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第139話

 監獄の地下が騒がしい時と同じ頃――――。


 湯けむりに包まれた滝沢邸の大浴場。髪と体をシャンプーとリンス、ボディソープで洗いながら、隣で同じく洗っている紫水と話をする。


「うわあ、諒花の体ってやっぱり魅力的……」

 こちらの鍛え抜いた肩周りと膨らんだ胸部を紫水の羨望と憧れの視線が横から見つめている。


「あんまジロジロした目で見るなよっ……紫水も普段束ねてる髪を下ろすとサラサラしてて綺麗だよな」

 自分から目をそらさせるように紫水の髪を褒める。


「へへ、ありがとう。髪下ろすと誰だお前って驚かれることあるけど、翡翠姉とお揃いとも言われるね」

「姉妹だもんな」

「まぁね」

 雰囲気も性格もまるで違う。紫水は高校二年、翡翠は20代なかばに見えるがそこまで差を感じさせない。


 互いの見た目の良い所を見合う。見られると恥ずかしいが、実は刺激になる。紫水のように髪をもっとサラサラさせてみたりとか、たまには束ねてみる髪型もアリかもしれない。動きやすそうだ。


「背中、流そっか?」

 ニヤニヤしてるのがバレバレな紫水。

「アタシの背中見たいだけだろ自分でやるよぉ!」

 さすがに恥ずかしいので自分で背中流しはする。


 再び温かい湯につかると、あのトカゲ野郎との戦いの疲れと汚れが完全に浄化されていく。最も、それは忘れさせるのは直後、トカゲ野郎の比じゃないあの男に出くわしたインパクトが大きいからだが。


「あのスカールには圧倒されてばかりだった。あれが最高幹部の実力か」


 最初は弱いと見せかけて実はフォルテシアとはまた別の意味で今のままではまず勝てない相手だと痛感した。何せ殴っても再生してしまうからだ。

 まぐれで見つけたカツラ疑惑を除いて隙がない。もしあのロン毛がカツラだとすればとんでもないが攻略の隙はないようなもの。


「あの能力はビックリしたなぁ。通りで無敵なんだ」

「無敵?」


「あたしはスカールさんがダメージを負った姿を見た事がないんだ。自分から戦うこと殆どないからメチャクチャ強い証拠だけどね」


 やはり普段はボスとして君臨しているのか、その実力を表に出す事はないようだ。


 スケルトン人間。つまり骸骨なのでいくら殴ろうが刃物で刺そうが復活し、倒したと見せかけて騙し討ちもしてくる。


「あれを強引にどうにか殴り倒すってことできねえのか?」

「ただ殴るだけじゃダメだと思うよ。あたしも対策は知らないね」

「そっか……」


 湯に体を沈める。つまり正面からかかっても勝ち目がない。あの変化する体を何とかしないと勝てないだろう。何せ殴ろうとしている体がああなっているのだから。

 こういう時、零ならばなんて言うだろうか。



 こちらの動きを読んで何もさせず、的確にダメージを与えてきたフォルテシアもそうだが、稀異人ラルム・ゼノとなると正攻法が通用しない相手が多すぎる気がする。


 あの変態ピエロも稀異人ラルム・ゼノで混沌の緑炎を操っていた。出会って、最初は素手で攻めてきて、何か分からない能力で仕掛けてきたのも覚えている。あの無駄に膨らんだ右眼――義眼だったアレで幻覚を見せてきて最低限の攻撃しかしないでこちらを圧倒した。一筋縄ではいかなかった。


「アタシも、まだまだ知らねえぐらいこの世界にはヤベエのがゴロゴロいるんだろうなぁ」


 零と一緒に戦ってきたのも、零がいなくなった後に戦った相手もその一部に過ぎないのだと思う。

 

 ワイルドコブラのトップであるカヴラも蛇人間でしかも稀異人ラルム・ゼノと聞く。どんな攻撃を仕掛けてくるのだろう。


 最高幹部のスカールがアレなのと、ワイルドコブラという名前から、きっと腹がでかくて凄く大きな蛇なのかもしれない。あるいはドラゴンのような。とてつもないでかい怪物なのは違いない。


 敵の数は減ってきても、目立つ存在がどれも特徴的で得体の知れない存在ばかり。稀異人ラルム・ゼノとしては、レベルがまだまだ。


 チョーカーを外してチカラのリミッターは外れたが、その影響が残っていて、あと自分の技量がまだまだだから出し切れていない。


 でも戦わなければならない。敵が黒幕中郷と繋がっている以上、この戦いを乗り越えた先できっと零に会えるだろうから。


 零ならば、中郷のことも、これまで隠されてきたことも全て知っているに違いないから。


 しかしその行方はお台場で途絶え、滝沢家が近隣を捜索中だ。用意したホテルへ身を隠せと中郷が言っている事から、お台場のどこかのホテルなのは確定している。


 が、それが見つかるまでこれからどうするのか。ワイルドコブラとの戦いはどうなるのか。それは翡翠がきっと教えてくれるだろう。



 そういえば、すっかり忘れていた記憶をふと思い出した。トカゲ野郎が言っていた相談役である化蛸。

 

 蔭山が追い、シーザーが病院送りにされ、スモークドーズのコバが餌食になった渋谷の路地裏で無差別殺人を行う殺人鬼の存在。蔭山が襲われたシーザーに話を聞いてみると言っていた。


 ──人狼少女はまだ知らない。


 相談役の化蛸。それはどこか遠くにいるようで近い所にいることを。


 その殺人鬼が化蛸であることを…………


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