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アホウドリが狩る側で。  作者: takenosougenn
第一章 歯車
15/24

14話 オムライス戦争

大学が終わった雨蹴はスーパーに急いで走っていた。

5時半からのタイムセールである20個500円の卵を手に入れるためである。


きっかけは今朝、末っ子の乙華麗がテレビを見ながら発した一言であった。

乙華麗が朝の情報番組を見ていると、オムにぃのふわふわオムライス特集が取り上げられていた。


「これ食べたいな。」


そう乙華麗が発した一言を一緒に朝ご飯を食べていた雨蹴は聞き逃さなかった。

雨蹴は大学に向かう為の電車に乗りながら特売の広告を見つけ、大学終わりに買いに行くことを決心したのだ。


現在5時。

タイムセールまであと30分しかないが、通らないといけない午後の商店街は夕食を買う主婦の姿でいっぱいだった。雨蹴は商店街を通ることをあきらめて、少し治安の悪い区域を通って急ぐことにした。


雨蹴は少し懐かしく思いながら走っていく。

道にはお酒を飲んで酔っ払っている不良や殴られて意識を失っている男が寝ていたり、女の子が男と薄暗い路地で素肌をさらしていたりした。


雨蹴は顔を赤面しながらも見なかったふりをしてそのまま走っていく。

だが、そんな雨蹴にちょっかいをかける馬鹿がいた。


チンピラたちは4人ほど並んで雨蹴の走っている道を塞ぐ。

雨蹴は急いでいたので壁を蹴って飛び越えようと横を見たが、左右はガラスの窓で足場としてはおぼつかない為一度止まるしかなかった。


「ねーおねぇさん?そんな走ってどこ行くんだよ。ここ通りたかったらお金か体、どっちかおいていこっか。」


リーダーらしき男が道をふさいでいたチンピラをかき分けて顔を出した。

細身の体だがある程度しっかりとした筋肉がついており喧嘩慣れもしている様子で、このようなカツアゲの常習犯でもありそうであった、


「ごめん、今急いでて後ででいいかな。あと俺男だし。」


雨蹴は歩いて横を通り過ぎようとしたが、リーダーの男に腕をつかまれた。


「いや、その顔で男は無理でしょ....あと、金全部おいてけって」

「えっと、ごめん、それはできないかも」


一切怯える様子もなく普通にアンケートを断るような雨蹴にリーダーの男は段々とイライラしてきていた。男は舌打ちすると拳を振り上げて雨蹴の額ギリギリで止める。

だが雨蹴は普通に瞬きをしただけで、興味なさげに押しのけようとリーダーの男を少し押した。


その行動がリーダーの男の逆鱗に触れた。

本格的にキレた男は軽く握った拳を雨蹴に振り下ろした。

そして空いている方の手で金属バットを受け取って本格的にいためつける用意をした。


雨蹴は振り下ろされる拳を見ると避けることもなくただ受け止める。

リーダーの男は「へぇ」と言って面白そうな顔をしてもう片方で持っていた金属バットで雨蹴を殴った。


だが次の瞬、間金属バットは道をふさいでいたチンピラの後ろに大きく弾き飛ばされた。殴られるのを察した雨蹴が男のバットを蹴り上げたのだ。


リーダーの男が「うぐ。」と金属バットを持っていた腕を抑えて膝をつく。

雨蹴の蹴りが運悪くバットを持っていた腕に当たったようで、手首と指が大ききはれ上がっていた。


「全員でやれ」


一瞬にして持っていたテーピングで手首を固定した男が立ち上がって防いでいたチンピラに指示を出す。

4人の男が同時に殴りかかるが雨蹴には敵わなかった。


「えっと、ごめんね今は急いでるから手加減できないかも。」


そう言った雨蹴は速かった。

襲ってくる一人に足をかけて転ばせると、それに気を取られた一人をアッパーで脳震盪を起こさせノックダウンさせる。そうして残った2人に回し蹴りを当てると2人一緒に壁に強打させられ意識を失った。


雨蹴は手負いのリーダーの前に立つと「もう、行っていいかな?」と、キョトンとした顔で言った。

ずっと威勢の良かったリーダーは赤べこのように怯えながら首を縦に降った。



雨蹴は許可が取れたと満足そうにその場を急いで後にする。

以降この地域では薄墨色のパーカーを着た女のような男には手を出してはいけないという暗黙のルールが作られていた。


チンピラの男たち。


治安の悪い地区で少し調子に乗っていた。

普段はそこを通るおじさんや女性などにを恫喝して、おじさんであれば金目のものを女であれば身体を要求していた。そんな5人に天罰が下ったのか運悪く急いでいる雨蹴を止めてしまった。全員仲良く全治半年程度の怪我を負わされ、2度としないと5人で誓ったそうで最終的に市民を守る自警団に5人一緒に入ったらしい。

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