1990年代の中央〜東シベリア ― 「ロシア」の名を失った大地、暴力と放射線の凍原 ―
歴史的背景
■ ナチスのバルバロッサ成功とその余波
バルバロッサ作戦成功により、ヨーロッパロシア(モスクワ以西)は完全にナチス東方生
存圏に組み込まれる。
生存圏政策の一環として、ナチスはロシア人に対して大規模な民族浄化と強制移住政策を
実施。
その結果、ウラル山脈以東には、難民・残党・脱走兵・赤軍再興派・民間人が流入し、秩
序なき「亡命ロシア」が出現。
■ 赤軍残党と軍閥の割拠
ソ連崩壊後、軍・KGB・共産党・農業組合など各派閥が**「我こそが真のロシア継承者」
として武装蜂起**
。
ウラル山脈〜オビ川流域には大小合わせて数十の“ロシア系戦国政権”が並存。
各勢力は互いに交戦しつつ、ナチス軍や東方からの日本・蝦夷系勢力とも局地的対峙状態
に。
---
地域別情勢(1990年代)
地域|状況
ウラル山脈~チュメニ|工業地帯と軍需工場跡をめぐり、赤軍残党国家・鉱山企業軍
閥・旧KGB傭兵隊が割拠。VXガス使用の報告あり。
オビ川~ノヴォシビルスク周辺|避難民と脱走兵が作った自治都市が点在。だが疫病・
核汚染・略奪で**「生き延びることが罪」な土地**と化す。
ヤクート~東シベリア中部|永久凍土に覆われた中で、宗教化した部族共同体が生存。
「氷の教団」や「極北オルソドクス」を自称。
バイカル湖南岸|比較的温暖で戦略的価値が高いため、ナチス残党軍団と赤軍復興派が
争奪。一時、放射線での“民族浄化”が行われたとされる。
シベリア鉄道(中部区間)|断絶状態。部分的に「列車共和国」なる武装列車部隊が運
行支配。物流・医薬品・情報のすべてを“軌道上で”管理。
支配勢力の構造
■ 軍閥型継承政権
旧ソ連陸軍・機甲部隊・核施設守備隊などが、自給自足と核抑止力で独立支配。
一部は日本・蝦夷からの支援を要請しているが、信頼性がなく支援は限定的。
■ 宗教化民兵国家
苦境の中から、正教・土着信仰・反ナチ終末思想が融合した**“地下の聖ロシア”**運動が
発生。
動。
中心都市なき信仰共同体が、教会、古戦場、核シェルターを“聖地”として巡礼しながら移
■ 秩序なき互換経済圏
燃料・弾薬・薬品・食料は各都市ごとに異なる基準で交換。
“放射線適応者”と呼ばれる変異的身体を持つ人間が貴重な労働力・実験素材・神の器とさ
れる例も。
---
文明圏の対応:観察・支援・限定介入
■ 日本連邦・蝦夷共和国
極東ロシア王国を支援しつつ、シベリア中部には基本的に介入せず。
ただし、バイカル湖南方やイルクーツク周辺には軌道監視網・ドローン偵察網を常時展
開。
氷」作戦)。
紙挟み作戦の対象にはならないが、一部で技術者の亡命援助が行われている(暗号名「白
■ 軌道衛星監視と封鎖区域指定
ウラル地帯には、高濃度放射線、移動型VXガス濃霧帯、野戦ウイルス汚染地域が混在。
極端な状況では、「観測中だが人道的対象ではない」との評価すらされる。
---
総括
中央~東シベリアは、ロシアという概念が千切れた「名前を持たない空白地帯」であ
る。
国家の記憶、民族の誇り、信仰の拠り所――すべてを奪われた人々は、ただ生き、凍
え、祈る。
それを見つめるのは、南の日本連邦、北東の極東ロシア王国、そして軌道からの無言の
観測者だけである。