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第66話

「おまたせー」

 少しして花予が目玉焼きとトースト、白米を盛った茶碗が乗ったトレイとオレンジジュースを持ってきた。

「いただきます」

 手を合わせて召し上がることにした。


 今日は家でのんびりする――のではない。石動にも言ったが、今日やること。実は昨夜、翡翠と石動と会食し一人で湯に浸かった後、ホテルのベッドに入った時点で決めていた。

 昨夜、翡翠と石動と会食した時に話題に上がった、あの変態ピエロと倒すまでずっと幼少期から首にしていた赤いチョーカー。実はGPS──発信機が埋め込まれていたことが発覚したアレはどこから来たのか。


 自身の強いチカラを抑制し程良くしていた赤いチョーカーの出所を辿れば、変態ピエロと繋がりがあり、かつ零を送り込んだ黒幕が暴けるかもしれない。食べながらテーブル向かいでトーストを口にする花予にこれらの話をしてみると、

「そうか。姉さん達が死んだ事故の話をしてなかったっけ? 前に話した気がするけどなあ」

「聞いたかもしれねえけど忘れちまった」

「あまり思い出したくないものな」

 頷くしかなかった。それは花予もよく分かっていた。今でも気味悪い夢として出てくるぐらいなのだから。

「あれはさ、諒花連れて三人で車で熱海の方へ温泉旅行へ行くはずだったんだよ」

「あっ……! そういえばそうだった」


 言われて即座に思い出した。三人でどこかに車で旅行へゆく途中、高速道路を走行中に車がぶつかってきて事故に遭った――黒幕と繋がっていた変態ピエロのせいだ――という所までは覚えていた。自分を守るようにして二人は炎の中で死んだ。そして炎の中で自分だけが助けられて生き残った。

 だが行き先が熱海というのは完全に記憶から抜け落ちていた。熱海といえば海沿いにある季節問わず花火が上がる街。旅館があって、温泉がとても気持ちの良い場所と聞く。

「それで事故に遭って生き残ったアタシはどこの病院に運ばれて入院していたんだ?」

「横浜の総合病院だよ。諒花はあたしが引き取る準備も必要だったから大事をとって三か月弱、入院していたけど、それだけしか覚えていないか」

 事故があったのは2013年11月。つまり春までは入院していたことになる。

「ああ。そこでチョーカーをもらった」


 しかし誰からもらったかが出てこない。病室のベッドで寝ていた時、確かに自分の首にあった。それしか覚えていない。なぜだ。分かれば一発なのに。右手を額に当てても浮かんでこない。病院なので医師の診察なのは確かだ。

 幼少期、入院中もずっと首につけていた赤いチョーカー。あの段階からチカラの抑制は始まっていたことになる。今思えば入院中も色々血液検査とか樽状の形をした機械の中でスキャンとかされた気がする。

「あたしを含めて諒花が稀異人(ラルム・ゼノ)なのは検査で分かっていたけど、まだ小さかった諒花に教えるのは酷だからさ、ずっと黙ってたのは知ってるよな?」

「ああ。それで中1の時に受けたメディカルチェックで不合格になるまで伏せてたもんな」

 長かった。ラルムなのは最初から大人たちは分かっていたのだ。が、自分が知るのは昨年中学に入って空手部に入ろうとしてメディカルチェックで不合格になった時初めてだった。

「翡翠に病院について報告してみる」

「それがいいね。何か分かるかもしれない。あたしもチョーカーは入院していた諒花に対面した時からずっとつけていたという記憶しかないんだ」 


 そこが分かれば黒幕が誰なのかも絞り込めそうなのだが誰なのかが寸前で分からない。そんな歯がゆさを痛感する。

「病院でつけられて以降、ずっと持ち歩いて、日中外してなかったならば、GPSも後付けでつけるの難しいし、予め仕組まれていたとしか考えられないからな……すまないな、あの時、手掛かりがそこにあったかもしれないのに」

「いいって。今になって重要って分かったんだからさ。直接、病院に行って訊いてみるのはダメか?」

 ワイルドコブラが落ち着いたらで構わない──が。

「行ってもおいそれと話してくれるかな? まずは翡翠ちゃんに任せてみようよ。何せもう11年前の話だし、当時いた医者が今もいるか分からない」

「だな……」


 11年前の2013年。そこから始まり、今に至る。少しずつ知っていったけれども、物心も殆どついていない、そこから全てが始まっていたのは明らかだ。

 あの時から今に至るまで黒幕がいる。そいつは零を送り込みこちらの動向を監視させていた。その黒幕に近づこうと変態ピエロは事故に見せかけ両親を殺した。だから黒幕にとっても変態ピエロがやったことは都合が良い。そして零を小4の時に送り込む前からずっとこちらを見ていた。黒幕も変態だ。

 発信機の入っていた赤いチョーカーをどうやってつけさせたのか。当然、病院側が意図的につけるはずがないので、あの病院に担ぎ込まれて入院中、自分の知らないうちにどこかで、何者かの介入があった。それしか考えられない。




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