17話 おつかれのおつかい
「「海だぁーーーー!!」」
バスから飛び降りた葉華邪と我路堕が砂浜へと走りだす。
そのあとを少し駆け足の笑雨が大きな浮き輪手に持ったまま真顔でついていった。
「砂熱いだろうからみんなはサンダル履こうね。」
「ありがと、雨蹴先輩」
笑雨の後に雨蹴と落笑堕がバスから降りてくる。
落笑堕が雨蹴からサンダルを受け取って靴から履き替えている間に、乙華麗と月堕がバスから降りてきた。
乙華麗と月堕もサンダルに履き替える。
先に海へと走り去ってしまった3人のところに乙華麗と月堕を向かわせ、雨蹴と落笑堕は滞在する海の旅館にチェックインすることにした。
「阿呆九冴様4名と阿呆好喜様3名の計7名での大部屋の予約で間違い無いでしょうか?」
「はい。」
「それでは保護者様のお名前を記入して鍵を受け取ってください。」
部屋入ると既に雨蹴たちの荷物が届いておりいつでも過ごせるようになっていた。
きっかけは夏休み始まって初日の乙華麗だった。
乙華麗がお使いで商店街に向かった際、その日は商店街上げての抽選会が行われていた。
抽選会に参加するには商店街のお店をめぐり買い物をしてスタンプをゲットする必要があった。
目玉の景品は、特賞の最大4人ハワイ旅行と1等の最大8人沖縄ビーチ旅行。
乙華麗は姉妹で行きたいと思いハワイ旅行を当てようと、丸一日かけて5枚もの抽選チケットを作って抽選会に挑んだ。
結果は一等の大当たり。
最大8人までとのことだったので、従兄弟の阿呆好喜家も誘って沖縄旅行が決定した。
その際、申し訳無いからといって断ろうとする落笑堕を我路堕が静止した。
理由は笑雨の水着姿が見れるから。
そんなこんなで仲良く7人で沖縄へとやってきていた。
「笑雨ー見て見て!!タコがいたよぉ。これ食べようよー」
海に潜っていた葉華邪が岩場で見つけたタコを締め上げて持ってくる。
グイグイと近づけてくるタコを笑雨は追い返しながら葉華邪に「海に返してきなよ。」と言った。
葉華邪は素直に「はーい」と言ってまた海にダイブした。
すると同じ事をする奴がもう一人いた。
「笑雨っちー、ねー見て!めっちゃでかい魚捕まえた!!」
「いやそれ、どうやったら捕まえれるの。」
「なんか糸で引っ張られてたから取ってきた。落笑堕にも見せてあげよー」
我路堕はコブダイを手に持っていた。
驚愕した笑雨がコブダイをよく見ると、コブダイの口から釣り糸が垂れている。
「あ...誰か知らないけどご愁傷様です。」
笑雨は誰か分からないが獲物を横取りされたであろう釣り人を気の毒に思っていると、チェックインを済ませた落笑堕と雨蹴が戻ってきた。
「雨蹴!!待ってた。」
「お。笑雨、一緒遊ぼっか。」
雨蹴を見つけた笑雨が、少し嬉しそうに雨蹴に駆け寄った。
まだ日は登り切っておらず、段々と真上にくる太陽が笑雨達を照らしていた。