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ぼくらの天使  作者: 半導体
三章
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47話 渦中の者たち

 南側との違いは、立ち入ってすぐに気付くようなものではなかった。通りを歩いていくうちに、少しずつその差異が意識に入ってきたのだ。

 南側と同じように、通りに住人の姿は全く見られない。『門』から続く大通りは相変わらず活気がなく、おぞましいまでの静寂に包まれている。口を噤んで歩くガルドとリオナの足音が、周囲の建物に反響して実際以上に大きく聞こえるほどだ。街並みだけを見れば家屋のひしめき合う都市といった風貌なので、なおさら人の姿が見えないことが異常事態のように思える。

 北側には世界委員会の関連施設はない。そのため、南側のように形式ばった堅苦しい雰囲気はない。しかし、それでもなお街中を漂う寂寥感は南側と似通っている。

 つまり、この状態がこちらがわの普段の姿なのだ。世界委員会の管理による結果ではなく、そもそも通りを出歩くような人間がいないということなのだろう。

「静かね……」

「ん」

 動揺と恐怖がないまぜになったようなリオナの言葉に、ガルドは小さな首肯をもって答えた。

「……これは、ギルド大丈夫か」

 ガルドが誰にも聞こえないほどの小声で呟く。

 このような余裕のない環境でギルドに依頼を出す人間がいるのだろうか。ガルドはその点が不安だったのだが、ギルドの依頼は普段ガルドが受けているような重労働ばかりではない。簡単な依頼でも住人との接触はできるのだから、選り好みをしなければ大丈夫だろうと考え直す。リオナを連れている以上あまり危険な依頼を受けるわけにもいかないので、むしろ条件と状況が合致したとも言えるだろう。

 リオナのような少女が一緒なら、話を聞き出しやすいのではないか。ガルドは一瞬そう考えたのだが――リオナの顔色が優れないことに気付いて思案を中断した。

「おまえもやっぱり不安になるか」

「ごめんなさい……この感じ、怖くて」

 植物族の気配以外にも得体の知れないものを感知しているのか、リオナにはほとんど余裕が無いように見受けられた。無理をさせるべきでないと判断し、今しがたの打算を全て振り払う。

「『匂い』が、ね。とても濃くて……でも」

「いや、もういい。それ以上は言うな」

 辛そうにしているリオナを見て、更に何か語ろうとするリオナを慌てて窘めた。


 リオナが感じる植物族の匂いは、北の街中に蔓延しているようだ。だが植物族はおろか、人間の姿もろくに見つけることができない。

 あからさまな異常事態を前に何もできないことを歯がゆく思いつつ――

 ガルドとリオナは、住人との接触を求めてギルドへ向かう。






 礼拝堂という呼び名に恥じず、その建物は荘厳な佇まいで鎮座していた。

 だが充分な改修がなされていないのか、外壁にはいくつもの損傷が見られた。ここに至る途中の家々も似たような状態だったため、補修するだけの余裕がないのだろう。

「ボロボロですねぇ……」

「有名な史跡ではありませんし、しかたないですよ」

 眉をひそめたリダに、リメールも苦笑いをもって返す。風貌についてはリメールも同意見であるようだ。

「こんなになるくらい長い歴史を歩んできたって考えたら、むしろすごいことじゃないですか」

「長いだけで空っぽの歴史じゃなければいいんですけど」

「ほら、まずは入ってみましょう。面白い資料が残ってるかもしれませんよ」

 どうやらリメールは知的好奇心が肥大化しているようで、古めかしい外観よりも早く中の調査を行いたがっているというのがありありと伝わってくる。礼拝堂の見栄えのしない姿にガッカリしたリダとは正反対の反応だ。

「リメール、なんか目が輝いてますね」

「今日は時間もありませんし、早く色々見てみたいだけですよ。ほら、行きましょう」

 リメールに背中を押され、リダは大人しく正面の扉の取っ手に手をかけた。


「お邪魔しまーす……」

 重々しい扉を軋ませながらゆっくりと開き、まずはリダが中を覗き込む。

 半円状の広間に長椅子が整然と並べられ、その中心に天使を象った巨大な彫像が佇んでいる。まるで少女のような顔立ちの天使は、背に生やした翼を大きく広げながらこちらを見おろしている。慈愛に満ちた表情が容易に想像できたが、風化のためか顔の部分はよく確認できなくなっていた。

「すごいですね……」

 リダが感嘆の息とともに簡潔な感想を漏らす。気持ちがこの空間へ完全に引き込まれてしまい、それ以外の言葉が思いつかなかったのだ。

 信者たちはこの長椅子に座り、像に向かって祈りを捧げていたのだろう。広間の規模を見る限り、かつてはここも溢れんばかりの人が集まっていたことが窺える。

 それだけに、人の気配がないこの広大な空間は不気味に感じられた。

「人が手入れをしてるって感じじゃありませんね」

「そうですね。誰か詳しい人がいたら話を聞いてみたいと思ったんですけど」

 外観と比較して、内装はさほど老朽化した様子は見られない。だがそれは誰かが手入れをしていたわけではなく、風雨に晒されていないために風化が遅れているだけのように見える。

「仕方がありませんね。勝手に探させてもらいましょうか」

「えっ、そんな大丈夫なんですか?」

「誰かが管理されているわけでもなさそうですし、問題はないと思いますよ。もし誰かがいらっしゃったら、その時は素直に謝りましょう」

「はぁ……まあ確かに、人がいるようには見えませんけど」

 リメールが満面の笑みで像へと近づいていき、リダも呆れつつ彼女に続く。彼女の瞳には好奇心の色がありありと光っており、制止の言葉など届かないであろうことは間違いないだろう。

 加えて、リダもまた天使に関する話には興味を抱いているのだ。この機会に色々と調べ物をしたいというのは、決してリメールだけの希望ではない。

「それで、どう調べるんですか?」

 楽しそうなリメールと並んで像を見上げながら、リダも少しずつ期待を膨らませていく。

「そうですね……こういう場所って、資料や神具の類をしまっておく部屋があったりするんですよね。まずはそこを探しましょうか」

 そう提案しながら、キョロキョロと近くの扉を物色し始めるリメール。気の向くまま動いているように見えていたが、実は色々と考えて行動しているようだ。

 だがふと我に返ったリダは、客観的に今の自分たちの姿を見つめ直し、率直な感想を口にした。

「なんか僕たち……ホントに泥棒みたいですよね」

「それは言っちゃダメですよ」


 広間には出入り口以外にもいくつかの扉が確認できる。かなり古くなっていて開きそうにないものもあるが、調べて回れば必要な資料はどこかにありそうな雰囲気だ。二人で調べるには時間が足りないと思えるほどの規模で、この礼拝堂がどれだけ巨大な施設なのかがよく分かる。

「ここは……開かないですねぇ」

 ノブを握って何度か押したり引いたりしてみて、まず開きそうにない感触にリダがため息をつく。扉自体が歪んでしまっているようで、正規の方法で部屋に入ることは難しそうだ。

 最終手段として力づくでこじ開けるという選択肢もあるが、誰の許可を得たわけでもないこの状況で更なるリスクを背負う必要はないだろう。

「……ん?」

 不意に風を感じ、リダは思わず振り返る。

 正面口から誰か入ってきたのかと思ったが、扉が開かれた形跡はない。そもそも入口の扉は開けると軋むほどに古いのだから、風より先に音で気づくはずだ。

 どこか壁が崩れて風が吹き込んでいるのだろう。古い建物ならそのくらいはあって当然かもしれない。そう結論付け、リダはそれ以上気にしないことにした。それよりも今は、天使にまつわる資料を探すことのほうが先決なのだ。

「あっ」

 他の扉を探そうと踵を返したところで、リメールの弾んだ声が耳に届いた。もしや、と思うと同時に、リメールが興奮を露わにして大声で叫ぶ。

「リダさーん、ありましたよー!」

 リダの調べていた場所とは、像を挟んで反対側に位置する扉のようだ。扉を半開きにしたまま、リメールがリダに向かって大きく手を振っているのが見える。

「分かりました、すぐ行きます!」

 期待に胸が弾んでいることを自覚しながら、リダは駆け足でリメールの元へと向かった。






 影の中で、『彼』は確かな違和感を感じ取っていた。

 一日前からこの街にやって来た、数人の『異変』。普段ならばさして気に留めるほどのことでもないはずのそれに、彼は少なからず動揺していた。

 このまま変わらず自身の仕事を続けて大丈夫なのか。何か取り返しのつかない失敗を犯してしまうのではないか。

 これまで揺らぐことのなかった彼の心は、初めて大きく揺さぶられていた。

 そんな不安を察したのか、すぐ隣で酒をあおっていた彼の『相棒』が小さく笑う。

「なに、心配すんな。そう気張らなくたって失敗するわけないだろ? 俺だって一緒にいるんだからよ」

「ああ……」

 相棒の激励にもうわの空で返事をし、彼は空になった自身のグラスを傾けてぼんやりと眺める。

「第一、お前の方はただの攪乱じゃねえか。そう危険とも思えねぇ仕事だってのに何を気にしてるんだかなぁ。おっと、俺が失敗するかもって心配なら無用だぜ。万一しくじったとしてもお前に責任は――」

「考えたい事があるんだ……少し静かにしててくれるか」

 饒舌な相棒の言葉をぴしゃりと遮る。軽口が過ぎたと自覚したのか、相棒もそれ以上口を開くことはしなかった。

 自分を励まそうとしているのが伝わっていただけに、それらの言葉が重みを増して彼の心にのしかかる。


(まさか彼らも、こちらの計画にわざわざ首を突っ込んできたりはしないだろう。そうだ、少し神経質になりすぎてるだけだ)

 心中で自身にそう言い聞かせ、取るに足らない小さな歪みだと納得させようとする。

 しかしそれでも、彼の心に憑りついた疑念の鬼が振り払われることはなかった。






 一歩入るなりリダの視界に入ってきたのは、保管庫と呼ぶにふさわしい圧倒的な迫力の棚の列だ。厚みのある書籍をしまった本棚だけでなく、燭台や銀の器といった神具の類が収められている場所も確認できる。

 埃をかぶっていたり崩れた棚の下敷きになっていたりするものもあるが、資料が見つからないという最悪のパターンはひとまず避けられたようだ。

「長いこと誰も使ってないみたいですね。それこそ何十年、もしかしたら数百年は誰も手を付けていないかも……」

「そんなに残していられるほどいい保存環境とも思えませんけど」

 夢を膨らませるリメールの妄想を一言で切り捨てるリダ。周囲の様子を見渡す限り、礼拝堂の建立から誰の手を入っていないということはなさそうだ。ただ同時に、崩れた棚などを補修する人間がいない程度は放置されていたということも確信できるのだが。

「とりあえず大切そうなものには触らないようにして、本の方を軽くなぞってみましょうか」

「そうですね。数が多いですから、とりあえず僕はあっちの方を」

「じゃあ私はこっちですね」

 本の収められている棚を大まかに二分し、手分けして探索にとりかかる。もとより今回は本腰を入れて探すつもりはないので、全体を流し見られれば充分だろうと二人は考えていた。

「でも……ざっとみるだけでも、結構な数ありますよね」

 棚の前に立ち、リダは腰に手を当ててわざとらしくため息をつく。

 それほど広くない保管庫に棚がひしめいているせいで、かなり分量が多いように感じられる。実際にどれほどの数があるかは別にして、精神的に大きな負担がかかるのは間違いないだろう。

「それじゃ、気合入れてやりますか!」

 それでもリダが積極的に取り組もうと思えたのは、やはりこの調査を楽しく感じていたからかもしれない。

 天使のことを調べるのは楽しい。天使のことをもっと知りたい。

 子供心を多大にくすぐる『天使』という存在は、リダにとってお気に入りの玩具のように魅力的なものとして脳内に刻み込まれていた。


「!」

 そのまましばらく順番に背表紙をなぞっていたリダは、不意に響いた何か軋むような音に全身を強張らせた。首を向けると、遠くの棚を調べていたリメールも同様に固まっている。

 まさか、というジェスチャーをしたところ、リメールも同意したようにうなずいた。

 今の音は、リダたちがこの礼拝堂に足を踏み入れた際に聞いている。すなわち、入口の扉がこの音を発していた。

 その音が聞こえたということはつまり、何者かがこの礼拝堂に入って来たことを意味する。

「ど、どうしましょう」

「……今の音だけではなんとも、ですね。管理人の方がやって来られたのかも知れません」

 立ち入りが禁止されているわけでもないので、街の住人がやって来たとしても不思議なことではない。それは分かっていても、勝手に上り込んで家探ししている二人にとっては緊張せざるを得ない状況だ。

「お、怒られますかね」

「管理してる方だとしたらそうなりますね。でも、気まぐれな方がちょっと探険に来ただけかもしれませんよ?」

 それが希望的観測であることはリダにも理解できたが、わざわざ口に出して指摘するようなことはしなかった。指摘したところで事態は好転しないし、そもそもそんなことを言っている場合ではない。

 軋む音の後に大きな音は聞こえてこないが、それが逆にリダの不安を誘う。闖入者がどのあたりにいるのか見当もつかず、いつ保管庫を覗かれるのか気が気でならない。

「と、とりあえず様子を見てみましょうよ」

 どちらともなく保管庫の扉に近づき、わずかに開いて外の様子を窺う。

 入ってきたのは男性が一人。距離があるために顔などは判別できないが、周囲を気にしながら天使の像へとゆっくり近づいている様子が確認できた。

 周囲の装飾や扉などはまるで気にしていないようで、まっすぐ像だけに集中しているのが分かる。ただし、その挙動は像を『物』として見ている人間のそれであり、像に対して畏敬の念を抱いているわけではなさそうだ。

 その姿は天使を崇める信仰者にも、この礼拝堂の管理を行っている人間にも見えない。

「何やってるんでしょう」

「さぁ……」

 自分たちと同じ目的の人間である可能性が二人の胸中で大きくなる。その場合、保管庫にいる二人が見つかってしまうのは時間の問題だろう。もっとも、目的が同じなら無理にこうして隠れている必要もないのだが。

 しばらくすると、男は何かを探るように足元へ視線を落とした。像の下に何か落としたのだろうか、その場で屈みこんで姿がよく見えなくなる。

 それとほぼ同時に、ガチリという金属の擦れ合うような音が広間に響いた。

 

 その直後、二人は揃って自身の目を疑うこととなる。

「えっ――」

「えっ!?」

 男の姿が半分ほど像の裏に隠れたかとおもうと――

 何の前触れもなく、その姿が忽然と消えてしまったのだ。


「えっ……ええぇ!?」

 驚いたリメールが大きな声を出すが、それに男が反応して姿を現す気配はない。単純に像の裏に隠れて見えないというわけではなさそうだ。

「な、なんですか今の?」

「わ、わかりません」

 後ろめたさなど忘れた二人は慌てて扉から飛び出し男の姿を探すが、やはりどこにもその姿を見つけることはできなかった。

「……はぁ」

 男が完全に姿を消したのだと頭で理解した二人は、どちらともなく大きく息を吐く。

「……まさか、オバケ?」

「さ、さあ……」

 顔を真っ青にしたリダに、リメールは首を傾げて返答を濁す。普段ならば真に受けないような子供の発想であるはずのそれも、この状況では気味の悪いリアリティを帯びて耳に響いてくる。リメールも何が起こったのか把握できていないらしく、困惑に言葉を失うばかりだ。


 呆然と立ち尽くす二人の背筋を、冷たい汗が滑り落ちていった。






「脈あり、だな」

 ギルドで受けた依頼を済ませ、帰路についたガルドの第一声がそれだった。

「具体的な手がかりこそなかったが、それらしい話が聞けたな。何日か粘れば、もっと有力な情報が手に入るかもしれない」

「そう、だといいんだけど」

 前向きに歩みを進めるガルドに対し、リオナは納得しがたいといった表情で俯く。しかし、それはガルドの言葉に疑問を抱いているというわけではない。

 ガルドの言う『情報』とは、リダの姉であるエディカの消息に関するものだ。

 確かに彼女は少し前までこの街にいたようで、「最近までこの街にいた」という話を聞くことができたのだ。具体的な行き先などを知っている人間はさすがにいなかったが、これまで手探りで追いかけていたという現実を顧みれば飛躍的な進歩と言える。

 それに対し、リオナの兄であるニールの行方は依然として何の手がかりもない。植物族であるために姿を隠して移動しているのか、「姿を見かけた」という情報すらまるで得られなかったのだ。

「いなくなってまで手間かけさせるんだから……兄さんは本当に……」

 もどかしさは感じているのだろうが、自身と対照的に情報を得られたリダをひがんでいる様子はない。エディカよりも探しづらいことは理解しているようで、「なんで」や「どうして」といった不満を漏らすことはしない。

 それでも感情的に割り切れないところはあるのだろう、リオナは機嫌が悪いことを隠そうともせず兄への苦言を繰り返し呟いている。

「そう言ってやるなって。兄貴の事情も考えずに批難だけするのは一方的すぎるだろ」

「そんなこと言ったって……あ……ううん、確かにそうね」

 なおも眉をひそめていたリオナは、ふと何かを思い出したように表情を緩めた。

「どうした?」

「あ、大したことじゃないのよ。ただ……」

「ただ?」

「前の私は、兄さんのことをちゃんと考えたことなかったなって」

 いつのまにかリオナは、寂しそうな笑みを顔に貼りつけていた。どこか自虐的にも見えるその笑顔は、何か後悔しているかのような感情を漂わせている。

「私はずっと、自分の勝手な理想像を兄さんに押し付けてた。兄さんがどうしたいかなんて、全然考えたこともなかった」

 静かな独白を、ガルドは黙って聞き続ける。

 彼女は後悔しているのだ。兄が家を飛び出す原因を作ったのは、他ならぬ自分なのだと確信して。

「また会えた時は……私、兄さんに謝りたい。そりゃあ勝手に出て行ったことは怒りたいけど、それでも……兄さんを追い詰めたのは、私だから」

「……お前の兄貴もその気持ちは分かってたろうさ。そう自分を追い詰めるなよ」

 次第に自身を責め始めたリオナを早い段階で諌める。

 短い言葉でリオナの発言を止めると、ガルドは何も聞かなかったかのように再び歩き出す。ただし歩調を速め、リオナに自責の隙を与えない。

「今日は戻るぞ。探し人の話なんて慌てて集めるようなもんじゃないさ」

「っ……ええ」

「さーて、リダはちゃんと仕事してるといいんだが。あいつのことだから途中で居眠りとかしそうだよな」

「ちょっと、それは可哀想じゃない? ああ見えてあの子、けっこうしっかりしてるわよ」

 リオナも長々とネガティブでい続けるつもりはないようだ。ガルドの話題に積極的に乗り、今しがたの後悔と苦悩は早々に話題から外される。


 多くの煩い事が山積していたことも手伝っているのだろう。

 この時点で既に事件の大渦へ取り込まれていることに――彼らはまだ、気づいていない。

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