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マスドライバー建設計画〈出雲計画〉 ―2030年代、日本連邦が重力圏を突破する“ 文明の滑走路” ―

背景と戦略的目的

■ 文明状況(2030年代時点)

• 地球は依然として大半が荒廃・無政府状態、文明圏は日本連邦・英連邦・蝦夷共和国な

どに限られる。

• 宇宙ステーション〈すばる〉や宇宙往還機〈かがち〉の実用化により、軌道活動は日常

的となった。

• しかし、軌道への物資・人員の輸送コストは依然として高く、スケール拡張が難しい。

■ 技術的要求

• 軌道上に大型構造物(スペースコロニー、軌道工場、恒常的居住区)を建設するには、

→ 莫大な質量を定期的に軌道に打ち上げる能力が不可欠。

• 〈かがち〉型の再使用機では頻度と量に限界がある。

---

計画概要:マスドライバー〈出雲〉

項目 内容

名称 トラック宇宙基地 電磁加速射出装置〈出雲〉

開始時期 建設開始:2031年/初期稼働:2036年

設置場所 トラック環礁南西部・特殊斜路台地(既存宇宙港近接)

全長 約5〜7km(初期型)※段階的拡張想定

射出速度 最大7.5km/s(物資モード)※補助ロケットで軌道投入

射出頻度 最大:週10便程度(2030年代時点)

推進原理 電磁誘導加速(コイルガン方式)+冷却磁場整流装置

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射出対象と用途

射出物 用途 特記事項

建設資材 スペースコロニー、宇宙発電所などの大型構造体 発泡合金・モジュール骨材な

食糧・水 宇宙生活支援 通常往還機より低コストで配送可能

小型探査機 小惑星帯/月周回への探査投入 射出後軌道遷移用エンジン起動

軍用ドローン 軌道監視・電子戦用機材 発射中に識別コードを付与

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技術的課題と克服

課題 対応策

大気摩擦・機体過熱 特殊シェル構造+再突入用耐熱外皮

射出後の微調整 射出体に姿勢制御用スラスタを装備

精密な射出タイミング 地上・軌道の複合計算システム「天探II」で自動制御

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軍事・政治的意義

• 敵対勢力がもはや存在しない軌道空間に大量の物資を送り込める=制宙権の絶対的確

保。

• 不安定地域からの距離があり、外交的な“示威”にもなる(射出実験は世界に可視的)。

• 有事には、衛星再配置やセンサーネット展開の手段にも転用可能。

---

描写イメージ

真珠色の朝の海に、斜面の巨大レールが目を向けていた。

そして、轟音ではなく振動が、地を這うように広がる。

銀白のシリンダーが浮き上がり、空を裂いて宇宙へ昇った。

それは武器でも爆弾でもない。

ただ、人類が空に柱を立てた音だった。

---

結論:〈出雲〉計画は宇宙定住への跳躍台

• 〈かがち〉型が「宇宙に行く」手段だとすれば、〈出雲〉は「宇宙に暮らすための物流

回廊」である。

• 2030年代のこのマスドライバー建設は、日本連邦が文明圏を宇宙へ持ち出す転換点とな

り、

→ 2040~50年代の宇宙定住社会(スペースコロニー初期定員化)へ直結する。

---

〈あまてらす壱号〉

— 2040年代、日本連邦主導による初期実験型スペースコロニー計画 —

---

【Ⅰ. 背景:なぜこの時代に建設されたのか】

技術的成熟

• 〈かがち〉型宇宙往還機の運用が安定し、軌道上への人員輸送・軽資材搬送が日常化。

• マスドライバー〈出雲〉の稼働により、大量資材を軌道へ低コストで投入可能に。

• 小惑星帯からの資源採掘および軌道上での粗製造・精製技術が確立(2038〜40年)。

地球環境と文明圏の危機

• 地球地表は核・化学・生物兵器により多くの地域で壊滅。再定住は不可能。

• 各国(特に日・蝦・英連邦)は宇宙への恒久的脱出・定住に向けた段階的移行を模索。

• 宇宙ステーション〈すばる〉は限界に近づいており、本格的居住空間の拡張が必要。

---

【Ⅱ. 計画名と目的】

名称:〈あまてらす壱号〉計画

• 「天を照らす者」の意を持つ日本神話由来の名を冠し、文明の灯を宇宙に絶やさず持ち

込む象徴とされた。

• 英語表記:Amaterasu I Experimental Habitat

目的:

1. 軌道上での長期居住・閉鎖環境生存技術の実証

2. 次世代宇宙居住区画(トーラス型・回転重力型)の構造検証

3. 人的・社会的適応に関する観察・教育・文化維持のモデル構築

---

【Ⅲ. 建設と構造】

建設時期・場所

• 建設開始:2043年(トラック基地マスドライバーによる射出開始)

• 建設完了:2046年末(最初の定住者受け入れ)

• 軌道高度:約600km(中軌道、月・小惑星との接続を意識)

構造形式:小型トーラス(回転型人工重力コロニー)

項目 内容

半径 約120m(居住環)

重力 回転による0.7G相当

居住定員 初期300名、最終的に最大1,200名まで拡張可能

主素材 蝦夷共和国製炭素複合材+小惑星由来ニッケル合金フレーム

遮蔽 水層+遮蔽ゲル+複合ラジエータプレート(放射線対策)

主区画 居住・農業・医療・制御・教育・観測・文化ホール

---

【Ⅳ. 居住機能と社会運用】

環境制御システム(CLS)

• 空気・水・廃棄物の完全再生循環システム

• 温湿度・圧力は地上に準拠(0.97気圧、平均温度23℃)

• 光源は高演色LED+人工太陽リズム照明

食料供給と農業区画

• 水耕+栄養循環型密閉農園(野菜・海藻類中心)

• 昆虫・微生物蛋白培養区も併設

• 民間主導の「コロニー初の和食レストラン」も開業予定(2047年)

医療・心理

• 精神衛生チームによる「閉鎖適応プログラム」

• 診療所と遺伝管理センターを統合した医療システムを常設

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【Ⅴ. 政治的・戦略的意義】

• 日本連邦が主導、英連邦と蝦夷共和国が資材・技術面で支援

• 英語・日本語・蝦夷語の3言語共通教育プログラムを導入し、連邦文化の核を形成

• 宇宙文明圏の試金石として、後の大型コロニー〈いざなみ〉や〈やまと〉の設計基盤に

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【Ⅵ. 外観・文化描写】

• 外周居住部には「桜並木を模した人工光景」「水流のある庭園」など、地球文化の再現

空間が配置されている。

• 中央中枢部には〈すばる〉ステーションとのドッキングポートがあり、かがち型往還機

による定期連絡便が運用されている。

• 居住者たちは重力回転に合わせて「ゆっくり歩く」「物を置くと滑る」などの空間感覚

の訓練を受け、コロニー生活に順応している。

---

結語

〈あまてらす壱号〉は、

“人類が宇宙で生きられるか”という問いに対して、

日本連邦が最初に出した現実的な解答であった。

それは仮住まいではない。

地球を離れた文明の、**最初の「ふるさと」**だった。

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