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第70話

 零のパソコンの結果については今はただ待つしかない。なので次の話へと移った。

「それで、諒花はその後に犯罪組織ダークメアの二次団体ワイルドコブラに目をつけられてしまったわけだ」

 ひと通り話を聞いた蔭山は腕を組んでその内容を簡潔に言った。時系列としては零がいなくなった後、パソコンを預かった滝沢家と協力関係を結んだ後だ。

「アタシが倒した変態ピエロはダークメアの総帥って聞いた。アタシがあの野郎を倒したからこうなった。でも仕方がなかった」

 もしあの戦いで負けていれば青山や滝沢家はおろか花予もここにはいない。敵は総帥を倒したこちらを標的として狙ってきている。

 既に知ってると思うがと蔭山は茶を口に含んだ後、話し始める。

「ダークメアは元は2016年までこの関東裏社会を支配していた岩龍会(がんりゅうかい)に与する組織だった。だが抗争の末に岩龍会は滅び、代わりにその後はダークメアが全てを掌握し今や関東最大の犯罪組織(シンジケート)になった」

「そうだったのか」

 ダークメアという組織の発展。そこまでは初耳だし知らなかった。それにしても岩龍会という名前はとても硬くて強そうな名前だ。岩の龍。いったい、変態ピエロの前は誰がその王者として君臨していたのか。

「滝沢邸も元は岩龍会の所有してた事務所だったからな」

「アレもなのか!? 蔭山さん」

 先月19日の事件の際、蔭山は三軒茶屋まで来てくれて零も一緒に青山まで車で送ってくれたのだ。その時の記憶が蘇ってくる。蔭山はその車内でハンドルを握りながら、あの屋敷を昔はゴルフができるほどの広さがあるヤクザの屋敷だったと語っていた。名前は出していなかったがそのヤクザこそが岩龍会であることが今サラリと明かされた。


 なお、その時ついでに蔭山はそのヤクザは抗争の末に壊滅し、今は敷地内にある屋敷と時計塔も含め全て滝沢が所有するようになって、次第に森林へと姿を変えていったとも語っている。

「もっと言えば、三軒茶屋にある志刃館しじんかんの立派なキャンパス、あったろ? あれも昔、岩龍会がまだそこまでじゃなかった頃はその通り事務所で、その後勢力拡大して破棄された後の2010年は岩龍会のはみ出し者たちがテキトーに巣くう廃墟だったんだ」

「あそこもかよ!!」

 思わずツッコんだ。志刃館しじんかんというのは中学、高校、大学、大学院があり、世田谷区近辺をはじめとした各所にキャンパスを構える名門だ。なお、翡翠の妹、紫水は高校二年でその廃墟の跡地に建てられた三軒茶屋のキャンパスに通っている。一応こちらよりも年上なのだ。

 そういえば、19日に三軒茶屋に来た時、零はあのキャンパスの過去を話してくれて、昔は巨大な暴力団組織の事務所だったと言っていた。時が経つにつれて使われなくなって廃墟同然、裏社会のはみ出し者達の根城と化したとも語っていた。巨大な暴力団組織と名前を伏せていたが、あの時点で岩龍会のことを零は語っていたことが今ならばよく分かる。

「なんでアタシにはその名前伏せていたんだよ。蔭山さんも、零も」

 頬をぷくーっと膨らましてスネる。ちょっとだけイジワルに感じた。戦いの歴史ぐらい何も隠さなくてもいいじゃないかよと。

「零は恐らく推測だが黒幕の存在もあって隠していたんだろうな。俺が滝沢邸の話をした時に反応しなかったのもあえて言及しないことで知らないフリをしていたんだろう」

 零は元から分からないことがあると教えてくれるほど博識だが、岩龍会のことは口に出さなかったのは今思えば引っかかる。

「俺はまだお前たちが知るのは速すぎると思ったからあえて名前を伏せたのさ」

 蔭山は少しキザっぽく歯を見せて笑みを浮かべる。

「なんだよそれ蔭山さん……」

 イジワルに感じたが、今だと隠してくれたのは優しさなのかもしれない。そう感じた。


「だがそんな、岩龍会の後に取って代わった後の犯罪組織も決して一枚岩ではなくて、総帥亡き後の今はどうも内紛が起こってるようだ」

「仲間割れってことだろう?」

 蔭山はそっと頷いた。そういえば内紛状態だと零も言っていた。

「今回の諒花を狙うダークメアは二次団体ワイルドコブラであって、本家含めたダークメア全てが敵というわけではないと俺は見ている。ダークメアに属する系列の組織がクーデターを起こして残らず本家に消されたって情報が入ってきたんだ。ここまで話を聞くに、襲ってきた連中はワイルドコブラだったんだろう?」

「……そうだなぁ。そうだ」

 宙を見上げて頬をかき、思考を巡らせそう答えた。そうだった、ビーネット、スコルビオン、コカトリーニョ。ここまで倒してきた敵全てがワイルドコブラを名乗っていた。

「ダークメアの内情が知りてえなあ。そしたら敵勢力の全体図が明確に分かるのに」

「翡翠ちゃんに訊いたら分かるんじゃないかい? 諒花」

 花予の問いかけに思わず「あ」となった。滝沢家ならばダークメアとある程度関わりがあり、事情に詳しいだろう。が、それは向こうで分かることだろう。



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