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第55話

 深い眠り。それは眠っているベッドや布団、まくらなども相まって普段以上、いや極上の安らぎを諒花にもたらしていた。


 普段ならば大金を払って宿泊することで得られる高級ホテルでの安らぎ。疲れていた体も相まって、一旦眠りについてしまえば開眼する朝までグッスリだ。その安らぎは過去を映し出した炎の悪夢を呼び起こすこともなく、悪夢という概念そのものが暴れることを許さない。


 ──はっ!

 

 今、布団の中でハッキリと目が覚めた。高価な家具や壁紙に満ちた部屋の明るさと景色は寝る前と変わっていなかった。うっすらとランプの明かりをつけたが寝る前と変わらない。


 眠っている間も安らぎをもたらす邪魔にならないようにする配慮か、最初からカーテンの隙間から日差しが一切室内に入らない作りとなっている。


 ──もうひと眠りか?


 しかしもう一度寝るには気が乗らない。すっかり目が覚めてしまったからだ。なんでだろうか。凄くよく寝ていたはずなのに。

 寝た時間も覚えていない。もしかして昨日は早く寝すぎたか。昨日は色々あったから何時か分からず寝てしまっても仕方ないかもしれない。翡翠、石動と会食して入浴して色々考えてるうちに寝てしまったのだから。


 とりあえず枕元にあるスマホを開いて時計を見てみると、


「午前5時……」


 四桁の数字がそれを示していた。途端に早朝ならではの微かな寒気が体をつたった気がした。


 ──ジリリリリ!ジリリリリ!


 スマホが震えた。この激しい震えは電話だ。画面を見ると石動からだ。この早朝に電話。なんだろう、嫌な予感しかしない。いや、もしかしたら零が見つかったのかもしれない。とりあえず出てみた。


「もしもし……石動さん」

『諒花様、今すぐに着替えて準備をして下さい──』



「うわああああっ!?」

 何やら緊迫しているが落ち着いている石動の声を聞いた直後、窓ガラスが豪快に割れる音が部屋中に響いた。外から何かで叩き割られたようだ。思わず声をあげてしまった。


 それは外からの攻撃を知らせる音だった。閉ざされたカーテンがなびき、冷たい風が吹くと体が一気にひんやりとした。石動は落ち着いた口調を崩さず続けた。


『──敵襲です』

  

 ここはビルの9階である。通常の人間ではどうやっても外からは入れない。銃で撃ったとしても当たらないだろう。じゃあ、どうやって外から窓を割ってきたのか。


 戦闘機にでも乗ってきたのか? いや、戦闘機ならばとっくに突っ込んでいる。その答えはカーテンの向こうから。巨大な影が迫っていた────!




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