1990年代の北米 ― 滅びの大地と、最後の文明防波堤 ―
歴史的背景:米国の分裂と内戦
■ 南北分裂の始まり(1950年代)
• 第二次大戦後、米合衆国はナチス・ドイツとの距離を縮め、親ファシズム的な政策へ傾
倒。
• 自由主義・州権主義を掲げた南部諸州(南部連合)が日英に接近。
• 南北間の緊張は1950年代に本格的な内戦=第二次アメリカ内戦へ発展。
• この戦争はNBC兵器(核・生物・化学)を投入する全面的な消耗戦となり、米本土を壊
滅的な状態に追い込む。
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地域別情勢(1990年代中盤)
地域 状況
アメリカ合衆国(旧北部〜中西部) 親ナチス政権の残党が形式的に国家体制を維持。だ
が内部崩壊が進み、都市は廃墟化・放射能汚染地域が広がる。政治警察と企業軍閥が各地
を実効支配。
南部連合(旧南部諸州) 親日英的な自由連合政権が各州ごとに存続するも、戦争と疲弊
で統一性を喪失。テキサス・フロリダなどは一種の“武装中立国家”に近い状態。
西海岸 合衆国と南部連合の“緩衝地帯”化。農業破綻、水資源の
枯渇、核爆撃による汚染で**「死の灰の谷」**と化す。
中西部・五大湖地域 生物兵器・化学兵器の汚染が深刻。土壌は不毛化し、疫病が蔓延。
人が住める状態ではなくなる。
ニューヨーク・ワシントンD.C. 1950年代の核投下で壊滅。現在も高放射線量地帯。かつ
ての「文明の中心」は「黒き墓標」と化した。
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社会構造と勢力
■ アメリカ合衆国(親ナチス)
• 政治形態は実質的に軍産官僚独裁。
• 国家統一は名ばかりで、地域ごとにナチス残党・企業武装団・治安部隊が分割支配。
• 旧政府の遺産をもとに遺伝子研究・薬品兵器・強化人間の試作などが続けられたが、大
半は失敗。
• 住民の多くは都市から脱出、または無人地帯化した郊外で略奪生活を送る難民に。
■ 南部連合(親日英)
• 連邦政府ではなく、自治州の連合体制。共同防衛と一部外交権限を共有。
• 日本・英連邦と非公式な外交・技術連携があり、再建可能性はわずかに残る。
• しかし内戦と難民問題、資源枯渇により、次第に合衆国と同じく弱体化。
• 一部州は独自の民兵国家化しつつある。
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カナダ(英連邦拠点)
■ 状況と役割
• 1990年代時点で北米唯一の文明保持圏。
• 英連邦本部機能の一部がオタワ・バンクーバーに移転。
• 宇宙開発(極地観測衛星、ロケット打上基地)の拠点化も進む。
■ 難民圧力と社会疲弊
• 北・南からの難民流入が加速度的に拡大。
• 難民の多くは核・細菌・化学兵器の後遺症を抱えており、感染・暴動・略奪が多発。
• 一部州(オンタリオ、ブリティッシュコロンビア)は軍政状態。
• カナダ社会では**「自由と開放」か「防衛と閉鎖」かを巡る深刻な政治的分断**が進
行。
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日英連邦の対応と紙挟み作戦
■ 北米での紙挟み作戦
• かつての米国研究所・軍基地・大学などを目標に小規模特殊部隊による技術回収が継続
中。
• 成果は限定的。合衆国残党が文化資産を破壊・焼却・毒ガス処理している例も確認。
• 戦後に崩壊したNASA、MIT、ロスアラモス、ハーバード医学部などが探索対象。
■ 軌道監視と封鎖
• 北米大陸全体は、日本連邦と英連邦の軌道衛星監視対象区域に指定。
• 米西部の水源地帯と南部連合の都市再建地帯には、静かに援助が行われている。
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総括
かつて世界を牽引したアメリカは、19世紀後半に自壊し、21世紀初頭には“文明の墓標”
と化した。
自由と繁栄を掲げた大国は、分裂と汚染と暴力の中で姿を消し、今やその大地に立つのは
廃墟と難民だけである。
その隣で、カナダは傷つきながらも最後の北米文明防波堤として、静かに命脈を保って
いた。