表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/160

第29話

 後ろから追っ手が続々と迫ってくる。捕まらないように、歩美の手を繋いで全速力で走る。しかし、これまで以上に大勢の足音が後ろから迫ってきていることはもう分かっている。このままでは敵に囲まれるのがオチだ。


「見つけた! 殺ればビーネットさんから褒美がもらえるぞ、取り囲め!!」

 親玉と思われる名前を出した虎柄の模様のワイシャツに濃黄のスーツを着た男達の大軍が正面からもやってくる。いずれも鉄パイプの先にナイフを括り付けた槍からただの鉄パイプを持っていて今にも殴りかかってくる気満々だ。


「もう逃げ場はないぞ!」

「勝負あったな!」

 罵声から嘲笑までがデタラメに響き渡る。


「諒ちゃん、どうしよう! このままだと囲まれちゃうよ!」

 怯えた歩美が寄ってくる。ちょうど次のまた次に見える道を左に曲がれば校舎が見えてくる。だが、敵の群れを連れてこのまま逃げ込むわけにはいかない。それに。


 歩美を戦いに巻き込むわけにはいかない。正面から一人で戦えばどこかで必ず歩美にも危害が及ぶ。戦う前に歩美の安全を確保しなければならない。どうするか。


「囲め!! 逃げ場をなくせ!!」

 指揮官と思われる同じような格好をした男の中で黄金のサングラスをかけた男がゾロゾロとやってきた仲間に指示を出している。


 ──そこだ。


「歩美、走れるか!?」

「もう、ちょっと厳しい……この大軍から逃げられる気がしないよ……」

 歩美は剣道をやっているのもあるので体力は常人よりはある。ただ四方八方から攻めてくる謎の敵軍団に余裕がかなりすり減らされているようだった。ここは。

「ならアタシの手を握ってろ!」


 そう促して右手を出すと歩美はその手をしっかりと握った。


「しっかりと離さないで握ってろよ!! ちょっとだけ猛ダッシュするからな!!」

 目を閉じて心を落ち着かせ、気を強くし、前方に向けて意識を集中。


「えっ……ちょ……うわああああああああああああああああああ!!」

 後ろからの追撃部隊だけでなく、前方からもどんどん敵が増えてくる。それらが包囲網の壁を形成してこちらを完全に閉じ込めてしまう前に、諒花はその不安定な包囲網の中を突っ切った。

 歩美を右手に繋ぎ、敵中を突破、正面にいた敵を弾き飛ばし、開かれた風穴を抜けて風を切り、鉄パイプを振り下ろしてくる敵の顔面を空いている左手でブン殴ってただひたすら前へとひた走る。


 邪魔する奴はみんなぶっ飛ばしてやる──歩美を絶対に傷つけさせない──その一心でただひたすら前に、前に、前に。


 やがて敵が見えなくなり、左手に曲がって普通にここを真っすぐ行けば校舎が見えてくる。

「歩美!! ここからは一人で行けるか?」

「行けるけど、諒ちゃんはどうするの!?」

「アタシはアイツらと戦う!!」

「えっ、大丈夫なの!?」

 あの程度のザコの群れなんか、これまで何度も蹴散らしてきた。零がいなくても撃退したこともある。


「敵の狙いはアタシだ。学校とか周りにバレないように敵を戦える場所まで逃げて何とかするからさ、これ預かってくれよ!」

「あっ!」

 カバンは持っていくと邪魔になる。歩美に手渡す。連絡用のスマホだけを制服の懐にしまう。


わりい、あと頼む歩美!」

 そう言い残して、敵がいる方角へと突っ走っていく。

「諒ちゃん!!」

「ハナと先生によろしく頼む!!」

 後ろから聞こえる歩美の叫びに大声でその場を託して後にした────。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ