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第69話

 それから暫くして、陽もすっかり上りきった時間帯。これから単身で大阪に帰省する前のクラスメートで幼馴染の歩美、並びに刑事の蔭山がそろって家にやってきたので玄関で出迎えた。

 花予は奥で飲み物の用意をしている。歩美は冬物の暖かいコートを、蔭山は相変わらずの刑事らしい茶色いコートと帽子を被っている。いかにも刑事ドラマに出てきそうな強面な刑事だが、諒花にとっては幼い頃から知る、近所のおじさんあるいは父親代わり的存在である。


「諒ちゃん、おはよー!」

「二人一緒に来たんだな」

 来るにしても忙しい蔭山は一足遅れてくると思っていた。

「いや、たまたま歩美ちゃんとそこで会ってな。しっかし、昨日と早朝からえらいことになったな、諒花」

「はは、蔭山さんにも早朝のこと、知れ渡ってたか」

 ともかく積もる話は中でゆっくりしよう。二人をリビングへと招き入れた。

「二人ともいらっしゃい。朝から悪いね」

「いや、いいの。わたしは大阪に行く前に花予さんと諒ちゃんに顔を見せたかったから。それに、大変だろうからね」


 蔭山だけでなく、歩美もみんながこちらを心配してくれるのは素直に嬉しかった。花予も二人に挨拶すると早速お茶をテーブルに置き、四人で話に入る体制へと早速入った。

「花予さんから話は聞いてるが確認したい。レーツァンを倒して、それで零がいなくなって、それからいったい全体どういうことなのか……俺にも改めて説明して欲しい」

「ああ。零のことはハナから聞いてて知ってると思うけど変態ピエロとも繋がりのある黒幕が送り込んだ手下だったんだ――」


 これまでの振り返りも兼ねて経緯を話していく。滝沢邸で翡翠の推理を聞き、零に直接確認に行き、その零は正体を暴くと逃走しそのまま失踪。残されたノートパソコンは滝沢家が預かって解析中で、その結果が今日中にも判明する。あとは翡翠の連絡待ちだ。そして今現在は渋谷に敵が潜む危険な状態の中、翡翠の計らいによって事件解決まで滝沢邸で世話になる。

 その説明に蔭山、そして花予と歩美も改めて耳を傾ける。特にパソコンの解析が今日で終わることがまず朗報であった。

「そうか! だったら零が使ってたそのパソコンが今後重要な手掛かりになること間違いないな。零はそれを使って黒幕とやりとりをしていたと見ていいだろう」

「たぶん零さんはメールやチャット、リモート通話で誰かとやりとりしてたんだろうね。解析したら通話記録は無理でも文面は全部出てくるよ」

 歩美の言う通りだ。当然、歩美も零がパソコンを持っていること自体を知らなかった。


「にしてもイマドキの子は何でもスマホだろう? それをノートパソコンでやるってことは機密性が高いんだろうね」

 花予の言う事も一理ある。最近はスマホで何でもできる分、パソコンができない子供が増えていると聞いたことがある。

 正直、機械いじりはスマホもパソコンも苦手だ。だから人の事は言えない。そんな苦手科目、分野でも零のお陰で助かった。零がいなかったらスマホもパソコンもからっきしダメで終わっていただろう。得意ではないがマシになったとは思っている。

「今日中には諒花と花予さんは滝沢翡翠の屋敷へ避難して、そこでパソコンの内容を知るって流れになるんだろ?」

「うん、そうなるな」

 花予と視線を合わせ、そう頷く。

「俺も行っていいか? 青山には車で送る。パソコンの中身を見る時は俺も立ち会いたい。何か突発的に仕事が入って来なければな」

 刑事でも休みはあるだろうが、そうも言っていられない立場なのが蔭山である。何せ、警察とXIED(シード)の橋渡し役なのだから。


「翡翠ならば、事情話せば分かってくれると思うから蔭山さんのことも伝えてみるよ」

「諒花。あたしも立ち会いたいから翡翠ちゃんに宜しく頼むよ」

 花予も当然知る権利はあるだろう。何せ自分の持つゲーム機を触らせるぐらい零と仲が良かったのだから。

「わたしは大阪行っちゃうから後で聞かせてね」

 文化の日も含めた三連休初日である今日。歩美はこの後、新幹線で実家のある大阪へと帰省するのだが、帰省がなかったら一緒に行っていたに違いない。

 だが仕方がない。それに、何をしてくるか分からないワイルドコブラの射程範囲外に逃れる意味ではちょうど良かっただろう。




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