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#00 魔剣神話


この世界には、千本の【魔剣】が存在する。

魔剣とは、すなわち世界に唯一つの【聖剣】を模して造られた贋作。

一人の悪の大魔術師が発明し、世界中にばら撒き、魔剣はありとあらゆる不幸な惨事の元凶となった。が、それにも関わらず、人々は多大な犠牲を払ってでも、重い代償を背負ってでも、その魔剣を欲した。

聖剣は選ばれし者のみが扱えるのに対して、魔剣は修行さえ積めば誰でも扱うことができ、さらにその威力は聖剣に勝らずとも劣らなかったからだ。

魔剣の美しさと強さに魅せられ、魔剣を巡って、歴史上幾多の争いが起こった。魔剣は持ち主の願いを叶えては、持ち主を破滅へと導き、また新たな持ち主の手に渡っては、それを繰り返した。

ーー魔剣を中心とした栄枯盛衰が、幾度続いただろうか。

何を思ったのか、魔剣を造った張本人である大魔術師は、自分の死の間際に、残った魔力全てを使って、世界中に散らばった全ての魔剣を破壊した。

こうして、魔剣は世界から抹消され、魔剣による支配の時代は幕を閉じたのだった。


さて、大魔術師が造った無数の魔剣の中でも、当時世間を騒がせた、特に悪名高い魔剣が一本あった。

災厄の剣、魔剣レィヴィング。

かの大魔術師の最高傑作とも言える剣で、造り手の大魔術師はこの剣を百年手放さなかった。が、とある狡猾な盗人が、ひょんなことから大魔術師を騙して魔剣を盗み出すことに成功し、そのまま名だたる貴族の家へ向かうと、孫の代まで遊んで暮らせるほどの金貨と引き換えにレィヴィングを売ってしまった。

憤慨した大魔術師は、盗人に一生金に触れられない呪いをかけ、魔剣を所有した者には、魔剣を使うたびに剣に魔力を吸われ、精神を蝕まれ、数年以内に死に至る呪いをかけた。

大魔術師の手から離れた魔剣レィヴィングは、数多の所有者の手に渡り、それが人間であれ神であれ、代償として膨大な魔力を奪い取り、やがて一つの自我を持った武器へと進化していった。

他の魔剣と違い、レィヴィングは自らの意思で主人を選び、主人に繁栄を(もたら)すも絶望を齎すも、かの剣の気まぐれと戯れであった。

死に際の大魔術師は、最後にレィヴィングを破壊する時、その歪な心を持った武器に、このような言葉をかけた。


「君を造ったのは私だ。君の罪は全て、私の罪だ。君が安らかに眠り、いつか、血と殺戮に塗れた運命ではなく、もっとありふれた平穏な運命の下で、命を与えられますように」


果たして、その願いは叶ったのか。

千年の時を経て、魔剣レィヴィングが次に目を覚ました時、彼は剣ではなく、一人の人間となっていた。

先の戦で手柄を立て、国内でも高い地位と名誉を得ることとなったヘルヴレイク公爵家の養子、レイチス・ヘルヴレイクが、今世での彼の姿であった。


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