表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/48

代理戦争と幕末崩壊の序曲:英仏が引き裂いた日本

序章|「租借の衝撃」から始まる国家的憤怒

1860年代後半、江戸幕府は命脈を保つためにフランスと手を結び、横浜・神戸の永久租

借を容認するという致命的な外交を行った。この選択は、「幕府=売国政権」という認識

を広く国内に浸透させ、尊王攘夷から倒幕へと世論を劇的に転換させる。

幕府に従っていた多くの武士たちはこの屈辱に耐えきれず、「主君の恥に殉じる」ことよ

りも、「国家の尊厳」を掲げて倒幕側に転向していった。

第一章|フランスと幕府:軍事化される「保守体制」

フランスは、幕府を極東における政治・軍事的拠点として維持するため、支援を一層強化

した。

軍事・技術支援の深化

フランス陸軍士官学校出身の顧問団(レオンス・ヴェルニー、ジュール・ブリュネなど)

が続々と来日し、幕府陸軍をナポレオン三世風の編制に近代化。

横須賀造船所の建設とともに、フランス式の鉄甲艦の導入も検討された。

薩摩や長州が英国式火器を導入する一方、幕府軍は**シャスポー銃、ロイヤル大砲、装甲

艦「開陽丸」**などで対抗。

租借地の軍事要塞化

フランスは横浜・神戸に小規模な砦と兵営を築き、事実上の「要塞租借地」として機能さ

せ始めた。駐留部隊は増強され、フランス海軍東洋艦隊の拠点としての役割を担うように

なる。

第二章|イギリスと薩長:近代革命の「支援者」

フランスの急速な勢力拡大に対抗するため、イギリスはかねてから接触していた薩摩・長

州に対し、より積極的な介入を開始する。

軍事物資の供給

長崎のグラバー商会を通じて、エンフィールド銃、スナイドル銃、アームストロング砲、

蒸気船「ユニオン号」などが大量供与される。

密貿易の形を取りつつも、事実上は英政府の黙認下であり、実質的な公認支援であった。

人的支援と教育

薩摩藩・長州藩からの若者が、イギリスへ留学。1865年には「長州ファイブ」や「薩摩

留学生」が実在以上に強力な支援を受け、軍事工学、造船、法学を習得。

英国軍将校が秘密裏に薩摩や長州で軍事教練を行い、スコット式戦術、ライフル中隊運

用、野戦砲の砲兵戦術が導入される。

外交と情報工作

英国公使館ハリー・パークスらは幕府の租借条約文書の写しを入手し、**「幕府は日

本の主権を欧州に売った」**という内容で世論工作を展開。

英国商社を通じて資金援助が行われ、薩長の軍拡を下支えする。

第三章|討幕運動の激化と「日英仏代理戦争」化

社会情勢の急変

各地で「租借反対」「フランス排撃」を叫ぶ民衆蜂起が頻発。江戸・大坂では打ちこわし

や放火も相次ぎ、幕府は鎮圧に追われる。

尊皇派志士たちは、「討幕」の大義名分として「国土回復」「租借地奪還」を掲げ、倒幕

運動は反仏ナショナリズム運動として再定義される。

武力衝突と本格内戦へ

1866年「第二次長州征伐」では、英製火器を装備した長州軍が幕府軍を撃破。フランス

顧問団指導の幕府軍も苦戦。

1867年、ついに大政奉還・王政復古の大号令へと至り、1868年の戊辰戦争勃発。

この内戦は、単なる政権交代ではなく、英仏代理戦争の性格を強く帯びる。

第四章|戊辰戦争の国際化と激戦の構図

国際的戦略拠点としての横浜・神戸

幕府軍は横浜租借地に拠点を移し、**「租借地防衛戦」**を展開。フランス顧問団と現地

駐留兵が防衛指揮を執る。

一方、東海道進軍を開始した新政府軍(薩長土連合)は、イギリスの諜報・補給支援のも

と、租借地攻略を視野に入れる。

英仏両国艦隊が横浜沖に睨みをきかせるなか、**「第三次下関戦争」**に似た都市攻防戦

が展開される可能性も。

海外への波及

清朝・朝鮮・ロシアは、極東日本での英仏対立に神経を尖らせ、特に朝鮮通信使の派遣中

止や対馬への干渉が起こる。

フランスは中国南部に艦隊を展開し、日本戦線と連動。イギリスもまたインド艦隊を極東

に転用し、**「日中分断線」**が形成される。

終章|維新後の「属国化」する国家建設

仮に新政府が勝利して明治維新が成立しても、彼らは明確にイギリスの「支援者」として

の出自を持つ政権である。

英国からの借款と貿易依存は継続され、経済的属国化が進行。

フランスとの外交関係は最悪の状態に陥り、租借地の返還交渉は頓挫。

一方、イギリスは明治政府に対して、「インド・アジアの協調国」としての機能を期待

し、日清戦争や対露政策に強く影響を及ぼす。

総括|英仏によって裁かれた近代国家:「外因主導の維新」

本来、日本の近代化は内発的エネルギーに基づくべきものであった。だがこの歴史改変世

界では、南北戦争の余波によるアメリカの不在が、日本を英仏の代理戦争の舞台と化し、

明治維新の姿そのものを大きく歪める結果となった。

明治政府は、王政復古と引き換えに、国家主権の一部と外交の独立性を、列強の軍事援

助と資金支援に売り渡したのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ