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第33話

 最初の第一陣を一掃し、後続部隊がオロオロとしている中、屋上の朝の青空を背に、再びファイティングポーズで身構える。同時に滾る炎。体の内側から青白い炎のオーラとなって燃え上がるこちらの様に第二陣はたじろいだ様子だ。


 出入口はまだまだ敵で埋め尽くされている。敵が続々と階段から駆け上がってくる。蜂の大軍は今立っている屋上の半分を密に埋め尽くしている。

 さすがにこの階段を上がってまで大柄な武器は持ち込めないのは本当のようだ。一斉に鉄パイプやバット、メリケンサック付きの素手で殴りかかってくる濃黄のスーツ軍団。


 一体、また一体と蹴散らしていく。すると遠くから突然、銃声が響く。一瞬、音も何もかもが固まったような錯覚を憶える。しかし自分目掛けて死角から放たれたのは明らかで、すかさず目の前の奴を素早く掴んでその方向に突き付けて盾にした。


「ぐゥアアアアアッ……!」

 こういう時、相手の命を気にしてはいけない。こちらもやらなければ殺されてしまうのだから。撃ったのはアイツらなのだから。盾にしたそいつを目の前の奴に投げつけて黙らせ、後続の敵部隊に相対する。

 落ちている鉄パイプを拾い、目の前の一人の頭部を殴った弾みで高く跳び、自分の体が高く宙へ、空へと浮いているのを再確認、真下目掛けて意識とチカラを集中させる。


「初月流・一騎当千・空中かかと落とし!!!!」

 空中で振り上げた右足に集中したチカラでその身ごと敵の集まるど真ん中に落下、青白い炎のオーラが広がり、辺りの敵を吹っ飛ばす。青白い炎が立ち昇り、その場にいた全員が吹っ飛ばされ、床にボロボロに突っ伏している。


 一旦、階段からの新手の登場が止まった。敵の大軍はそれにビビッておどおどしている。そういえばさっきから戦う時に出るオーラが燃え上がったり、強く感じる。あの変態ピエロ──レーツァンを倒した時のように青白い炎で燃え上がることが多い。あの時は空に向かってとてつもない業火が立った。


 こちらが歩いてくるのを見て敵の大軍は足を震わせ、反撃してくる様子もない。このまま終わらせてやろう。


 そういえば、幼い頃からつけてきた、自身の強すぎるとされたチカラを程よく調整するチョーカーを外したことによるものだろうか。それまで抑制されていたものから解放されたような気分だ。このチカラに自分の体が耐えられないと診断されたからこそ用意されたチョーカーなのだが、その中にGPSがなぜつけられていたのかはまだ分からない。


 下からの多数の人の気配。ビルの下にはまだ敵がいるようだった。しかし階段に駆け上がってくる敵は誰一人いない。ビルの下で待機していたのも含め、階段を駆け上がっている途中だった敵も、みんながみんな、腰を抜かして動けないという顔をしている。先ほどの空中かかと落としを階段途中や下からも目の当たりにしたからだろう。


「一人でこの軍勢を……こんな奴に俺ら勝てるのか……?」

「勝てるわけねえだろ……! 逃げようぜ……?」


 どよめきが走っている。だが、このままでは石動の作戦を実行することができない。階段降りてみんな倒すか。

 いや、それはない。戦う気のない、チカラを持たない人間を、自分のチカラでひたすら怯えるままに蹂躙することは野蛮だ。となると。


「おい!! 来るなら全員階段上がってささっとかかってこいよ!! アタシにビビッて逃げ出すなら、お前らの大将を呼んでこい!!」


 ────その時だった。背中に激痛が走ったのは。


「ウッ……」


 背中に何かが突き刺さったような痛み。投げナイフか、それとも……


 激痛のあまり、膝をつく。この時気づいた。誰もいないはずの屋上なのに、誰かがいつの間にか背後にいたことに。






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