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第140話

 肩からたっぷり浸かった湯でだいぶ体があったまってきた。

 そろそろ上がろうかという時にスカールの話をしていてあることを思い出した。


「そういえば紫水は変態ピエロは嫌いなのにスカールは平気なんだな?」


「スカールさんとアイツは違うから。アイツは先輩を殺した仇だからね」


 先月19日のあの変態ピエロ──レーツァンと最終的に対決した事件において、紫水は奴のせいで先輩と呼ぶ大切な人を亡くしている。この事件前から失踪し、遺体で発見された、先輩の円藤由里。


 紫水の通う、世田谷にある学校、志刃舘の剣道部主将で紫水の友達が剣道部である流れで紫水も学年で先輩にあたる円藤と親交があった。


 円藤はテレビにも映ることがあるほどの名選手で先月、彼女の存在が大きく出たのはその行方不明で捜索願が出されたニュースからだ。


 だが19日の事件の最後、滝沢邸で突然目の前に現れた変態ピエロは公言した。円藤はあの変態ピエロが鎧を着せ、操って全身を鎧で固めた謎の女騎士に仕立て上げ、滝沢家などを襲撃したと。円藤はXIED(シード)を目指していたので奴らに一泡吹かせたくて見せしめで殺したと。


 元を辿れば先月19日の事件はその数日前に円藤扮する謎の女騎士が滝沢家を襲ったことから、滝沢家の女騎士を追いかける戦いが始まった。


 一方、こちらとしてはリベンジを仕掛けてきたカニ野郎――シーザーとの戦闘中に彼を背後から刺す形で、滝沢家に追われていたその女騎士が初めて目の前に現れた。零と一緒にその行方を追いかけていたら、それを同じく追って事件に巻き込まれていた滝沢家と出会うことになり、全ての諸悪の根源である変態ピエロもいた。それだけだ。


 円藤由里はシーザーと戦っていたこちらとの間に女騎士として乱入して撤退後、変態ピエロに始末され、その翌日に初月家の近くの路地のゴミ箱の中から首を絞められた遺体で発見された。


 その次の日、19日の昼に三軒茶屋で再び現れた女騎士の中身はなんと歩美だった。実は姉を事故で亡くしたショックで変態ピエロにつけこまれて洗脳され、円藤に代わる謎の女騎士として滝沢邸に現れたが、零が助けてくれた。


 これが先月の知る限りの、謎の女騎士関係の戦いの経緯である。


 

 最終的にその19日の夜にあの変態ピエロとの最終決戦を制し、事件は終結した。最も、その時のピエロのヒントとも言える遺言が零と中郷に繋がったわけだが。


「そういう意味ではあたしの代わりに先輩の仇をとってくれてありがとう諒花。だからあたし、諒花のこと凄いなって思うんだよね」


 紫水は続ける。


「なんだけど、アイツはさ、本当に死んだのかなって昼間に話を聞いてて思った。諒花に賭けて死んだっていうけどさ、どんなに計画立ててても死んだらそれまでじゃん」


「そうだな。死ぬ間際もずっとあの変態ピエロ、不気味に笑い続けていた。その後にあの話を聞いちまうと本当に死んだのか分からなくなるよな」


 当初は零のパソコンをみんなで見ていて、そこからいなくなった零の足取りやそれまでの裏で行っていた監視活動、更に中郷の存在などが明らかになったが、突然、ハインが現れ、変態ピエロの事情や裏側について説明してくれた。彼女はあのピエロから引き継ぎを受けている。


「実はもう一つモヤモヤしてることがあって……先輩の事なんだけど」

「なんだよ?」


 話は再び先輩、円藤由里に戻る。その時、人狼少女に衝撃が走る。



「実はというとさ……先輩の葬儀と告別式もまだやってないんだよね。遺体にも立ち会ってないし」



「えっ……? おいおいそれ、どういうことだよ!?」



 思わず湯の中から大きな水しぶきをあげて立ち上がった。魅惑的な体が紫水の前で露になる事なんか気にせずに。


 それは根本からおかしい。だいたい遺体が発見されてからもう二週間以上は経っている。


 それでまだ葬儀も告別式もやっていなくて、遺体にも立ち会っていないなんて、あり得るのだろうか……?


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