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第147話

 地下のベルトコンベアー通路を通って地上に出て、脱獄を計るだろう樫木。


 その出てくる通路に地上から入る鋼鉄の丸いハッチの前、屋敷もすぐ近くにある所にたまたまマンティス勝が両手を挙げて背伸びをして立っていたのだ。


「ふぅー、ラーメン食ったら風に当たりたくなっちまった」


 仕事の合間の休憩中のようだった。シンドロームもだが屋敷の一室にある専用オフィスルーム、パソコンやモニターが繋げてある部屋でお台場に向かった黒條零捜索隊とリモートで会話し、彼女をしらみ潰しに追いかけていることだろう。


 二人でパソコンで地図を開き、現地の異源素ゼレメンタルの反応やファミレスやカフェの入店目撃情報をまとめ、現地捜索隊に指示を出している。

 お台場は港区と江東区の両方のエリアがあり、しかも広い。港区側はテレビ局やアクアシティ、江東区はビッグサイトやダイバーシティがあり、観光地であるためホテルが各所にある。零が身を隠していると思われるホテルもこのどこかにあると思われる。


「今夜は徹夜だなー。だが翡翠さんが喜ぶために俺達はやるのみだ。この戦いを終わらせる鍵である黒條零を必ず見つけ出してやる」


 ――そう言ってくれて本当に助かりますわ、勝さん。


 渋谷ヒンメルブラウタワー並みに大きなホテルがシンボルのようにして建っているため、この大都市から中郷によって潜伏させられている黒條零を見つけるのは簡単ではない。だが彼女を見つけて確保すれば、謎が多い中郷の真相に大きく前進し、残るリソース全てをカヴラ一派に割ける。


 羽田や汐留へのアクセスも可能なお台場だが、今夜はお台場を重点的に捜索する。残るワイルドコブラ残党であるカヴラ一派を抑えるのが先か、それとも黒條零を見つけるのが先か。

 黒條零が見つかるか否かで明日の予定も変わることになる。懸命な捜索によって今夜、何か見つかるかもしれない。



 すると地下のベルトコンベアーへのハッチがギーッと開く。重たいので金属が動く音がして勝がその方向を一瞥する。


「ん? 今日は地下のメンテの日だったか? なんでハッチが開いた?」

 滝沢邸のシステムメンテは平日の半ばに行うことが多い。今日は土曜、ハッチはまず開かれない。


 ――いけません、勝さん。構えて――!


 開かれたハッチからは黒いローブに身を纏った男がやっとの思いで這い出てきた。


「うわあああああああ!?? ゆ、幽霊!?」


 それはホラー映画で井戸から這い出てきた貞子……ではなく、そのいかにも怪しく不気味な風貌を見て勝はすぐ気づくことになる。


「って、お前は!!!」


 勝は途端に怒りに燃える。


「あの時、俺を裏切りやがった死神!! なんで地下に投獄されているはずのお前がここにいる!?」


 何を隠そう、先月19日の事件の際、勝は死神の樫木と一時的に共闘したのだ。滝沢邸に乗り込んできた、過去に因縁がある大バサミのシーザーを倒すという共通の目的で。


 屋敷の塀まで憎き彼を追い込む事に成功したのだが、どちらがとどめを刺すかで揉めて大喧嘩に発展、結局、その間に彼を取り逃すハメになってしまった。その時、樫木に半殺しにされたのだ。持っている鎌で何度も何度もボロボロに。怒らない理由はない。


「お前か。よりによってここで待ち伏せているとは。くそおっ!」


 樫木は目を合わせるやいなや、すぐに自慢の能力で姿をスッと消した。だがそれは瞬間移動ではなく、体を透明にするもの。


「あ!! 消えた!! 脱獄するつもりだな!! 今度は俺が半殺しにしてくれるわ待ちやがれ!!」


 勝は異人(ゼノ)としてのチカラを発動、背中からカマキリの羽を伸ばし、両手をカマキリの鎌へと変化させ、羽音を立てて飛行しながら樫木が逃げたと思われる森の奥へと飛び出した。

 その速さは常人ならばすぐに追いついて取り押さえられる。樫木も異人(ゼノ)で姿を消せるため簡単にはいかないが。


「俺は滝沢家親衛隊にして、石動さんを除けば翡翠様の参謀役のマンティス勝だ!! 覚悟しろ!!」


 勝と石動。当然ながら別行動中の石動が参謀である。しかし先月19日の事件の際は勝が進んで参謀を名乗っていた。元はと言えば、ラブコールを続けてシンドローム共々加入することになった彼の忠誠心はとても強い。


 その追撃の様子を俯瞰して見ている青山の女王の頭の中に、ふと人狼少女と妹の姿が浮かぶ。

 

 ここで諒花や紫水の手を借りるのも選択肢に入る。が、二人には今夜はゆっくり休んでもらいたい。この程度の相手、事を荒立てず、静かに処理すべきだ。

 元はといえば、彼を地下にずっと投獄して放置していたのが悪い。ワイルドコブラ幹部達を入れる時点で想定すべきだった。


 これよりハインに現在地を伝える。たとえ能力も使って闇の中に逃げ込んでも、黒闇の魔女である彼女の手にかかれば、造作もない。


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