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第36話

「ブンブンブンブンブン! 俺の動きに惑わされて動けまい!?」


 その羽で自在に飛び回り、戦闘機を思わせる動きでヒットアンドアウェイを繰り返すビーネット。その素早い動きから繰り太い槍を発射してくることによるミサイル攻撃、そして逃げ惑うこちらの狙って直接、空から降り立ってその両手の太い槍で串刺しにせんと右と左連続で襲いかかってくる。

 降り立った後の串刺しブローの連続を人狼の拳をぶつけてやり過ごしながら、再び奴が空を飛んだ時にスマホが震えた。逃げて走り回りながらそれを耳に当てる。


 その上空から放たれる流れ弾が奴の手下達の方向にも飛んでいき、地面に突き刺さる。

「ビーネットさん! オレ達に当てないで下さいよ!」

「うるさい、こんな小娘一人にビビる腰抜けどもが! 蜂の巣にされたくなかったら下がってろ!」

 冷たく言い捨てられると手下達は観戦をやめて下がっていく。これで屋上はビーネットと二人っきりのバトルフィールドとなった。


『諒花様、大丈夫ですか?』

「あの蜂野郎、強いな。助けには来れないのか?」

『申し訳ありません。ビーネットが放った別動隊がやってきたので拠点を死守するため、ここを離れるわけにはいきません』

「ブンブンブーン! 下にいる奴らが全てだと思ったか?」


 上空からビーネットが腕を組んでこちらを見下ろしている。

「あのタワーに滝沢家が拠点を構えていることはもう把握済みだ。666の戦力のうち、約3割を別動隊として向かわせてある。援軍は来ないぞ」

 くっ……もはやこの局面を一人で切り抜けるしか道はない。その知らせだった。


『ビーネットは”戦闘蜂せんとうばち”の異名を持つ異人ゼノです。同僚の”鋼鉄蠍こうてつざそり”のスコルビオンとは犬猿の仲。その戦い方と迷彩服を着た姿で戦闘機を連想させることからその異名がつきました』

「またも分かりやすい異名だな」

 これまで戦ってきた異人ゼノの異名はどれも見た目や特徴が分かりやすいものばっかりだった。大バサミ、死神など。この時に聞いたスコルビオンという名前の存在もこの後、明らかになることを諒花はまだ知らなかった。

 

 言われてみれば、それまでの攻撃はまるで空襲だ。奴がやっているのは空からの猛撃。狙いをつけられた者はその降ってきた太いミサイル槍で心臓を一撃で貫かれるのだろう。地上から攻撃しようにもその飛行能力によって避けられてしまう。


 次々と振ってくる太い槍の雨。それらを避けたり正面から砕いていると、また奴は降りてくる。そして2つの槍による接近戦を仕掛けてくる。

 尖っているが、人狼の拳の手のひらで受け止めるのならばある程度は可能だ。痛くなったら後方に下がって距離をとる。この繰り返しだといつかは手が消耗する。いつまでも持つわけではない。

 どこかで反撃に出なければ負ける。しかしどこで出る? 向こうの速さはこちら以上だ。「どうすればいい?」

 降ってくる太い槍を左右に避けて次の石動の返答を待つ。


『その俊敏な動きに決して目を離さないで下さい。奴は空からの狙い撃ちが効かないと、痺れを切らして降りてくるせっかちな傾向があります』


──あ。


 この瞬間、あることに気づき、脳裏に稲妻がひた走った──!

 


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