移れるよう、リダは斧の柄にそっと手を添えた。

 警戒心を最大限持ったまま、ガルドが先頭に立って扉の内部を覗き込む。

「どうですか?」

「……見た感じ、誰かいる様子はないが」

「小部屋も多かったですし、そっちにいる可能性もありますよ」

 一度来たことのある知っているリダの意見も聞き、慎重に内部の様子を確認していく。

 半円状の広間の中央に天使をかたどった像が佇み、それを囲うように長椅子が並べられている。リダとリメールから聞いていた様子からそれほど違っているようには見えず、物陰まで注意して意識を巡らせてみるものの、人の姿は確認できない。

「さすがに違う部屋のことまでは分かんねえな」

「……入ります?」

 幾分か迷っている様子のリダ。慎重なのは問題ないのだが、いつまでも二の足を踏んでいては状況が進展しないのも事実だ。

「そうだな、そうするか」

 極力音をたてないように、扉の内側へ体を滑り込ませる。リダもそれに続いて入り込み、すぐさま扉を閉めた。扉の軋む音は最小に留められたが、それでも静寂の中の広間に耳に障る騒音として鈍く反響する。

 油断せず、即座に臨戦態勢を整える二人。いつどこから襲われても対処できるよう、意識は周辺一帯に傾けられている。

 そうしてしばらく様子を窺っていたが、何の変化も起こらないことを確認してガルドが静かに歩み出した。

「……とりあえず、他の部屋も見回ってみるべきか? リダ、なんか怪しい部屋とか思い当たるところはないか?」

「怪しい部屋、ですか? そんなこと言われても、僕も全部見て回ったわけじゃありませんからね……」

 広間に入って見回してみると、想像以上に扉の数が多いことに気づかされた。崩れて使えなくなっているものは選択肢から外すとしても、確認して回っている間に犯人に逃げられてしまっては元も子もない。

「僕が見たのはこっちのほうばかりで……反対側はリメールが見てましたから。ああ、でもあそこの部屋は保管庫だったんで僕も行きましたね」

「なるほど。犯人がそんなところにいるとは思えないが……」

 もし、を考えれば調べておくにこしたことはない。しかし、やはりしらみつぶしに探りまわる余裕はない。もっとも効率的なのは、ここで二人組の足跡を示す手掛かりを探すことだろう。

 とはいえ、もとよりボロボロになっている古い建物だ。外観の損壊のような分かりやすい異変は見当たらず、ガルド自身初めて訪れた場所ということも手伝い、違和感を察知することはできない。

「じゃあ、この広間で何か変わったところはないか? 以前来た時と比べて物が動いているとか、何かなくなっているとか」

「そんなこと言われても……あっ」

 困った表情をしていたリダだったが、不意に手を合わせて驚きの声をあげた。彼の視線はガルドの後方を向いて固定されており、そこで心当たりを発見したのだということが分かる。

「あの、あれ……」

 少なからず困惑を感じさせる表情のまま、リダがゆっくりとガルドの後ろを指さす。今の立ち位置からすると、ガルドの後ろは丁度広間の中央辺りだ。

 彼が何を指しているのかなんとなく予想できたガルドは、ゆっくりと振り返り――

「この像……少し場所が変わってるみたいです」

 実際そこには、ガルドの予想した通りの物――長椅子に囲まれる天使の像が佇んでいた。



「壁なんかと比べると床は綺麗だな。ま、こうなってくると不自然に思えてくるわけだが」

「誰かが掃除してるんだろうってくらいにしか思いませんでしたからね」

 愚痴を呟きつつ像の下まで近づき、屈みこんで周辺の様子を注意深く観察する。すると確かに、台座の部分に引きずったような小さな傷が存在していた。像を台座ごと引きずることでできるような、二本の平行な引っ掻き傷だ。

 さらに付け加えるならば、どうやら台座の下に風が入り込んでいるらしい。

「風はここに吹き込んでいたんですね」

「これはいよいよもってクロだな」

 台座の下に空間が存在していることは間違いなさそうだ。引っ掻き傷もごく新しいものであり、二人組の黒マントがここに侵入している可能性も高い。

 試しに台座を押してみると、像もろともわずかに動かせそうな感触があった。見た目は巨大な石の塊なのだが、外見ほど重量はないようだ。

 本格的に動かそうと手をかけたガルドは、そこでふと手を止め、後ろで見ているリダに視線を向ける。

「今さらだろうが……リダ、覚悟決めとけよ」

「……分かってます」

 ここから先が危険な場所であることは分かっているのだろう、リダが力強く頷く。だがその声はわずかに震えており、彼が緊張を覚えていることが分かった。

 無理もないだろう。高い戦闘力を秘める『力の民』とはいえ、リダはまだまともな実戦経験がないのだ。今回の件は、これまで依頼などで相手にした街の不良やゴロツキとは話が違う。下手をすれば、最悪――命を落とすこともあり得ない話ではない。

「……お前なら大丈夫だ。俺が保証するさ」

「っ……ありがとう、ございます」

 ガルドの励ましに何を感じたのだろうか。一瞬だけ言葉を詰まらせたリダは、すぐに嬉しそうにはにかんで見せる。

 それを確認したガルドは、今度こそ躊躇なく力を込めて台座を押した。






「ぅ……っ!」

 再三巻き起こった爆発に身を竦ませるリオナ。今回のものはかなり近く、衝撃がダイレクトに体に伝わってくる。共に治療活動を行っていた世界委員会の面々も、さすがに表情を強ばらせて周囲を警戒している。

 断続的に発生し続けている爆発。いつになれば収まるのかも分からない混乱の中、リオナの中には様々な感情が混濁して押し寄せてきている。冷静に状況を見極め怪我人の看護に努めようとする理性の一方、それとは全く別の衝動もまた同時に湧き上がってきて頭を侵食していく。

 すなわち、自らの手でこの事態を収束させたいという願望が。

 ――このまま待ってるくらいなら、私……。

 騒乱から逃げたという負い目がそう思い至らせたのか、それはリオナ自身にも分からない。確かなのは、すでに彼女の意志は『自分からも行動を起さなければ』という方向に向きつつあるということだった。


「うぐぁ……!」

「っ!」

 短い悲鳴が耳に届き、警戒心を最大にして振り向く。

 そこでリオナが目にしたのは、先刻まで一緒に看病を行っていた男が地面に倒れ伏す光景。鞘に納まっているナイフの柄を握っているのは、戦闘態勢に移ろうとしていたからだろうか。

 そして彼が倒れる横には、彼がナイフを向けようとしたのであろう相手――彼を昏倒させた敵が佇んでいた。

 その身に纏うのは、夜の闇よりも深い漆黒の色のマント。

「っ!」

 それを認めた瞬間、リオナは背中を寒いものが走っていくのを感じた。

 あからさまな異物の登場に他の面々も気づき始め、場の緊張が一気に高まる。黒マントはこの状況に何を考えているのか、その場に留まったまま微動だにしない。フードを目深にかぶっているため、どんな表情で何を見ているのかは判別がつかなかった。

「に、逃げ……」

 この場を離れて身の安全を図ろうとしたリオナだったが、飽和状態まで溜まった先刻の決心がすぐさまそれを打ち消す。

 ――ここで逃げたらダメ。目を背けちゃダメ。

 後ずさりかけていた足を止め、敵意を含めて黒マントを睨み付ける。

 この黒マントが爆破事件の犯人なのだろう。証拠こそないものの、リオナはそう確信していた。唐突にこの場に現れて世界委員会の人間を襲ったことを含め、放置していい相手でないことは確かだ。この場は退いてフリギスに事態を伝えに向かうという選択肢もあったが、この黒マントに追撃された場合振り切ることは難しいだろう。

 そして何より、何かをしなければならないという衝動がリオナに『逃げる』という選択肢を見えなくさせていた。

「……」

 リオナの戦意を感じ取ったのか、黒マントが踵を返して走り出す。

 救護をしていた広場の人間に戦闘可能な装備の者はおらず、黒マントを追うこともできずに狼狽えるばかりだ。装備が整っていないのはリオナも同じであり、もし武器を持っていればそれに対抗する術を持っていない。

 それでもリオナに黒マントを見逃すつもりはなかった。武術の心得がある彼女にとって、武器の有無は必ずしも優劣を決定づけるものではない。

「……っ、待ちなさい!」

 凍りついた空気を破って駆け出すリオナ。周囲からは制止の言葉も聞こえたが、足を止めることなく黒マントの背中を追って広場を飛び出す。



 眼前の影を見失わないよう注意しつつ、リオナはある事実に気づいて眉をしかめていた。それは彼女にとって、これまで思い至ることすらなかった一つの可能性だった。

 黒マントが姿を現した瞬間から鼻に届いている、嗅ぎ慣れてしまった同族の匂い。それの意味するところを理解しているリオナは混乱を隠せない。

 考えるまでもなく、それは黒マントがリオナの同族である何よりの証拠だろう。爆発が発生する前にも同族の匂いのする黒マントを見かけていたことを、リオナはようやく思い出していた。

 ――まさか……まさかこの街でずっと仲間の匂いがしていたのは……。

 街から漂う無数の植物族の匂い。そこからリオナやガルドが考えていたのは、数多くの同族が何かしらの事件に巻き込まれているという『被害者』としての可能性だった。

 しかし、もし襲撃事件や爆破事件が植物族の犯行であるとすると、構図は大きく変わってくる。

 植物族が『加害者』であると仮定すれば、街で全く姿が見られなかったことも辻褄が合う。見つからないよう姿を隠しつつ今回の事件の準備を進めていたと考えれば矛盾はない。

 仲間が破壊活動を行っている可能性に泣きそうになりつつも、リオナは目の前の黒マントを見失わないようそちらに集中していた。事実がどうあれ、目の前の不審人物を看過できる理由にはならないと理解しているからだ。


 あらゆる懸念を振り払い、リオナは一心不乱にひた走る。

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