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コンスタンティノーポリの陥落  作者:


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3/7

シッタ・デ・マーリ

休憩の時間を使い、クリスティーナはヨハンネ、癖っ毛の金髪の少年と共に街の様子を見に行くことにした。


平服に着替えてから議場がある宮殿から坂を下り、街を練り歩いていく。


首都シッタ・デ・マーリは大陸本土から少し離れた干潟に建設された都市である。そのため街中には大運河カナル・グランデをはじめ無数の運河が網目のように走っている。


いつもはせわしなく人々が行き交うシッタ・デ・マーリの狭い道でも、運河をゆくゴンドラの上でも、教会前の広場でも。人々の話し声が絶えることはなかった。


「コンスタンティノーポリが落とされたって、聞いたか」

「マジかよ……」

「ディオス様は我々を見放したもうたのか」


 交易国家であるイタリアーナでは情報が命だ。


 それもコンスタンティノーポリが落とされたとあれば、噂が広まるのも早い。


 情報統制を敷いたのにもかかわらず、末端の人々の口の端にまで一大事が伝わっていた。


 特に教会前の広場での騒ぎが大きい。東の聖地コンスタンティノーポリと同じディオス教信者であることが、ショックをいっそう大きくしていた。


シッタ・デ・マーリの街を蛇行する大運河沿いに建てられたシッタ・デ・マーリ一の大聖堂、聖マルコ教会の前の広場では。


 この世の終わりのような顔をして泣き叫ぶ者、ぶつぶつと呟きながら気がふれたようにさまよう者、教会の外だというにもかかわらず天を仰いで慟哭する者などがいて大混乱だった。


「パウロ兄さま。この国は、イタリアーナはどうなるのでしょうか」


 癖のある金髪の少年は、女王クリスティーナの従兄弟だった。


 兄にすがるようにその裾をつかむ少女の姿からは、国を治める女王の威厳などひとかけらもない。


「大丈夫だよ。どんな苦難の中でも、イタリアーナは生き残ってきたんだから」


まだイタリアーナの国土がシッタ・デ・マーリ一帯の湿地しかなかった時も。


北方から幾度となく攻められても、海の満ち引きを利用して敵船を座礁させることで破った。


塩と魚しか交易品がない貧しい時代でも。土地の豊かな地方から生活に必要な様々な品を交換し、発展させてきた。


だが国土は決して広いとは言えず、


現在、トルティーアの人口三千万にくらべイタリアーナはわずか四百万しかいない。同じ半島国家であるシュパーニエンでも一千万人だ。


広い国土も多い国民も圧倒的な軍事力もない。だが知恵を振り絞って、先祖代々このイタリアーナは守られてきた。


だからきっと、大丈夫。


パウロはクリスティーナに言い聞かせるように言ったが、そうしなければ自分の方がつぶれてしまいそうだった。


パウロはクリスティーナを支え、クリスティーナもまたパウロを支える。幼い頃からずっとそうしてきた。


その仲を裂けるものなど、どこにもないはずだった。


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